表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

306/371

八章 15.約束を破った罰

 区長と無事に再会を果たした俺達は、夜にまた会う約束を取り付けると一旦はビルを後にする。

 しばらくは暇になるので、その間はカーリスがこの街を案内してくれるのだそうだ。


「あの場にドロシーは居ませんでしたわね」

「そうだな。なぁカーリス、ドロシーは今どこにいるんだ?」

「ドロシー様は現在我が家の警備をされておられます。あのお方は、基本的にお父様が遠出なされる時以外は外に出ることはありませんので」

「なるほど、面倒くさがり屋のあいつらしいな」


 どうやらドロシーは、区長らの家でのんびり警備の任にあたっているらしい。どうせそうそう襲われることも無いのだから、毎日ダラダラと過ごして豪勢な食事にありついているのだろう。あいつが考えることなど手に取る様に分かる。


「でも外に出る時は一緒に行くって割には、この前のクリサンセマム区へは来てなかったんだよな」

「はい、昔の知人に会うのが嫌だとか駄々を捏ねまして、あれにはお父様も随分と困っておられました……」

「知り合いが迷惑を掛けて本当に申し訳ない……」

「そんな、アカリ様の責任ではありませんので、お気になさらないで下さい」


 ドロシーは俺達がクリサンセマム区で区長と会った時には一緒にいなかった。その時にも聞いたのだが、どうやらドロシーもシンリーと会うのが嫌だったからついてこなかったそうだ。

 魔人全員から恐れられるシンリーも凄いが、雇い主との契約をガン無視するドロシーの胆力にも恐れ入った。本当に魔人とは、全員漏れることなく曲者揃いである。


「それより私はこうしてまたアカリ様と会い出来たことが、何よりも嬉しいのです。森で攫われたとお聞きした時は本当に心臓が止まりそうな程驚きましたが、無事お帰りになられたみたいでほっとしました」

「そういやカーリス達とは森で攫われて以来だもんな。あの時は突然いなくなって悪かったよ」

「いえいえ、私はアカリ様がこうして無事な姿を見せてくれたのなら、それだけで満足なのです」

「うん!お兄ちゃんお帰りー!」


 自由奔放なドロシーのことは置いておいて、それよりもカーリスは俺とこうして再び出会えたことが何よりも嬉しい様だ。

 あの時は突然のサヨナラだったから、きっと彼女らにも随分と心配をかけてしまったのだろう。その辺りの詳しい話は区長と合流した際にゆっくりするつもりなので、今は元気に帰ってきたことをアピールする。

 ルトリィも元気に俺の足に抱きついてきたので、その頭を少々乱暴に撫でてあげた。すると彼女は嬉しそうに真っ白な歯を光らせて満面の笑みになる。


「生意気な小娘共め!よくも我らの愛しき魔王様に無礼な態度を!すぐにその命散らしてやる!」

「魔王様に馴れ馴れしくするなんて許せない、その失礼な態度は命をもって償ってもらうからね!」

「ひっ、な、何でしょうか……?」

「お、お姉ちゃん、この人達怖いよ……」


 そんな感じでカーリス達と仲良く再会を分かち合っていると、バレリアとトリーリアが我慢の限界とばかりに殺意の眼差しで二人に詰め寄ってきたのだ。そんな恐ろしい瞳を向けられてしまって、カーリスは完全に萎縮してしまい、ルトリィなんかはもう涙目で今にも大声で泣き出しそうな雰囲気であった。


「これは強制送還だな。クウ、竜の島まで飛ばしてくれ」

「クウー!(はーい!)」


 その脅し行為は完全にアウトだ。事前に余計な口出しはしない様言い聞かせていたのに、二人はその約束をいとも容易く破ってしまったのだから。もうこれ以上温情をかけるつもりは無いので、俺はモンスターボックスからクウを呼び出すと竜の島へと送り返す様頼む。

 するとその直後、バレリアとトリーリアの足元にワープホールが出現し、二人は有無も言わさず姿を消した。これで一件落着である。


「あ、あれ?あの方々はどちらへ……?」

「ど、どうなったの?」

「安心してくれ、あいつらはもう遠くへ飛ばしたからもう安全だ。怖い思いをさせて悪かったな」


 突如脅されたかと思ったら、今度は突然目の前から姿を消した為、状況の整理がつかずカーリスとルトリィは困惑してしまっていた。だから俺が、もう脅威は去り何も怖いものは無くなったと笑って告げる。

