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ハティ流星群

 真っ暗な空に大きな鳴き声とともに現れたのは月とハティだった。アオーンという遠吠えが静かな夜に響いた。


 それはとてもこの世のものと思えないほど綺麗だった。赤や緑、青色などカラフルな光のシャワーだった。


「これが流星群?」


 私はシャッターを切るのも忘れて流星群を見ていた。フェンに言われてやっと思い出した。


「フェン、私とフェンとドラゴンとハティをまとめて映してしまおう」


 カメラをセットした後、フェンと私は寝ているドラゴンの前に立つ。


「3、2、1、はい、チーズ」


 


 朝になった。かなりの時間が経ったのにまだあの光景が忘れられない。ドラゴンの寝床からはあれからすぐに離れた。


「帰ろう。フェン」


 ほうきをポンとだすと私はほうきにまたがる。フェンを籠に入れるのも忘れない。


 思わぬ出来事も多かったが、流星群を見れて良かった。これであのおじいさんにドヤ顔できる。


 何事もなく私達はシラエ山を超え街に戻る。街はいつもどおり賑わっている。ずっと人っ子一人いないところにいたので新鮮さを感じる。


 今は昼間だ。あの酒場が開くまでまだ時間がある。私はカフェで流星群の写真を見ながらあの夜のことを思い出していた。あまりにも長くいるのでフェンが寝てしまった。


「向かいの席、座っていいかな」


 顔を上げると、おじいさんがいた。私は迷わず「はい」と返事した。


「流星群は見れたのかい?」


 どうせ見れなかっただろうけど……とおじいさんはと付け足した。


「どうしてそう思うのです?


「これはお前さんが行った後に思い出したのじゃが、あの話は親父の冗談だったのじゃ」


 おじいさんはそれから「つまらん親父の冗談に付き合ってくれてありがとう」といった。


「冗談だったんですか!! あれ」


「怒ってくれて別に構わん。こちらが悪いんだからな」


「別に怒っていません。驚いただけです」


 私は流星群の写真をおじいさんに見せる。おじいさんはとても驚いて今にもひっくり返りそうだった。


「嘘から出た真って本当にあるんですね」


「ドラゴンととったのかね?」


「そうですよ。寝ているドラゴンがいたので撮りました」


 おじいさんは「そんなことがあるかね」と信じていなさそうだ。信じていなさそうなおじいさんに私は「写真が証拠ですよ」と返す。


 私はおじいさんが写真を見終わるのを待った。あの写真は私でも信じられないくらい奇跡が重なった。


 おじいさんはお辞儀をして店をでていった。


「さて、フェン。次の街に行こうか」


「もういいのですか? エウアドネ様」


「ええ、まだ見ぬ世界を早く見て見たいですから」


 それが私の生きがい。生きる目的だ。私は町の門に向かって歩き出す。


「まさかとは思いますが今から行くのですか? エウアドネ様」


 私の歩む足が止まる。明らかに宿とは反対側なので私の目的はだれの目にも明らかだ。


「フェン、善は急げって言葉がありまして……………」


「その言葉はこの前聞きました」


「そんなー。ひどいですよ~。私はただ早く珍しい魔法動物に会いたいだけなのに」


 私の開き直った言葉にフェンはため息をつく。べつにそんな「めんどくさいですね」みたいに深くため息をつかなくてもいいじゃないですか。なんか私がみじめになります。


「みじめなのは前からですよ、エウアドネ様」


「な、フェン。今心を読みましたね。それに『前から』ってどういうことですか」


 これは一度、モフモフの刑に処さねば。


「フフフ」


「どうしたのですか? エウアドネ様」


 急に笑い出した私にフェンは首をかしげる。


「なんかね。日常もいいなって思っただけだよ」


「日常ですか?」


 そう、日常だ。盗賊をやっつけたりドラゴンに追いかけられたりする非日常もいいけど、やっぱり日常もいい。


「私はこれからは非日常だけじゃなく。日常も追いかけてみようかな」


「ぜひそうしてください。エウアドネ様」


 私はこうして宿屋に足を向けた。

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