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二章 8.狩りの時間

 魔道兵器の制作費を稼がなければならなくなった俺は、シーラに教えられた狩場へと向かっていた。

 そして現在は、狩場へと繋がっているという洞窟を発見したところである。


「これ洞窟ってよりは、岩の隙間って言った方が正しい気がするな。ほんとにここ入れるのか?」


 俺の見つけた洞窟は、岩が無造作に積み重なった結果奇跡的に生まれた様な小さな隙間であった。

 本当にここがシーラの言っていた洞窟なのかは分からないが、他にそれらしい場所は見当たらなかったので、取り敢えず入ってみることにする。


「クウー(暗いね)」

「だな、灯りになるものでも持ってくればよかっ――あっそうだ!」


 洞窟内の暗闇を照らす光でも持ってくればよかったと思った瞬間、俺は自分の腰にぶら下がっているものに気がついた。

 この新しく造ってもらった魔道兵器は、耐久度を知らせる為に光る機能が付いていたのだ。


「よしっ、これで多少は照らせるぞ!」


 魔道兵器の使い方としては間違ってるし、最初の使い道が洞窟を照らすことなのも不服だが、それでも洞窟内は少しだけ見やすくなった。


「うーん……おっ、奥に行けくと道が開けてきたな。ここで正解みたいだ!」

「クアッ!(良かったねアカリ!)」

「おう!それじゃこのまま狩場って所へ向かうか」


 洞窟を照らすと、奥に進むにつれ道が広くなっていることが確認出来る。

 恐らくこのまま道なりに進めば、シーラの言っていた侵入禁止区域に到着する筈だ。


「さーて、また魔物狩りだ。しかも結構高値で売れる魔石が多いらしいからな。ぼろ儲けしてガンテツのおっさんを驚かせてやるぞ!」

「クウ?(融合はする?)」

「うーん、まぁ禁止区域なら誰も見てないだろうし……融合するか!」

「クウー!(やったー!またアカリと一緒になれる!)」


 以前の任務からもう半月ほど経っているので、クウも暇を持て余しているだろう。定期的に運動をしないと健康にも悪そうだし、今日は一緒に戦って存分にストレス発散してもらうか。

 それに念の為マントも装備してきているので、いざという時も上手く誤魔化せる筈だし。


「クアッ!(あっ、光が見えるよ!)」

「おっ、ようやく出口か。じゃあやるぞクウ!俺達の前じゃどんな魔物も敵じゃないぜ!」

「クウー!」


 クウがいち早く洞窟の出口を発見したので、これから始まる戦闘に向けて気合いを入れ直す。

 俺が拳を突き上げるとクウも真似をして片手を上にあげていた。なんて愛らしい仕草なのだろうか。

 と、そんなことを思いつつ俺はクウと融合しながら、洞窟を抜けて禁止区域に足を踏み入れたのだ。


「へぇ、密林みたいな雰囲気だな」


 禁止区域は草木が鬱蒼と生い茂る、ジャングルの様な場所だった。遠くから微かに魔物らしき者の鳴き声も聞こえ、その雰囲気からなかなかの強者揃いであることが伺える。


「キイイィィイ!」

「おっと、早速お出迎えか」


 禁止区域の雰囲気に感嘆の息を漏らしていると、突然頭上から何かが降ってきた。俺はそれをサイドステップで軽く躱しつつ、降ってきた何かの正体を確認する。


「あの見た目、サルだな……ってことは、この前のゴリラの下位互換か?」


 頭上から降ってきたのは、真っ黒な体毛が全身を覆っているサルだった。チンパンジーみたいだが、刃物みたいな尻尾も確認出来るので、少し違うらしい。


「キキィィィ!」

「うるせぇな、そんな興奮するなって!」

「ギィィ……!」


 黒サルはキィキィ鳴いて煩いので、素早く間合いを詰め拳を腹に沈みこませることで黙らせる。

 強さも大したことは無かったので、やはりあの時のゴリラの下位互換で間違いないだろう。


「よし、まずは一つ目だ。このままじゃんじゃん稼ぐぞ!」

『クウー!(おー!)』


 俺は仕留めた黒サルの魔石を回収し空に向かって掲げながらそう宣言する。

 クウも俺の脳内で鳴き声を上げ、気合は十分だ。折角だから久しぶりに空間魔法の練習でもするかね。


「ホロロロロッ!」

「おっ、今度は鳥型の魔物だな。なら新兵器を試してみるか……」


 黒サルの魔石を荷袋に仕舞っていると、またも頭上から魔物が襲ってきた。

 しかも今度はオウムみたいな見た目をした鳥型だったので、俺はガンテツより受け取った特注の魔道兵器を構える。


「ネネティアから魔道兵器の訓練は受けてるからな。練習の成果を見せてやる!」


 特注の魔道兵器は自身の魔力を原動力として起動する。俺が魔力を注ぐと魔道兵器は のフレームは青い光の筋をほとばしらせ、引き金を軽く引いた瞬間光り輝く魔弾が発射された。


 フォン!


