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二章 9.意外と早い再会

 魔石を回収し終え帰ろうとした矢先、どこかで人と魔物の声が聞こえてきたので、確認の為俺達は現場へ急行している。

 勘違いならそれでいいのだが、恐らく俺の予想が正しければ人間の方が劣勢だろう。


「取り敢えず見つからない様に、木の上から移動するか。クウ、魔力借りるからモンスターボックスに入ってくれ!」

「クアッ!(分かった!)」


 人前で融合を見せる訳にはいかないので、俺はクウをモンスターボックスに戻した後木の枝を伝って目的地へと急ぐ。

 すると距離を埋めるにつれ、魔物の雄叫びと誰かが魔弾を放っている音が微かに聞こえ始めた。魔物の数はかなり居るようだが、それに対して銃撃音が明らかに少ない。やはり状況は芳しくないようだ。


「間に合うといいんだが。てかそもそもここで戦ってる奴って何者なんだ?あんまり絡むのは良くない気はするんだよな……」


 元々俺はこの禁止区域に不法侵入している訳で、救助の為とはいえ誰かを助ければその点に関する言及は逃れられない。

 状況を見てどうにかなりそうなら、手出しはしないでおこう。


「アオォォォォオ!」

「くっ、しつこい……!」


 どう対応するかを考えながら現場に向かっていたら、ようやく言葉がはっきり聞こえるまで近づいてきた。

 慎重に木々を陰にして気付かれないように近づくと、大量のイヌ型魔物に囲まれながら、一人の生徒が魔道兵器を構えているのを発見する。

 イヌ共のせいで逃げ場を失って、完全に八方塞がりな状況だ。


「おいおい、劣勢だな。この数相手に勝てるのか?」


 木の上からその様子を観察していたが、どう考えても生徒の勝ち筋はゼロだ。なぜこんな危険な場所に、あいつは一人で居るのだろうか。


「ちっ、弾切れ……ならこっちで!」


 フォン!フォン!


