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五章 1.魔人は意外と身近にいる

10/6、この日は私雨内真尋の誕生日!

ということで今日は記念に三話投稿します!

 タマクモを出発した俺達一行は、現在森の中を友を探してひたすらに歩き続けていた。


「この森霧が濃くて視界が悪いね」

「この霧はシンリーの迷いの結界だ。迷ったら振り出しに戻されるから絶対俺からはぐれるなよ」

「クウー!(みんなついて来てねー!)」


 森全体を覆うように立ち込める霧に、セロルは若干の気味悪さを覚えている様子である。確かにこの霧は俺達が森に入ってから急に発生したものだから、気味悪がるのも無理はない。

 だがこの霧の存在こそがシンリーが居ることの証明である為、俺は仲間の存在を確信して若干気持ちが舞い上がっている。なにせここまでの道のりは非常に長いものだったからな。それがようやく報われるのだから、喜ばない方がどうかしているというものだ。


「アカリ、何であなたに着いていけば迷わないって言えるのよ?」

「そりゃあこの霧を出してるのが俺の友達だからだ。俺とクウは慣れてるから何となく分かるんだよ、どっちに行けば正解なのかがな」


 迷わず道案内が出来る俺達にマリナはそんな疑問を投げかけてきたが、理屈とかそういうのは関係無い。ただ単純に、俺達はシンリーが居るであろう方向を目指して、直感を信じ進んでいるだけだ。これは長い間共に旅をしてきた俺達と彼女の信頼の証である。


「ふーん、大した信頼関係ね。それにしても四百年前から存在してる知り合いって、その人何者なのよ……」

「あーそういやまだ話してなかったっけ。俺の知り合いってのは魔人だよ。勇者伝説にも少しは出てきてるんだろ?」

「もちろんです!魔人様と言えば王子様の側近として最も名高い五人の幹部様ですね!そのお一人にこれからお会い出来るなんて、こんな光栄なことは無いです……!」

「へ、へぇー、そう言えばそんな人達も居た気がするわね……」


 マリナが俺の知り合いについて聞いてきたので魔人に関する話題を出すと、魔王信者であるリリフィナが地獄耳をもって話に入って来た。したり顔で解説してくるその態度がムカつくし、そして何より魔人はそこまで偉大な存在では無い。あいつらはただ単純に、非常に扱いづらい連中なだけだ。そこだけは勘違いしないで欲しいな。


「魔人様にお会いするのはこれで三度目なので、とても楽しみです!」

「リリフィナはガンマとドロシーには少しだけ会ったことがあるんだったか」

「はい!文献に違わぬ偉大な方々で、私はつい恐縮してしまいました。お恥ずかしい……」

「いやいや、あいつらはそんな大層なもんじゃないからもっと気楽にいけよ」


 リリフィナはやたらと魔人共のことを持ち上げたがるな。こいつの持っているメルフィナの日記には、一体どんなことが記されているのだろうか。本当に気になってきたから、今度暇な時にでも見せてもらおう。


「リリフィナは魔人に会ったことあるんだ。凄いわね」

「何言ってんだよ、マリナだっていつも一緒に居ただろうが」

「え……何のことを言っているの?」

「何っそりゃあ――あっ、しまった、そういやこのことまだ話してなかったんだ……」


 マリナが魔人に会ったことのあるリリフィナに何故か感心していたので、学園でいつも一緒に居るお前が言うなとついツッコミを入れてしまった。

 そして言った後に気付いたのだが、そういやまだマリナには、彼女の担任であるシーラが魔人ということを話していなかったんだ。


「ちょっとアカリ、一体私に何を隠してるわけ?」

「え、えーと実は……お前らのクラスの担任にシーラって居るだろ?あいつも実は魔人なんだよ」

「……えぇ?ちょ、それ本当なの!?」

「ああ、つまりはあいつも俺の昔馴染みだ」


 マリナに鋭い目付きで睨まれてしまい、仕方なく俺は隠していた真実を彼女に打ち明ける。いつか言おうと思っていたんだが、結局忘れに忘れて先延ばしになってしまっていたんだ。

 こんな形で教えることになって、本当に申し訳ないと思っている。


「なるほど、それでシーラ先生とアカリ君はやけに仲が良かったのね。納得納得」

「呑気に納得してる場合じゃないでしょ!知らぬ間に魔王の配下が学園に潜伏してたのよ、その事態をもっと焦りなさい!」

「何をそんなに怒ってるのよ。別にシーラ先生は何か悪いことをしてる訳でも無いんだし、マリナの方こそ気にし過ぎなんじゃない?」

「うっ、そ、それはそうかもだけど……」


 シーラが担任だったと聞いて、同じクラスメイトであるセルシー先輩は冷静に納得していた。マリナはその態度が気に入らず彼女に噛み付いていたのだが、結局はセルシー先輩に言いくるめられることとなる。

