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八章 32.窮地を共に

 マリナの参戦により炎の魔人は魔人化し、全力で二人を叩き潰そうと動き出した。だがそれに対抗するようにマリナも魔力解放を行使することで、魔人の攻撃を鮮やかに消滅させ懐へと急接近する。

 炎の魔人の全力に対抗する為、シンリーとマリナは全てを振り絞り挑むのであった。


「斧を跡形もなく消すとは厄介な技じゃな。じゃが、その力は一方向にしか効果が無いと見た!ならば周囲から炎で囲んで、あぶり殺してやるわ!」

「ちっ、もう見抜かれた。魔人の観察眼は厄介ね……」


 マリナのテンスは強力であるが、それでもその力は万能では無い。左手で触れたものにしか効果は発揮しない為、それ以外の所から攻められるのには弱かった。

 だから周囲に展開される炎を前にして、マリナは攻めを阻まれ撤退を余儀なくされたのである。


「逃がすか!そなたさえ居なくなれば、森の魔人など最早敵ではないのだ。故にまずはそなたから先に片付ける!」

「ぐっ、なんて物量なの……!」


 厄介な存在であるマリナを逃がすまいと、炎の魔人は空中にいくつもの炎の弾丸を生み出し、それを連射することで逃げ場を潰す集中攻撃を仕掛けてきた。

 四方八方あらゆる方向から狙って来る炎の弾丸を前にして、マリナは逃走を阻害され強制的に弾丸を迎撃する為に立ち回ることとなる。


「魔力解ほ――ぐぎゃあっ!」


 襲い掛かる弾丸を魔剣で斬り伏せ、それでも防げない弾丸は魔力解放で消滅させようと左手を突き出す。しかし、彼女がテンスを発動させようとしたその直後、炎の弾丸は目の前で激しい爆発を巻き起こたのだ。

 テンスの対抗策として、炎の魔人は弾丸を直撃する寸前で爆発させ、その爆風によってマリナにじわじわとダメージを与える作戦に切り替えたのである。

 これによりマリナは魔力解放での防御を封じられ、あらゆる方面からの弾丸を浴びることとなった。


「好き勝手やってんじゃ無いわよ!」

「むっ、とうとう出てきおったか森の魔人!」


 そんなマリナの奮闘に加勢すべく、一時撤退し体勢を立て直していたシンリーが戻ってきた。

 シンリーは炎に耐性のあるツルでマリナを弾丸の包囲網から連れ出すと、自分の背後に隠しそこで治癒の力により傷を癒す。

 間一髪のところで助けられたマリナは、どうにか一命を取り留めたのであった。


「ごめん、攻めきれなかった……」

「私こそあんた一人に戦わせて悪かったわ。でもお陰でまた力を溜められたから、ここからは二人で連携してあいつを倒すわよ!」

「えっ?連携か……。ふふっ、シンリーに正面から共闘を持ち掛けられるなんて、何だか不思議な気分ね」


 ここまで言葉に表すこと無く共に戦ってきた二人だが、この時初めてシンリーから共に戦うことを口にしてきた。

 そのことが新鮮だった為か、マリナは思わず笑みが零れてしまう。


「ふん、いやなら別にいいのよ。あんな奴私一人でも倒しきれるんだから」

「ごめんごめん、二人で力を合わせて倒しましょう。アカリもその方がきっと喜ぶだろうし」

「ダーリンが喜ぶ為なら仕方ないわね。力を合わせてとっととこいつを倒して、ダーリンに勝利を報告しに行かないと!」


 折角距離を詰めようとしたのに笑われてしまいシンリーは拗ねてしまったので、マリナはアカリをダシにすることで話をまとめる。

 それなりに付き合いの長くなってきたマリナは、少しずつシンリーの扱い方を学んでいたのであった。


「はーっはっはっは!今更手を組んだところでもう遅いわ!そなたらの手の内はもう割れているのじゃからな!」

「手の内は割れてる?馬鹿言うんじゃ無いわよ。いつ私達が全ての力を出し切ったって言ったの?」

「えぇ、本物の連携でこれからあなたを倒してあげるから、楽しみにしてなさい!」

「いつまでも小生意気な態度は治らんようじゃな。ならばその身でもって、己の罪を償わせてやろう!」


 横に並ぶシンリーとマリナに対し、再び優勢さを取り戻した炎の魔人は、高笑いを上げながら攻めに転じる。今度は空中に弾丸ではなく炎の斧をいくつも出現させ、それらを回転させながら飛ばしてきたのだ。


