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ひとつの国から繋がるお話

あの国が滅ぶとき、隣国の月姫は

作者: 星降 香音



「レティエ様、レティエお再従姉(ねぇ)様!」

「クレア!久しぶりね。元気にしてたかしら?」

「ええ。お再従姉様こそお元気にしておられましたか?」

「そうね……まぁそれなりに元気よ。」


 何か含みがある言い方ですがお再従姉様が元気なら何でもいいですわ。

 今回のご来訪は国王であるお兄様に会いに来たらしいのですわ。ですから……わたくしは昨日も今日もあまりお再従姉様とお話できませんでしたの。お再従姉様は明日まで滞在のご予定だと伺いましたし、お茶に誘ってもよろしいですわよね?


「お再従姉様、わたくしこれからお茶ですの。お再従姉様の都合がよろしければぜひわたくしの部屋にお越しくださいな。今、我が国の貴族令嬢に人気のハニードで期間限定販売されているケーキを手に入れたのですわ!」

「まぁハニードの?アルティゴス(私のところ)の王都にも噂が流れてきているわ。私も一度食べてみたいし、お邪魔させてもらうわね。」


 お再従姉様は満面の笑みで答えてくださいましたの。


「ええ。是非!そうですわ、場所を変えましょう。月見の東屋の周辺でクレセントローズが見頃なのですわ。」

「そうなの?クレセントローズって確か……ふふっ……クレアの異名の元になった花よね。月の光をたっぷり浴びることで咲く薔薇で、花言葉は『月光の下に永遠の愛を』だったかしら、月姫(つきひめ)様?」


 お再従姉様がからかってくるだなんて…………。


「やめてくださいお再従姉様!もう!お再従姉様にまで伝わっているのであれば…………。」

「もちろん近隣諸国には知れ渡っているわ。」

「ですから最近求婚にいらっしゃる殿方が増えたのですわね?もう……嫌ですわ!」


 …………赤面している自覚はありますから放っておいてくださいませ。


 それから日が傾くまでの間、お再従姉様とお茶をいたしましたの。

 最近のお話や、おすすめのお菓子など様々なお話をいたしましたわ。

 とても楽しい時間でしたわ。


 …………これがお再従姉様との最後の歓談になるとも知らぬまま。


 翌日、お兄様とわたくしでお再従姉様をお見送りいたしましたわ。


「陛下、昨日のお話よろしくお願いいたします。」

「あぁ。この王冠に誓って。」


 お再従姉様はしっかりと頷かれるととても綺麗なお辞儀をなさいましたわ。


「それではいろいろとお世話になりました。」


 お兄様ははっとしたようでしたが、わたくしにはお兄様がなぜ驚いたのかわかりませんでしたの。


「お再従姉様!また、お越しくださいませ。」


 お再従姉様は、微笑みながらわたくしを「クレア」とお呼びになりましたわ。


「じゃあね、クレア。」

「お再従姉様、ふふっ……二回も名前を呼ばないでくださいまし。」

「……ごめんね、クレア。」

「もう……わかりましたわ。改めまして……ふふっ。また、お越しくださいな?レティエお再従姉様。」


 お再従姉様は手を振ってからさっと馬に跨がるとさっさと帰ってしまいましたの。

 わたくしが少しむくれているとお兄様が頭を撫でてくださりながらおっしゃいましたわ。


「レティエは、1ヶ月でアルティゴスの近隣諸国に挨拶をしに行かなければならないそうだ。そんななか3日もとってくれたのはクレアと話がしたかったからなんだそうだ。」

「そうなんですの?」

「ああ。良かったな。」

「ええ。とっても!」


 お兄様は「そうか。」と呟きながら微笑みましたの。久しぶりに見るお兄様の少し悲しそうな微笑みでしたのでとても印象に残りましたわ。

 それからおよそ半年程たった頃でしたわね。アルティゴスで革命が起こりましたわ。お再従姉様は革命側に付いたそうですの。お再従姉様が心配ですわ。ですが……約束いたしましたもの。お再従姉様は、またお越しくださいますわ。


「クレア王女殿下。国王陛下がお呼びです。」

「わかりましたわ。すぐに向かいますとお伝えくださいな。」

「畏まりました。」


 わたくし、なんだかとても嫌な予感がいたしますの。


「お兄様!わたくし、クレアが参上いたしましたわ。」

「ああ。…………そこに座れ。」

「大事なお話ですの?」

「……かなり、な。」


 お兄様は、少し悲しそうで苦しそうで見ているこちらが泣き出しそうな顔をなさっていらっしゃいましたわ。


「クレア、落ち着いて聞け。………………レティエが…………異端審問で悪魔にされた。」

「っ!…………おねぇ、さま……が、ですの?」


 世界で一番優しいあのお再従姉様が、悪魔…………ですの?


「ああ。」

「う、そ…………ですわ。だって……お再従姉様は、またお越しくださると………………。」

「レティエは、そう言ったか?頷いたか?」


 わたくしは息を飲んで首を振りました。


「お再従姉様は、おっしゃりませんでしたわ。それから、頷いてもくださりませんでしたの。ですが…………。ですが、微笑んで下さいましたわよ?」

「あれは…………社交界で明言を避けるときの微笑み方だ。レティエはもうこの国に来るつもりは無かったんだろう。」

「そんな……それこそ嘘ですわ。」


 お兄様は、おもむろに拳を振り上げると机にドンッと叩きつけましたの。わたくし、そんなお兄様を初めて見ましたわ。ですが、その後のお兄様のか細い声を聞いたらそんなことどうでも良くなりましたの。


「…………嘘だったらどれだけ良かったことか……。」

「……お兄様。わたくしに何かできることはございませんの?」


 このような状態のお兄様を人前に連れ出すわけには行きませんわ。


「………………すまん。しばらく、1人にしてくれ。」

「わかりましたわ。では、わたくしでかまわない執務はこちらへ回して下さいな。なるべくお兄様1人の時間を確保してご覧にいれますわ。」


 淑女の礼をしてお兄様の部屋から出ましたわ。


「……いずれわたくしのお義姉(ねぇ)様になるはずのお再従姉様を悪魔などにした宗教などわたくしの持っている伝すべてを使って滅ぼして差し上げますわ。…………うふふ、ふふふふ。」





 クレアちゃん…………サイコかな?

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