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欠片1
「陽太、貴方はお兄ちゃんになるのよ。」
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木漏れ日の優しい春の暦、僕には世界でたった一人の妹が出来た。
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産まれたばかりの妹は顏を紅くして、生命の声をあげる。
小さな小さな手にそっと指先を近付けてみる。
反射的に妹は僕の指を小さな手で懸命に握った。
「この子の名前は月咲よ。」
月咲…。
月咲…。
「いい名前だね、お母さん。」
月咲と名ずけられた妹を、僕は抱き上げた。
まるで神の祝福を一身に受けたようなその日
僕は必ず月咲を護ろう。
そう固く誓った。