一章 15.筆記試験の難題
願書を提出しマリナと別れてから二週間後、俺とクウは現在ガーデニア学園へとやって来ていた。
その目的は当然入学試験参加のためだ。
「ようやく試験か、ここまで色々あったな……」
「クウ……(うん……)」
この二週間、俺達は波乱の生活を送っていた。
まず最初にあった三十万ポットは、クウの食費が想像以上にかさんでしまい、味の良さも合わさり三日もしないうちに全て消えてしまうといった。
それからは出来るだけ怪しまれない程度に魔物を狩りつつ、売り場狩場を変えて町を転々として、その場しのぎの生活を繰り返すという様な日々を送る。
そしていざ願書到着日になった時には、現在地を見失っていたという最悪の事態に陥ってしまった。
その後なんやかんやトラブルに会いながら、どうにか試験日までに学園へ到着したという訳だ。
「まぁ色々あったけどここまで来れば俺達の勝ちだ。これから始まる楽しい学園ライフに目を向けようぜ」
「クウー!(クウも楽しみー!)」
「さぁ行くぞクウ!」
「クアッ!」
色々ありはしたが、学園へ到着さえすればもうこっちのものだ。とっととこの入学試験を突破して、楽しい学園ライフを謳歌してやろうじゃないか。
来たる輝かしい未来に心躍らせながら、俺とクウは試験会場へと駆け足で向かう。
「えーと、受験番号八四六は……おっ、ここだここだ!」
受験票の番号を何度も確認しながら学園内を歩き、俺はようやく筆記試験の会場へ到着した。
そう言えば、少しくらい勉強しとこうとか思ってたけど、バタバタしてたから結局何もしてないんだよな。
本当にノー勉で受けて大丈夫なんだろうか。
「よし、全員席に着いてるようだな。私はこの会場の試験官を務めるヨトク・フレーデルだ。まず私から筆記試験の科目を説明するので、その後すぐに試験を開始する」
試験会場の教室に入ってきたのは、ヨトク・フレーデルという男性教員だった。随分と硬い話し方で気難しそうな人という印象を受ける。
今日は午前に筆記試験をして午後から実技試験を行う為、日程はかなりハードそうだ。
「筆記試験は全四科目で、文学、数式、歴史、魔学の順に行う予定だ。では早速一科目目の文学から試験用紙を配布する」
「上三つは何となく分かるけど、魔学って何だ……?」
試験官がテキパキと用紙を配り始める中、俺は頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいた。
魔学、名前的に魔力とか魔法、その他に魔道具なんかと関わりのある分野なんだろうが、いずれにしてもこれは予想外の科目だ。
結構まずいかもしれないな。ともかく、上三つの科目で点数を稼いでいた方が良さそうだ。
「それでは……試験開始!」
試験官の合図で受験者は一斉に用紙をめくる。こうしてガーデニア学園の筆記試験は幕を開ける。
その後一時間と少しの時間が経過し、現在数式の試験までが終了した。
「ふぅ、まぁこの辺はやっぱ元の世界で高校生だったから何となく解けた気がするな。歴史も四百年前の知識ならあるし何とかなるだろ。やっぱ問題は魔学か……」
全く予想の出来ない魔学に怯えているうちに、歴史の試験が開始した。
『問一、四百年前初代勇者と魔王が争った戦いの名は?』
(名前?そんなもん知るわけねーだろ!てか勝手に名前付けんなよ!)
歴史は一発目から黒歴史的な問題の登場に、思わず心の中でツッコミを入れてしまった。
(まぁ、何か書かないと仕方ないか。ここは無難に地名でも入れとけばいいか……いやでも、俺あそこの名前知らねぇな。あーもう何でもいいよ!次行こう次!)
『問二、初代勇者が魔王と戦ったその要因は?』
(あーこれなら分かるぞ。元々は勇者の所属してる王国が帝国と戦争をしようとしてて、その途中で俺と戦ったんだよ。ま、本当はもっと複雑なんだけど、今はこんなもんでいいか。次行くぞ!)