 生徒はアサルトライフルの様な魔道兵器を構えていたが、残念ながらそちらは魔弾が切れたらしく、明らかに予備の武器であろうセルフに持ち替えた。


「アオォォォォオ!」

「きゃあっ!」


 だが、残念ながら今あの生徒が対面している魔物を相手にセルフでは威力不足だった。このイヌ共の群れのボスっぽい、五メートル程の巨大を持つイヌを相手には全くの無力だ。

 ボスイヌは青紫っぽい体毛で、体の所々に鉱石の角が生えている。雰囲気から以前戦ったゴリラと同レベルの魔物だろう。


「アオォォォォオ!」

「こんな所で、私は死ぬの……?」


 吹き飛ばされて地面に横たわる生徒に向かって、ボスイヌは容赦なく腕を振り下ろして叩き潰そうとする。

 さすがにそろそろ動かないと危険か。


「折角だしビームを試してみよう。くらえボスイヌ!」


 俺はボスイヌの背目掛け、魔道兵器の引き金をめいっぱい引き絞り魔弾を照射する。

 するとガントツの設計通り魔弾は一筋の光となり、ビームへと変貌を遂げてボスイヌへと襲いかかった。


「アオォッ!?」


 ボスイヌは突然背中を攻撃されて驚愕する様な鳴き声を上げるが、俺はそれを一切無視してビームによる攻撃を続ける。

 するとボスイヌは、魔弾の影響で背中からどんどんと膨張していき、仕舞いには膨れ上がった風船のように跡形もなく吹き飛んだ。

 ビームは想像以上にグロい攻撃だった。


「な、何……?魔物はどこへ……」

「よっと、大丈夫か――ってあっ!お前はあの時の!」


 これ以上あの生徒が狙われる訳にはいかないので、庇うように俺は降り立つ。

 そして、俺はその生徒の正体に驚愕した。

 そう、そいつはつい数時間前ガンテツと話をしていた際に割り込んで来やがった、礼儀知らずの女子生徒だったのだ。


「……あ、あの時の補欠組。なんでこんな所に……?」

「いや、それはこっちのセリ――まぁいいや。今はこのイヌ共を蹴散らすのが先決か」


 何でこんな所に居るんだと問い詰めたい気持ちでいっぱいだったが、今は目の前の戦闘に集中だ。

 例えイヌ相手だろうとも、油断すれば足元をすくわれるからな。


「「「ワオォォン!」」」


 イヌ共はボスイヌが倒されたことにより、突然のことで混乱していたが、次第に正気を取り戻しだし俺に敵意を向けてくる。

 数は多いが、まぁ問題は無いだろう。もう強そうな奴も残っていないしな。


「おらおらおら!こんなものかイヌ共が!」

「キャィン!」、「ワォン!」、「クウゥン……!」


 魔弾を連発しイヌ共を吹き飛ばす度に、悲痛そうな鳴き声が響き渡る。魔物とはいえ見た目は完全にイヌだからな。鳴き声が精神的に少しきつい。


「けっ、ほらとっとと失せな。でないと全滅させちまうぞ?」

「バウバウ!」、「ワオォォン!」、「グルルルルッ!」


 このままイヌ共を全て倒すのは正直面倒なので、あえて逃げ道を作ることでそちらに誘導するよう仕向ける。

 お陰でイヌ共は捨て台詞の様な鳴き声を上げながらも一目散に逃げて行った。これで一件落着だな。


「ほら、終わったぞ。もう安全だ」

「……あ、あなた何者なの?補欠組じゃなかったの?」

「補欠組じゃねーよ。俺は五組のアカリ・リーシャンだ。あんまり他クラスを見下すなよな」

「……ごめん」


 まったく、さっきから補欠補欠とうるさい奴だ。助けてやったというのに、なんて生意気な態度なのだろうか。

 まぁ反省して素直に謝ってきたから一応見逃してやるが、ただクウのことを子守用マジカロイドと馬鹿にしたことはまだ許してねーからな。

 ん?そう言えば、全く同じことをガゼルにも言われた気がする。もしかしてこいつガゼルの親戚だったりして……いや、それはさすがにないか。


「んで、お前はたった一人でこんな所に何をしに来てたんだ?」

「……強い魔物がいるって聞いたから、腕試しに来てただけ」

「腕試しで死にかけてんじゃねーかよ」

「……あなたには関係無いでしょ」


 ふむ、確かに関係あるか無いかと言われれば無いな。でもそれは助けない理由にはならない。

 他人を見殺しにするほど俺は残忍では無いし、見捨てたらきっと寝覚めも悪かっただろうから。


「……魔弾さえ残っていれば、あんな奴ら私一人でどうにかなったわ」

「それは無理だろ」

「……なんでそう言い切れるの?」

「あのボスイヌは二年のトップでも歯が立たない強さだからだ。弾切れも予測出来ていないお前が勝てる訳ない」


 あのボスイヌの強さは以前戦ったゴリラと同レベルだった。それはつまりマリナでも苦戦する程の脅威であり、いくら推薦組とは言え一年がどうこうできる相手ではないということでもある。

 魔弾の管理もまともに出来ない奴に、勝てる未来などある訳がないだろう。


「……自分がたまたま強い魔道兵器をもってたくらいで偉そうに」

「魔道兵器の強さは関係ねーよ。お前より俺の方が強かった、ただそれだけのことだ。分かったらさっさとこんな所出るぞ」

「くっ……」


 推薦組だの何だのと偉そうなことを言っていた割に、敗因を魔道兵器にするとは無様だな。いつまでもこんな奴にかまってる訳にはいかないし、とっとと学園に帰ろう。


「ほら行くぞ。俺が学園までは守ってやるからついてこい」

「……そっちは門じゃないけど、どこに行くつもり?」

「え?そんなの洞窟に決まって――あ」


 警備員に見つからないように洞窟から帰ると言いかけたところで、俺はここに不法侵入していることを思い出した。

 まずい、こいつに俺が不法侵入者だということがバレるのはあまり良い予感がしない。


「……まさかあなた、ここに勝手に入って来たの?」

「なっ!そ、そんなわけないだろ!」

「……分かりやすい奴ね」

「ぐぬっ……!」


 誤魔化すことも一切できず、俺が不法侵入したことはあっさりとバレてしまった。この嘘が苦手な性格早く治した方がいいな。


「……ふーん、つまりあなたは私と同類って訳か」

「んだよ、お前も不法侵入者だったのか」


 てっきりこいつは許可を得てここにきているのかと思ったら、俺と同じ人間だった。まぁ生徒は侵入禁止なのだから、推薦組とはいえ許可されるわけもないか。


「……学園にあなたが不法侵入してたことを話したら、どうなると思う……?」

「脅しか?言っとくがそれだとお前も同罪だからな」


 なぜか急に何かを企むようなあくどい笑みを浮かべてきた。一体何が狙いか知らないが、何かしようってんなら道ずれにしてやるからな。


「……黙っててほしいなら、私と取引しない?」


 脅しには屈しないという俺の態度など一切無視して、彼女はそんなことを口にした。

 こいつと取引か、正直あまり良い予感はしない。まぁ話だけは聞いてやるが。


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