 まぁ実際にシーラは悪いことをしてはいないのだから、何も咎められることは無い。セルシー先輩の言う通りだ。


「落ち着けよマリナ、別に魔人達は何も悪いことなんざ企んで無いんだからさ」

「へぇー、じゃあ何が目的でわざわざ学園の教師なんかやってるのよ」

「それはあれだ、俺の封印を解く手掛かりを探す為だよ」

「それって、悪いこととは言わなくても、立派に怪しいこと企んでるんじゃないの……?」


 あれ?確かにこの世界の人間からしてみたら、魔王を復活させようと企むことって相当に怪しいのか。自分のことだからいまいち客観的に見れてなかったな。

 しかしそうなると、マリナの言う通り結構ギリギリのことを企ててたのかも知れない。


「いやでもさ、結局俺を復活させたのはマリナなんだから、それを言ったら一番怪しまれるのはお前になっちまうぞ」

「確かにそれもそうね……よし、ならあなたの仲間達がやってたことはただ仲間想いで頑張ってた、優しい行動ってことにしておきましょう!」

「調子の良い奴だな……」

「何だかんだでアカリは世界の為に頑張ってるし、終わり良ければ全て良しよ」


 魔人達も頑張っていた様だが、結局俺を蘇らせたのは魔人達ではなくマリナだという事実を指摘すると、彼女はあっさりとその掌を返してきた。その心変わりの速さは逆に感心出来るよ。

 まぁこれで正式に仲間達の行動も咎められなくなったから、それで問題は無いんだが。


「ふむふむ、君達は何気ない感じで話しているが、とても凄い内容を聞いてしまった気がするね。これ、後で消さりしないかな?」

「あんたは知り過ぎた、みたいな感じか?」

「ふははっ、そうそうそういうのだね。まるで物語の登場人物になった気分だよ」

「笑い事じゃないと思うけど……」


 プラチウムが変な冗談を言ってきたので俺もそれに乗っかり笑い合っていると、マリナに冷静な顔で突っ込まれた。いや、さすがにそんな物騒なことはしないから、疑う様な目線で俺を見るのはやめてくれ。


「アカリ様や皆様は、愉快な方々で楽しいですね」

「愉快なのはアカリだけよ。私達はそれに振り回されてるだけだから、そこだけは間違えない様に」

「何で俺だけのせいにするんだよ!」

「ふふっ、本当に楽しそうで羨ましいです」


 俺達が馬鹿なことを話しながら森を進んでいると、そんな雰囲気を見たカーリスに羨ましがられてしまった。区長の娘ともなると、こういった砕けた関係の友達は作れないのだろうか。

 ただ俺一人だけのせいにしたマリナ、お前だけは許さんぞ。


「カーリス様はご学友とかいらっしゃらないんですか?」

「私は元々引っ込み思案な性格でしたので、友達が少なかったのですよ。それにその方々もお家との繋がりが主な目的でして、皆様のような関係は築けなかったんです……」

「な、なるほど、家庭の事情じゃ仕方ないですね……」

「すまないカーリス、私が区長をしているばかりにお前には迷惑を掛けてしまった」


 羨ましがるカーリスを見て、何を思ったのかネネティアが余計なことを聞いてしまった。あの雰囲気からして絶対地雷だと分かりきっていたというのに、こいつは何を馬鹿正直に正面から踏み抜きにいっているんだか。お陰でプラチウムまで責任を感じてるぞ。

 今回に関してはもう不運とか関係無く、単純にネネティア自身の配慮が一切足りていなかったな。


「へー、お姉ちゃんは友達がいないんだね!」

「うぐっ!そ、そんな直球で、しかも妹に言われるとさすがに心にきますね……」

「ルトリィ、頼むからそれ以上姉の交友関係には触れないであげてくれ」

「?よく分かんないけど、分かったよお兄ちゃん!」


 若干引き笑いをしていたカーリスにばっさりとトドメを刺したのは、なんと妹のルトリィだった。年下の純粋な言葉は姉の心に深く食い込んでしまったらしい。

 さすがにこれ以上は可哀想で見ていられないので、助け舟を出すことでカーリスを救出する。何だかんだで俺も日本ではボッチだったから、彼女の気持ちも分からなくはないからな。


「よーし!気を引き締め直して森を進むぞー!」


 いたたまれない空気をどうにか払拭する為、俺は空元気で号令を上げ皆を無理やり鼓舞していく。

 なんで俺がこんな役回りになっているのかは不明だが、こうして順調に俺達は森の中を進んで行くのだった。


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