捜し物 【月夜譚No.166】
捜し物が見つからない。もう数日捜しているというのに、一向にその手掛かりさえも見つからない。
石畳を歩いていた足を止め、女は眉を顰めた。こんなことなら、きちんと管理をしておけば良かったのだ。他の者に任せるのではなく、自身の手でやっておけば良かった。――まあ、今更後悔したところで、後の祭りなのだが。
女が溜め息を吐いた時、ふと視界の端に見覚えのあるものが映った。もしやと思い、駆け出して細い路地に入る。
目の前にあった細い腕を掴むと、目の前の小汚いフードが脱げて、愛らしい少女の顔が現れた。大きな瞳は恐怖に見開かれ、今にも涙が零れ落ちそうだ。
「――やっと見つけた」
逃げようとする少女の腕を強く握る。淡い色の髪の間に、黒の小さな角が見え隠れした。目を細めた女は、薄く開いた唇から鋭利な牙を光らせて笑う。
この使い魔は特別なのだ。だから、今度こそ自分の目の届くところで監視をせねばなるまい。
夕日が沈む街並み。暗い路地は、数分もしない内に闇に染まった。