反省会という名の憂さ晴らし
「あの時のこんにちはの台詞の表情違うんじゃないか?」
「いやいや、あれはさ俺なりに最大限、余所者がっていう心情だったんだけどな。」
「今日、訪れた奴等は怪しいな。」
「何処まで行くか、賭けるか?」
ここは、村の中央広場近くにある唯一の盛り場だ。
いわゆる噂、村の情報、近辺の情報提供場所であり、次の足掛かりとなるダンジョンの位置がわかる第一ヒントが隠されている。って言っても本当に大したことはない。勘が良い奴等は素通りさえしても構わない程、微々たる情報だ。
町長に会い魔王を倒しに行く又は勇者であると宣言すれば教会に案内される。
村の外れの教会の司祭に会い、首都の教会本部で講義を受けた神話の派生話を聞くの二点だ。
だから村に勇者ご一行が泊まるなんてめったにない。
それだけに村の話は勇者よりも日々の暮らしがメインとなる。
が流石に今日は久方ぶりの訪れに皆浮き足だっていた。
前回より女の子が可愛かっただの、今回の勇者は気弱そうだの、急に話しかけられてビビっただの反応は様々だ。
「エール、一杯頼む。」
小銭を出してバーの店主に頼むと店主は慣れた手つきでサーバーからエールを木のコップに注ぐと目の前に冷たいエールが運ばれた。
グビッと喉を鳴らしエールを流し込むと先程まで鬱々としていた気分が少しは晴れた。
「又、ミン氏に叱られたんだって?」
狭いカウンター席にわざわざ座る野郎、しかもオレの知り合いとなると一人しかいない。
「うっさいわ。ダムどっか行け。」
こいつは、ダムニエル、ライカー。片田舎に似合わない長身碧眼。薄茶色の長髪を後ろで一つに束ねた優男だ。腐れ縁みたいな物でオレが左遷いや異動させられる前の村から一緒にいた男だ。かれこれ2年以上の付き合いだ。
大体コイツは何でここにいるか判らない。前回は村長の息子だったっけ?
今回は村の門番。なにやらせても器用にこなす奴だ。オレからするとエリート街道まっしぐらに歩いてもおかしくない。が、いかんせんやる気が1ミリたりともない。直ぐにそこらかしこでサボってやがる。それなのに何故、管理部からお叱りを受けないのか不思議だ。本人に聞いてみると
「お前の要領が悪いんだろ?」
さいでっか。
オレは要領が悪いのか?
いや運が爆裂に悪いんだ。