 そうとも、悪はこの場から消え去ったのだ。


「貴方様、あの子達に随分と容赦が無いのですわね。流石のわたくしも驚きましたわ……」

「う、うむ、確かに事前に忠告はしていたがじゃ、それでもあんまりな気がするぜよ……」

「いいんだよこれで。口で言っても分からない奴らには身をもって理解してもらう他ないんだから」


 バレリアとトリーリアの強制送還にはさすがの魔人達も同情の念を送っていたが、それでも悪いのは約束を破ったあいつらだ。それなら相応の罰は与えなければ、俺にとってもあいつらにとっても、良いことなんて何一つとしてない。


「まぁそれでも、今すぐに国へ送り返せる訳じゃないからな。竜の島に行った時にあいつらが反省している様だったら、今回だけは許してやるよ」

「あら、なんだかんだ言って貴方様も結局は甘いのですわね」

「ちゃんと目を光らせておけなかった俺の失態でもあるんだし、あいつらだけに責任を負わせるのは酷だろ」


 バレリア達は失敗したが、それは俺が見張りきれていなかったことが原因でもある。だから後で竜の島に向かった際に反省の色が見えたのなら、今回だけは見逃そうと思っているところだ。

 だがこれで二度も忠告していることになるのだから、本当に次は無いがな。


「あの、私達は気にしていませんので、そういうことならもう許してあげてもよろしいのでは……?」

「ありがとうカーリス。でもこんなすぐ迎えに行っちゃ威厳が無くなるから、もう少し孤島で反省でもしてもらうよ。さて、そんなことよりこの街を案内してくれるんだろ?早く行こうぜ」

「は、はい、任せて下さいアカリ様!」


 カーリスは飛ばされた二人を不憫に思ったのか許してくれたが、ここで呼び戻すと甘く見られる可能性もあるのでもう少し反省の時間は必要だ。

 だからそんなことは気にせずに、今はこの街のことを案内してもらうよう彼女に頼む。











 ――










 街の観光を楽しんでいるとあっという間に夜になり、俺達は区長の屋敷へと招待された。洋館の様な立派な雰囲気で、近代化が進んでいるこの街では珍しくレンガ造りの建物である。だがだからこそ、より一層高級感が溢れていた。


「改めてアカリ君、この街へようこそ。また会えて嬉しいよ」

「はい、前回は中途半端な別れでしたので、私もこうして再会しできたことを嬉しく思っております」


 広々とした食堂で豪勢な食事が並ぶ中、俺と区長は互いに改めて再会出来たことを喜んだ。


「おや?それにしても先程会った時より人数が減っている気がするのだが、何かあったのかい?」

「ああ、それはこちらの問題なんで、何も気にしなくて大丈夫ですよ」


 最初に区長と会った時は五人いたが、今は三人になってしまっているのでそのことを不思議がられた。ただそれは完全にこちら側の問題なので、区長には気にしなくていいと伝える。


「ふむ、アカリ君がそう言うならあまり深くは聞かずにおこう。さて、それじゃあ早速本題に入る訳だが、アカリ君は何を求めてこの街へやって来たのかな?」

「単刀直入に言いましょう。ドロシーを返してもらう為に参りました」


 区長に目的を問われたので、俺はドロシーを連れて行くつもりだとそう告げた。その答えには、先程までにこやかだった区長も、一瞬にして真面目な表情へと変貌を遂げる。

 その横で一緒に話を聞いていたカーリスやルトリィも、雰囲気が変わったことに気づき、不安げな面持ちとなった。


「ドロシー君をか……。それを止める権利は私には無いが、でも彼女は我が家にとって今やとても重要な存在なのも確かなんだ。だからまずは、その理由を聞かせて貰えるかな」

「分かりました。では私があの森で攫われた後何が起こったのか、そこから説明します」


 こうして俺は、メルト達の世界へ赴いたことや、その後虚無の魔人を打倒する為に戦力が必要であることなど、事の詳細を説明するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