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3話 店が潰れて帰る場所がなくなった件

「あの子大丈夫でしょうか」


 ミラが少女の去っていった扉を見つめる。

 心配そうなその目。


「直ぐに諦めるだろ」

「むむむ………」

「あの塔には登らない方がいい。生半可な覚悟で登っても待っているのは死だ」


 そう答えて俺は扉を開けた。

 外では雨が振っている。


「私!見てきます!」

「おい………」


 俺の止める声も虚しく出ていくミラ。


「あぁ………くそ………どいつもこいつも馬鹿ばっかりだな」


 降りしきる雨の中。


「手間をかけさせる奴らだ」


 俺も外套を羽織って外に出ることにした。



 ダンジョン入口前。

 丁度雨風を凌げる位置にミラもいたし少女もいた。


「………ダンジョン………入れなかった」

「雨の日は担当の者もいないしな」


 見てみるといつもいるはずの受付はいなくダンジョンの中に通じる通路は閉じられている。


「そんなに登りたいのか?」

「グラウンド・ゼロ、あなたも冒険者なら分かるんじゃないの?」


 少女が俺の目を見てくる。

 その呼び方をやめてほしいんだが。やめる気はなさそうだな。


「冒険者にとって初めて入るダンジョンへの気持ち」

「ここは………やめておけ」


 降りしきる雨のせいで声もあまり通らないかもしれないな。


「俺は何度もお前らみたいな奴がここに入って帰ってこなかったのを目にしている」

「グラウンド・ゼロ………」

「俺はグラウンド・ゼロではない。そんな冒険者は夢物語の住人だ」

「いや、あなたはグラウンド・ゼロ」


 そう言って俺の目を見てくる少女。


「違うと言った」

「ううん。貴方の見た目は伝説上の………」

「俺をグラウンド・ゼロだと思うのは勝手だが………」


 そう言って俺は懐からギルドカードを取りだした。


「違うぞ。故に期待はするな」


 そう言ってダンジョンに続く扉にかざす。

 するとゴゴゴゴゴ!!!!!


「す、すごい、………開いた」

「聞いて驚かないでください。アルスはSランク鑑定士なんです」

「何故お前が胸を張る。まぁいい」


 そう答えて俺は少女に目をやった。


「俺はアルス」

「私は………ミーナ」

「そうか。途中までなら連れて行けるがどうする?」


 雑魚相手に凄そうな演出をしてこれでも踏破出来ないアピールをして帰ってもらおう。


「お願い」

「分かった」


 俺はそう答えて2人を連れて天の塔の中に入ることにした。

 無機質なダンジョンが俺たちを出迎える。


「この音楽何なんですかね」

「さぁ、分からん」


 このダンジョン内は何故か音楽が流れている。

 少し哀愁を感じる音楽。


「趣味の悪いものだ」


 そう呟いた矢先。


「グルゥ………」

「ご、ゴブリン!」


 ミーナが剣を抜いた。

 しかし、見ているとワラワラと出てくるゴブリン達。

 その数は20を超えている。


「こ、こんなに沢山………いくら雑魚でも数がいれば………」


 そう呟いたのを見てから盾でゴブリンの殺気を━━━━カウンターの餌にする。


 視界の端に浮かび上がるウィンドウ。


【カウンターに成功しました。以下の技に派生可能です】

 →アルマゲスト(無属性最強魔法)

 ・プロミネンス(火属性最強魔法)

 ・ダイヤモンドダスト(氷属性最強魔法)

 ・ホーリー(光属性最強魔法)

 ・アビス(闇属性最強魔法)

 ・etc


 俺はこの中から1つ選び魔法を発動させた。


「アルマゲスト」


 ゴゴゴゴゴ!!!!