「私が全て斬るわ!」

「ダメダメ、いちいち相手にしてたらキリないから。迂回するわよ」


 回転し襲い掛かる炎の斧を前にして、全てを斬り落とそうとマリナが魔剣を構える。

 しかしそれをわざわざ正面から受ける義理は無いとシンリーは判断し、ツルを使って鮮やかに回避してみせた。


「でもやっぱり悔しいけど、あいつの炎は私じゃ倒しきるのは厳しいわね。だから花で援護するからトドメはあんたが決めなさい」

「分かったわ。私がやる……!」


 ここまで炎の魔人と戦ってきた内容から、自分では勝利の決め手が欠けていると悟ったシンリーは、最後の攻めをマリナに譲ることにした。

 その決断にマリナは少し驚きつつもゆっくりと頷く。


「まずはあの熱さをどうにかするわ、咲き誇りなさい解熱の花々!」


 厄介な高熱に対処する為、シンリーは火山の大地からサボテンの様な植物をいくつも生やしてきた。頂点には可愛らしい桃色の花が咲いており、これらには周囲にいる者に熱に対する耐性を付与する効果がある。

 これで炎の攻撃が当たったとしても、即死は逃れられるという訳だ。


「ついでに眠らせる花も咲かせておくわ。まぁこれは魔人には効果が薄いだろうけど」


 更には睡眠作用のある紫の大輪も咲かせ、シンリーは徹底して炎の魔人の弱体化を狙っていく。だがあらゆることに高い耐性を持つ魔人にはあまり期待は出来ないと、こちらは少々自信なさげであったが。


「危ないと判断したら私がツルで回避してあげるから、あんたは安心して突っ込みなさい」

「分かったわシンリー、背中は任せるからね!」


 シンリーからの手厚いサポートを受けたマリナは、今度こそ炎の魔人を斬る為に走り出す。

 彼女のテンスはもう見破られてしまっているが、それでもシンリーの手助けが加われば、勝機はまだまだ十分にあった。


「あっとそうだ。これも展開しておかないとだったわね」


 そして走り出すマリナを見送りながら、シンリーは忘れていたとばかりにもう一つ最後の花を開花させた。

 その花は球体の様な不思議な形の花弁をしており、そこから一筋の光が天へと伸びる。光は数十メートル程上昇すると、そこを中心に円状に囲む様に魔力で出来た防御膜を展開したのだ。

 この膜は基本的に外敵の攻撃から身を守る盾の役割を果たすのだが、今回はその中にシンリー、マリナに加え敵である炎の魔人も入っていた。

 これがどんな効果を発揮するのか。それはまだ先のことである。


「ふん、何やら色々と小細工を仕掛けているようじゃが、所詮は全て植物の悪足掻き。炎の前には全て無力じゃ!」


 シンリーが様々な花を開花させる様子を見て、炎の魔人は無駄な足掻きだと嘲笑う。

 己が絶対強者であることを信じて疑わない炎の魔人は、シンリーのとった行動が無駄な努力にしか映らなかったのだ。


「この世の中には、天敵に対抗する為に進化を遂げた生物が山ほどいるのよ。自分が有利だからって、相手を下に見過ぎないことね!」

「あっはっはっはっは!そういうことは勝ってから言うんじゃな!」

「何言ってるの、この勝負は私達が勝つに決まってるでしょ。だから先に言ってるのよ」

「強気じゃな。ならばその虚勢ごと全てを焼却してくれるわ!」


 シンリーの補助を笑われたことでマリナは激怒し、反論を口にする。だが結果として勝てないのであれば意味は無いと、炎の魔人はあっさり受け流してしまった。

 その言葉通り勝利を手にする為、マリナは決死の覚悟で真正面からの突撃を開始する。サポートは全てシンリーに任せ、自分は魔人を斬ることのみに集中して。

 こうして炎の魔人との戦闘は、最終局面へと突入するのだった。


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