その後俺は歴史の問題を解き進めていき、どうにか三つ目の科目も乗り切った。
残すは問題の魔学のみだ。
「では筆記試験最終科目、魔学を始める」
試験官の合図で魔学の試験が開始した。
俺も若干緊張しながら用紙をめくり問題を解き始める。
『問一、魔力を素に任意の性質に変化させる古来の
技法をなんというか』
(何だこの分かりにくい言い回しは?魔力を素に性質を変化させる、性質……性質……あ、もしかしてこれ魔法のこと言ってるのか!?えぇ、魔法ってもう古い技術なの?)
四百年前では、王国は魔道具の技術が発展しているのに対し、帝国では魔法の技術が発展しているという、二代技術として栄えていた。
それなのにこの四百年の間で、いつの間にか魔法は廃れてしまったらしい。確かに思い返してみれば、魔剣やマジカロイドなど魔道具の進化は見られたのに、魔法はまだ一度も目にしたことが無かったな。
『問二、魔石を動力源とした最新鋭の武器の総称を述べよ』
(武器となると、これはマジカロイドとは違うものなのか?あれは武器と言うより便利道具って感じだもんな。となると、後俺が知ってるのは魔剣くらいしかないんだが、多分違うんだろうな……)
魔剣は魔石を動力源にしてる訳では無いが、他に思いつく武器も無かったのでそれを書くことにする。
その後も俺は意味の分からない問題に悪戦苦闘しつつ、どうにか筆記試験の全科目を乗り切った。
「ぷはぁ〜、あー疲れたー」
「クウー(アカリお疲れさま)」
「おう、久しぶりに頭を使ったからしんどかったよ」
現在は筆記試験と実技試験の間の昼休憩で、昼食を貪り頭の疲労を癒しているところだ。
この後はたっぷり体を使うから、きっちり栄養補給しておかないとな。
「あっ、いたいた。ちゃんと来てるみたいね」
「ん?ああマリナか。二週間ぶりだな」
「クウー(久しぶりー)」
のんびり休んでいると俺達の元へマリナがやって来た。
こんな広い学園なのによく見つけられたものだ。
「で、筆記試験はどうだったのよ?」
「微妙だなー、やっぱ実技に賭けるしかなさそうだ」
俺は午前の筆記試験を振り返り、結果は良くなささそうだとマリナに告げる。
そこに関しては、彼女も同じ結果を予想していたようだが。
「まぁそれは仕方ないわね。でもアカリの実力なら実技試験なんて楽勝よ」
「へぇ、結構簡単なのか?」
「さぁ?それは知らないわ。私推薦組だもの」
「なんて無責任な奴なんだ……」
随分と余裕気な口振りだから試験内容くらい知ってるのかと思ったが、全く宛に出来なかった。
俺だって相性次第じゃ苦手なこともあるんだぞ。
「いざとなったら私からも口添えしてあげるから、気楽にやんなさいよ」
「んなかっこ悪い真似出来るかよ。きっちり実力でクリアしてやるぜ」
恐らくマリナは俺のやる気を出させるために、あえてそんなことを言ったんだろう。
癪だがここはそれに乗ってやる。
「クウー!(クウの力も使ってね!)」
「おう、頼りにしてるぜクウ!」
クウは可愛げに手を振ってアピールしてきた。その頭を撫でながら俺は今一度気を引き締め直す。
『入学試験受験者にお伝えします。これより午後の実技試験を行いますので、第三訓練場に集合して下さい』
「おっ、招集が来たみたいだな。そんじゃ行ってくる!」
「えぇ、頑張ってね」
どこからか招集の放送が聞こえてきたので、俺はマリナとここで別れると会場へ走っていく。
「クウ、今のうちにモンスターボックスに入っててくれ」
「クウ!(分かった!)」
第三訓練場に向かいながら、俺はクウをモンスターボックスへと戻した。
融合は今回使うつもりは無いので、クウにはモンスターボックスに待機してもらうという訳だ。
ここからでもクウはアシスト出来るからな。
「ここが会場か」
第三訓練場に到着すると、そこには既に多くの受験者が集まって来ていた。
そしてその会場の前方にある高台に、一人の教員が上がっていく。
「集まったな受験者諸君。私は今回実技試験の試験官を務めるセリーダ・イステルだ。ではこれより実技試験の概要を説明する!」
試験官である女性教員のセリーダ・イステルは、この広い会場一杯に響き渡る程の大声量で概要の説明を始めた。
いよいよ俺の本命でもある、実技試験が幕を開けるのだ。