 光が辺りを包み一瞬にして無に帰す究極魔法。


「な、何なの今の………」


 それを見て驚いているミーナ。


「か、鑑定士なんだよね?アルスは………何今の………」

「アルマゲストっていう究極魔法ですよ!」


 代わりに説明してくれるミラ。


「無属性最強の全体魔法ですよ!」

「ただの鑑定士が何でそんなの使えるの?」


 はぁ、面倒な事を言ってくれたな。

 本当は最強魔法ということは黙っていて欲しかったが言ってしまったのは仕方ないな。


「ま、企業秘密ってことで………ここからが本題だ。俺は自分で言うのもなんだがあんな規格外の魔法を使える。しかしそれでも何一つダンジョンの踏破は出来なかった。意味が分かるか?」


 ミーナは慎重に頷く。

 これでこのダンジョンの難易度が伝わるといいんだがな。



「ママァァァ!!!コーヒーちょうだい!!!!」

「ママ呼びしないで下さいよ」


 グチグチ言いながらもコーヒーを持ってきてくれるミラ。


「ママァァァ!!!」

「次は何ですか?」

「おしっこ行きたい!!!!」

「仕方ないですねぇ………」

「え?」


 ミーナがこっちを見てきた。


「どうした?」

「おしっこ連れていってもらうの?」

「何かおかしいか?ミラが寂しいと言うから俺は仕事を与えているだけだ」

「えぇ?!それはおかしいと思うよ!!!」


 そうなのか。

 ならやめておこうか。


「えぇ?おしっこいかないんですか?」

「ミーナがこう言うから仕方ないだろ?」

「私のせいなの?!」


 そう言っているがこの状況でミーナのせいじゃないわけが無いのだ。

 そんなことを考えていたら。


「アルス・コール」


 ガチャリと扉が開いて店内に誰かが入ってきた。

 めんどくさいな。


「今日は閉店した、って表に札ぶら下げてるだろ?」

「悪いがな。アルス」


 黒服の男が俺の目の前まで歩いてきた。


「俺は客じゃない」

「何の用?俺は今余暇をミラと過している真っ最中だが」


 そう言うとハッと笑って男はミラを蔑むような目で見た。


「ゴミはゴミ同士でつるむ、か」

「さっさと本題に入れよ」

「………おま!」


 俺の胸ぐらを掴んでくる男。


「何だ?俺が敬語を使おうがどうだろうがお前の偉さは一切変わらんぞ」

「殺す。今ここで殺してやる、と言いたいところだがそれは禁止されていてな。それにそうしない方が面白いはずだ」


 ニヤリと笑って男は俺の胸ぐらから手を離すと1枚の手紙を渡してきた。


「この店は今日で終わりだ。ふはははは!!!!お前のお店屋さんごっこもここまで!というわけだ」


 軽く見た感じだが俺が物を売れていないのを知っている上の連中がこの店を取り上げに来たらしい。

 何の金にもならない店など潰してしまえということらしい。


「………」

「理解したならさっさと出ていけよゴミ虫。虫けらの分際で俺の目の届く範囲にいるなよ?俺はバリヤード、縁があればまた会おう」


 そう言って表に出ていく男。


「アルス………」


 俺の手を取ってくるミラ。


「サボってきたツケが回ってきた、ということか」


 仕方ないな。

 店内を見回して適当なガラクタを集める。


「どうするんですか?」

「あいつのところにいく」

「あいつ?」


 聞いてくるミーナ。

 そうだな。もう全部話しておこうか。


「ミーナ。俺をパーティに加えてくれ」

「え?いいの?」

「事情が変わった」


 そう言うとアイテムポーチを手に取る。

 また使う日が来るとは思わなかったな。


「俺も塔の攻略を手伝おう」

「いいの?!」


 俺の手を取ってそう聞いてくる彼女に頷く。

 ただ俺は途中で離脱するつもりだが。

 踏破まで付き合うとは誰も言ってない。


「迷惑をかけるだろうがそれでも良ければな」

「め、迷惑なんてそんなわけないよ!私こそ迷惑かけちゃうよ!」


 彼女に軽く笑って俺は扉に手をかける。


「とこらで俺はあいつのところに行くが、2人とも付いてきてくれるか?」

「聞くまでもないですよ。アルス、アルスの進むべき道に私はついて行きますから」

「私も!」


 2人ともどうやら来てくれるみたいだ。

 なら行こうか。

 次なる場所へ


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