二章 19.進化するチームワーク
ボス二匹を放り投げた俺は、大地を強く踏み抜きすぐさまそいつらに追いつく。
「グルルルゥ……!」
「ガルアァ!」
イヌ共は俺に投げられたのが気に入らなかったのか、だいぶ苛立ちを見せていた。
面白いからもう少し構ってやりたいのだが、残念ながら今はそこまで余裕が無い。こいつらを早いとこ片付けて、ガゼル達の戦況を見に戻らなければならないからな。
「急いでやるから力を貸してくれクウ!」
『クアッ!』
最速でイヌ共を倒す為、俺はモンスターボックスに居るクウと融合する。これで準備は万端。後は軽く捻って終了だ。
「グラアァァァア!」
「馬鹿が……吹き飛べ!」
ボスイヌの一匹が無謀にも突撃してきたので、俺は腰のホルスターからトイブラスターを引き抜き素早くビームを照射する。
甲高い射撃音が鳴り響くと同時にボスイヌの体は膨張していき最後には弾け飛んだ。相変わらずグロテスクな攻撃である。ともかくこれで残りは一匹だ。
「ガルルゥ!?」
突然破裂した仲間を目撃し、残りの一匹は驚愕したような顔をしている。そういう感情表現は出来るんだな。こいつらほんとにどういう生物なんだろうか。
「ま、それは今は置いておくか。すぐに終わらせるぞクウ!」
『クウー!(やっちゃえアカリ!)』
魔物への疑問は耐えないが、今はガゼル達の方が気掛かりなので、湧いた疑念は頭の片隅に仕舞っておく。
驚いているのか動けずにいるボスイヌ目掛け、正面から突撃する。
「うらぁ!」
「キャウゥン……」
その後残り一匹との戦闘をものの数秒で終わらせた俺は、落ちた魔石を回収した後ガゼル達の元へ戻って走り出す。
さて、この少しの間に三人がやられていないといいのだが。
「ふん、俺達を混乱させようって魂胆か……」
「でもこの程度の速さなら、兄貴との訓練のお陰で大したことなく思えるよ」
「確かにアカリくんの方がずっと速いですもんね……」
ガゼル達の元へ戻ってくると、未だ戦闘の最中であった。ボスイヌは現在木の上を縦横無尽に移動しているようだったが、動きは俺よりも遥かに遅い。この程度の速度なら、強くなったあの三人が後れをを取ることはまず無いだろう。
「ガルル――」
「そこです!」
「キャイン!」
背中合わせに構える三人の死角を狙うように、ボスイヌは真上から襲い掛かる。だが、その動きは完全に補足されており、狙いすましたようにネネティアが右眼を撃ち抜いた。
あの一瞬で急所を狙い撃つとか、ほんとに弱点を狙うのが上手くなったもんだ。
だが、確かに三人は強くなったようだが、中途半端に追い詰めすぎたな。ダメージを蓄積されたボスイヌは、勝つ為に相打ち覚悟でガゼル達に襲い掛かる。
「グ、グルルルルゥ……ガアァァァァァァァア!」
「くっ、まだ終わらないか!」
迫り来るボスイヌ目掛け、ガゼルは新兵器紅業火で対抗しだした。凄いなあの魔道兵器、魔法の力が乗ってる分、通常の魔弾よりも高威力になってる。
だけど、それでもボスイヌを止めるには、まだ少し足りていないか。
「ここだ!」
ボスイヌがガゼルの目前まで迫ったその瞬間、ネネティアが撃ち抜いたことで生まれた右サイドの死角を上手く使い、セロルが首を鮮やかに跳ね飛ばした。
なかなかいい動きをする。特訓の成果が良く出ているな。
「か、勝った、のか……?」
「う、うん、みたいだね。僕達だけで、あんな大きい魔物を倒したんだ……」
「本当に、成長してるんですね……」
よくやったな。マリナですら単独では勝てなかった、あのゴリラと同レベルの魔物を相手に勝ってしまったんだから。
「よう、いい勝負だったな」
勝利した三人を労いながら、彼らの傍まで歩み寄る。
クウとの融合は出ていく前に解除しておいたので、そっちも問題無しだ。
