表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

健康と船

作者: 咎浪静香

楽しくない毎日。

ニュースキャスターが気丈にふるまう。

私はそれから逃げるように布団にくるまる。


明るいニュースを見て、しっかり朝ごはんを食べて、余裕を持って準備して、電車に揺られて出社して、会社の同僚と明るく挨拶を交わす。


あくせく働いて、お昼ご飯をしっかり食べて、また働いて、疲れて帰って、少し遊んで穏やかに眠る。


そんな毎日が送れたらどれほど幸せかと毎日思う。


遅れているのです。心も、身体も。


みんなが、今までの生活のなかで、当たり前にこなせるようになってきた、色々なことが、私にはどうにもできないのです。


笑っていることが苦痛です。食べることが苦痛です。眠ることが苦痛です。着替えることも、シャワーを浴びることも、働くことも、遊ぶことも、なんでも苦痛です。


ワガママなのは承知です。だから遅れているのだと言ったのです。


健康であれば、もっと生きやすくなったでしょうか。

みんなはどのくらい、身体に不調を抱えて生きているのでしょうか。心に不調を抱えて生きているのでしょうか。


私は、今年で23歳になります。私立の中高一貫校を出て、有名私大を出て、一部上場企業に入社しました。


側から見れば、順風満帆に見えるかもしれません。

しかし、私の船の帆は、今、吹き荒ぶ爽やかな風を上手く受け止めることができないのです。

帆はツキハギだらけなのです。風に混ざってやってくる、枯葉やナイロンの袋なんかでも、さらに亀裂が広がってしまうくらいにボロボロなんです。


それに、私には幸せというものがてんでわかりません。

世の中で俗にいう幸せ、趣味だったり、恋愛だったり、仕事だったり、そういう幸せをどうやって追えばいいのかもわかりません。


何をしたって全然楽しくありません。

この船がどこに向かっているのか、まるでわかりません。


みんなそんなものだと言う人がありますが、全く違います。

大体のみなさんが言うのは朝が来れば夜が来る。夜は暗いから航路がわからないという話です。

朝が来て、光が当たれば、また穏やかに、笑顔で進み始めます。


少し話が逸れました。

健康とは何でしょうか。

どうすれば健康になれるでしょうか。

健康になるために、お金を払って医者へ行く。

医者へ行くために身体に鞭打って働いてお金を稼ぐ。

そんなことが、果たして本当へ健康への道なのでしょうか。



タバコをやめればいいのでしょうか。酒をやめればいいのでしょうか。

きっと違います。そもそも、酒もタバコもやっていなかった、青年の頃から、私の身体は不調だったのです。

なら運動すればいいのでしょうか。朝から夜まで仕事をして、疲れた身体で帰ってきて、身体に鞭打って運動する。

それで果たして健康になれるのでしょうか。

きっと違います。テニスをしていた頃から、私の身体は不調でした。


きっと、ボロ船なのは仕方ないのです。

生まれた時にそういう身体に生まれたのだから、これはもう致し方ないのです。

一回船を作ってしまえば、そのあと何をどう修理したって、まったくボロがない、真新しい船になどなりようがないのです。


では、どうすればいいのか。やはり、心のあり方でしょう。

風は心から吹いています。

あなたの、私の、胸の内から吹いてきます。

その風がしっかり目的地へ向いて吹けば良いのです。

風が弱いときもあります。向かい風のときもあります。

でもきちんと目的地の方へ運ぼうという意思を持っていれば、それが1番です。


でも、もうダメです。全く凪いでしまっています。

私の横を通りかかる船と、たまに挨拶を交わすことしか、もはやしていません。

船はカビやサビでいっぱいです。

魚は取れますが、そんなことでは船は治りませんし、風も吹きません。


もう、土台無理なのです。進むべき理由がないですから。


だからといって、戻ることもできません。


では、どうするのか。


深海を目指すしかないのでしょう。

深海を目指すなら風など要りません。どんなに船がボロボロでも問題ありません。


ただ、船に入ってくる水をそのまま受け止めて沈んでいくのに身を任せれば良いのです。

大丈夫。前に進むか真っ直ぐに進むのかの違いしかありません。距離は同じです。


海は知識です。

とにかく闇雲にモノを学ぶしかありません。

学校の勉学にこだわる必要はありません。

それをどう活かそうかなど考える必要もありません。


普通の船なら海水を汲み上げたら、それを浄水して、真水にして使う。みたいなことが必要になるかもしれませんが、深海に赴く覚悟を決めた私には、必要ありません。


ただ船にたっぷり受け入れる。それだけでいいのです。

進むべき道が決まればきっと大丈夫。きっと健康です。


もし前へ進みたくなれば、そのときは深海の地底を這いましょう。深海で財宝の見つかることを、私は心から願います。


おやすみなさい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