「ホ、ロォッ……」


 新兵器の魔弾を受けた鳥型の魔物は、着弾した瞬間体を爆散させる。見るも無惨な最後であった。威力も弾の速さも「セルフ」とは桁違いだ。


『クウー!(すごいねー!)』

「ああ、これは想像以上の強さだな」


 軽く一発放っただけでこの威力だ。セルフなら後二、三発は加えないと倒せなかったことも踏まえると、俺専用の魔道兵器は恐ろしい魔改造を遂げていた。

 これだけ強い武器なら、うちの部隊でも何か活かす方法があるんじゃないか?


「「「ホロロロロッ!」」」

「ん?今度は群れで来やがったか。なら全員纏めて一網打尽だ!」


 魔道兵器の強さに驚いていると、先程と同じオウムの魔物が群れ単位で襲ってきた。

 さっきの奴の敵討ちのつもりなのかもしれないが、俺の前では数など脅威ではない。というかむしろ、大量の魔石を運んでくれる親切な鳥だ。


「やるぞクウ、魔道兵器と空間魔法のコンボだ!」

『クアッ!(任せて!)』


 襲ってくるオウム共に向かって、こちらもマントの下で翼を広げ飛翔する。

 ある程度距離を埋めたので魔道兵器の引き金を引き魔弾を放つ。そしてそれと同時に、クウのアシストで空間魔法を発動。


「ホロッ!?」


 クウの力で魔弾はオウムの頭上から降り注ぐ様にワープし、オウムの一匹は訳が分からないといった様子を見せながら爆散した。


「いいぞクウ!」

『クアッ!(こんなの余裕だよ!)』

「よし、そんじゃ変幻自在の砲撃をお見舞いしてやるぜ!」

『クウー!(やっちゃえー!)』


 魔道兵器の試し撃ちはもう十分なので、俺は引き金を何度も引き魔弾を連続で発射する。そしてその度にクウのワープで魔弾の軌道を操作することで、オウム共目掛け四方八方から襲いかかった。

 オウム共もどうにか逃げきるため拡散して飛ぼうと足掻いているが、その周囲から囲む様に魔弾を分散させている影響で突破出来ずにいる。

 クウと魔道兵器が合わされば、集団戦においては敵無しだな。


「ふぅ、これで終わりだな」

「ホロォ……」


 オウム共を撃ち落とし続けて数分、ようやく最後の一匹を仕留め終えて俺は一息つく。

 地面を見ると、以前のガイアントよりも大粒の魔石が所狭しと転がっていた。これだけでももうかなりの大金を稼げたんじゃないだろうか。


『クウー(いっぱい倒したねー)』

「だな、回収する方が時間が掛かりそうだよ……」


 魔石の数は恐らく数百個程はあるだろうし、これ全部を拾っていたら腰がぶっ壊れるだろうな。というかそもそも、こんなに大量の魔石荷袋には入りきらない。


「これはどこかに纏めて隠しておいて、何回かに分けて運ぶしかないか……」

『クウ?(クウが手伝う?)』

「いや大丈夫だよ。クウのワープは出来るだけ人目に付かせる訳にはいかないからな」

『クアッ!(分かった!頑張れアカリ!)』

「おう!こうなったからには、一つ残らず売り捌いてやるぜ!」


 今後の方針を決めた俺は、クウに応援されながら魔石の回収を始める。

 隠す場所を決めて、魔石を拾っては山を作り、荷袋にも詰めるだけ詰め込んで、最後に隠した場所をカモフラージュの為に草木で覆えば完了だ。

 そこまでに掛かった時間は約一時間。やはり倒すよりも後処理の方が地獄だった。姿勢も悪かったせいで腰が痛いし。


「くあぁ〜、疲れたな……」

「クウー!(アカリお疲れ様!)」

「ああ、クウも手伝ってくれてありがとな」


 軽く伸びをしているとクウが俺の肩に飛び乗ってきた。

 魔石を拾ってる間は暇だろうと思い融合を解除していたのだが、クウも小さな手で魔石を一つ一つ集めてくれていたのだ。なんて優しく愛らしいのだろうか。


「さてと、もう魔石は持ちきれないしそろそろ帰る――」

「アオォォォォオ!」


 俺が帰ろうと宣言しかけた時、遠くの方から犬の遠吠えの様な鳴き声が響いてきた。

 俺達を狙っている訳では無いが、それでも声の質から戦闘状態であることははっきりと伝わってくる。

 そして――


「微かに、人の声みたいなのも聞こえたな……」

「クウ?(誰か戦ってるのかな?)」

「みたいだ。ちょっと様子でも見に行くか」


 俺の思い過ごしならいいのだが、恐らく戦況はあまり芳しくないだろう。

 最悪助太刀も考慮するべきか。


 ともかく状況を確認するため、俺とクウは現場へ急行するのだった。


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