「あ、兄貴!見ててくれたんだ!」
「そっちは二匹もいたはずだが、もう片付けたのか」
「ああ、お前らが心配だったから速攻で倒して見に来たんだけど、無事勝てたみたいで一安心だよ」
「確かに無傷で勝てはしましたけど、それでもギリギリの戦いでした……」
勝利を喜ぶガゼルとセロルとは対照的に、ネネティアだけは少し元気がないようだった。
彼女の言う通り、最後のボスイヌの凶暴化は少し危険だったからな。セロルが冷静に対処してなきゃ何人か怪我もしてただろう。
「確かに、セロルがトドメをさしてくれなければ今頃俺はやられていたか……」
「うん、僕も初手で仕留めきれなくて、反撃の隙を与えちゃった……」
「やっぱり、どれだけ成長しても魔物は怖いです」
三人はそれぞれ先の戦闘を振り返り、反省点を見つけて落ち込んでしまう。まぁ初戦であれだけ戦えたのだから、俺は十分だと思うがな。
誰しも最初は失敗を繰り返すものだ。そこからちゃんと学んでいけるなら、この三人はもっと強くなるだろう。
「まぁ全員実戦経験は皆無だったんだから、そういう反省点は今後戦いの中で潰していけばいいさ。自分で気づけてるなら何も心配はいらねぇよ」
「そう、ですね……この反省は必ず次に活かします!」
「うん、これからもっと戦って、僕はいつか兄貴みたいな立派な人間になってみせる!」
「アカリが立派かどうかは疑問だが、その考えには賛成だ」
うん、全員またやる気が出て来たみたいでなによりだ。ただガゼルよ、一応言っておくが俺はこの世界を救おうと考えてるくらいには、一応立派な人間だからな。
「「「アオオオオォォォォォォン!」」」
「おっ、次の獲物のお出ましだな」
ガゼル達とそんな風に話していると、あのボスイヌ共の敵討ちとばかりに無数のガルファング共が俺達の周りを囲んできた。
ここからは俺も加わって部隊の連携で対処していく。久しぶりに三人が味方側にいるから、ちょっとテンション上がるな。ここ最近は敵役しかやってこなかったし。
「よっし、俺達の磨き上げたチームワークをこのイヌ共にお見舞いしてやるか!」
「ああ、紅業火の炎で焼き尽くしてくれる」
「ぼ、僕も負けないよ!」
「援護射撃は任せて下さい!」
四人でそれぞれ武器を構え、以前に決めていた陣形をとりイヌ共と対峙する。
約一カ月前、マジカロイドのデボーンと戦った際は散々な結果に終わってしまったが、もうあの時とは違う。成長したこのチームの力、とくと味わってもらうぞ。
「ガルルゥ!」
「俺が壁になるから全員その隙に攻撃だ!」
「任せろ!」
飛びかかってくるガルファング数匹を相手に、俺が体を張って食い止める。
そして俺の指示通り、その隙をついてまずはガゼルの魔弾が火を噴いた。下位の魔物相手ならガゼルの魔道兵器は絶大な威力を誇り、一発掠るだけであっけなく魔石へと変化させていく。
「せやぁ!」
セロルはいつの間にか魔物共の背後をとると、瞬く間に斬り捌いていく。魔力を節約している影響で魔剣がほとんど見えず、セロルが近づくと魔物がひとりでに魔石に変化していくようであった。
「そこっ!隙ありです!」
ネネティアは俺が魔物の注意を集めている間に、的確に頭を狙って一撃で仕留めている。本当に不運な体質さえなければ優秀な人材だ。いや、最近はその体質をもって余りある実力を付けているか。
「ははっ、もう下位魔物程度なら俺達の敵じゃないな!」
仲間達の逞しく成長した姿に、俺は思わず笑みを零してしまう。きっと、この部隊はもっともっと強くなっていくだろう。
「さぁ、今日は大量に稼ぐぞお前ら!」
「了解だ!」
「うん!」
「任せて下さい!」
こうして、この日俺達は体力の持つ限りひたすらに魔物を狩り続けたのだった。




