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サラリーマン賢者の異世界業務日誌~ダラダラしながら高給をもらえるように一生懸命頑張ります~  作者: 徳川レモン
一章 平社員編

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六話 業務中に不老不死になった場合ってどうすればいいんですかね

 目が覚めるとすでに外は日が暮れていた。

 ベッドの端に座って大きく息を吐く。


 額に触れるとびっしゃりと濡れる。すごい汗だ。

 恐らくいきなり実行中のソフトウェア(?)を切ったからだろう。

 ただ、頭の中はずいぶんとすっきりしていた。


 ガサガサ。もそもそ。


 暗い部屋の中で何かがこすれる音と咀嚼音が聞こえる。

 持ってきていたLEDランタンを点けると、リュックの前でカロリー〇イトを食べているルルフェを見つけた。


 コイツ! 勝手に荷物を漁りやがったな!


「えらい、うなされとったで」

「そんなのはどうでもいい。勝手に人の荷物を触るんじゃない」

「ウチは悪くない。いくら揺すっても起きんノリタカが悪いんじゃ」


 はぁぁぁぁぁ。そうですか。

 本当に態度のデカい幼女だことで。


 俺はリュックから2リットルのペットボトルを取り出す。

 栓を開けて水を一気に流し込んだ。

 美味い。こんなに水を美味いと感じたのは久しぶりだ。

 生まれ変わったようなすがすがしさがあった。


「ふぅ、しかしソフトらしきものを中断したり実行したりしたのはいいが、特に変った点はないようにも思うな……」


 右手を握ったり開いたりする。

 一応鑑定で自分を確認するが、魔力の稼働率は10%になっていた。

 これで大幅な無駄は減らしたと思うが、そもそもあれらはなんのために実行されていたのだろうか。

 俺だけの話ならそれはそれで気になるが、もし地球人全体に実行されているとしたら、それは一体何のために? そして、誰がこんなことを?


 一つ分かることは、神と称する何かが俺の魔力を吸い上げていた事実だ。


「…………」

「なんだよじっと見て」


 ルルフェが俺を見ている。

 しかし手元では次のカロリー〇イトが開けられていた。


「ノリタカ、つよぉなったな」

「あ? どう言う意味だ?」

「体内の魔力が爆発的に増えとるで。身体も昼間とは別物じゃ」

「別物??」


 俺は首をかしげる。


「……どうでもええか。どうせどっかで気づくやろ」

「気になるところで濁すなよ」

「しゃーないな」


 ルルフェは近づいてきて俺の右手を掴む。

 そして、もう一方の手で手刀を振り下ろした。


 ザシュ。


 俺の右手は半ばから切断された。

 びゅびゅっと血液が飛び散るも、なぜかすぐに出血が止まる。

 それよりも俺は激痛と腕が切られた衝撃でそれどころじゃなかった。


 あぐっ! いでぇぇ、いでぇぇぇよ!

 腕が! 俺の腕が!! 


「これで元通りじゃ」


 グッ、と腕を傷口にくっつける。


 ざけんな! そんなんで治るわけがないだろ!

 ちくしょう! こんなやつ拾うんじゃなかった!!


「……え」


 痛みは消え失せ、右腕は元通りになっていた。

 切られた痕もなく完全に癒着している。

 どうなっているんだ。俺は手品でも見せられたのか。

 

「どこまで再生能力が上がっとるかは分からんけど、今のノリタカはほぼ不老不死じゃ。首を切られるくらいじゃ死なんと思うで」

「マジかよ」

「じゃあ首を落としてみるか?」

「やめてくれ!」


 なんなんだよ一体。不老不死ってどういうことだよ。

 やべ、また頭が痛くなってきた。

 今度のは絶対精神的な疲労からだな。


 俺は再びベッドに横になる。

 

「好きなだけ食うのはいいが、ちゃんと後片付けだけはしておけよ」

「わかった」


 瞼を閉じてまどろみの中へと意識を沈めた。



 ◇



 翌日。俺はリュックの中に食料が一つもなくなっていることに絶望する。


「なんで全部食べるんだよ! 今日の食うものがなくなっただろ!」

「ノリタカが好きなだけ食えって言うたんやで」

「限度があるだろう! 一回で一週間分を食う奴がどこにいる!」

「我が儘やな。ノリタカ、モテんやろ」

「余計なお世話だ!!」


 あーもう、くそっ。

 領主の娘を助け出す前に、食料を確保しないといけなくなったじゃねぇか。

 こっちはさっさと地図を手に入れてダラダラしたいってのに。


 俺は宿をチェックアウトすると、すぐに食料の売っている店に走った。





「やっぱ荷物が増えたか……」


 リュックがこんもりと膨らんでいる。

 干し肉やパンやチーズや塩に砂糖にいくつかの調理器具などなど。それなりに食事をしようと思えば必要な物も多い。

 カロリー〇イトがどれだけ便利な物だったのかよく分かる。


 俺は重い足取りで町を出て盗賊のねぐらを探し始めた。


「聞こうと思ってたんだが、どうして森の中で倒れてたんだ?」

「わからん。ふらふら歩いとったらあそこでおった」

「迷子か??」

「迷子ってなんや?」

「お前みたいな奴のことを言うんだよ」


 自覚すらないのかよ。重症だな。

 交番でもあればさっさと預けてとんずらするんだが。


 コイツめちゃくちゃ足が速いから下手に逃げられないんだよなぁ。

 レベル十の身体向上でも逃げてみたが、余裕で捕まったし。


 しかしだ、昨夜の見事に俺の腕をぶった切った攻撃力は惜しくもある。

 コイツを上手く使えばいいボディガードになるんじゃないか。

 それこそ俺が寝てても魔物を仕留めてくるように仕込めば……。


「ノリタカ、お腹空いたで」

「もうかよ! 燃費悪すぎるだろ!?」


 訂正だ。コイツはどこかで排除しないと食費が保たない。

 今すぐにでも俺を食い潰す勢いだぞ。


 ガサガサ。


 背中で音がするので振り返れば、リュックにしがみついてルルフェがパンを取り出していた。


「こら! やめろ!」

「カロリーなんとかってのより美味しぃないな」

「舌が肥えてきてる!?」


 ぴょんと飛び降りたルルフェは、パンをかじりながら歩き出した。


 唯一の救いは、俺もあのパンはあまり好きじゃないってところ。

 この世界のパンは堅すぎてスープに浸さないと食べられない。

 肉やチーズを食べられるくらいなら、パンぐらい我慢してやるさ。


「ほんで盗賊ってのはどこにおるんな」


 俺達は現在、ドヴォルザークから西へ二、三キロ進んだ地点にいる。

 青々と生える広い草原にちらほらと森が見えているが、あの中のどこかに盗賊がいるのだろうか。


 ……いや、さすがにこんな近い場所に根城を構えるとも思えない。


 あるとすればここから辛うじて見えている山の辺りか。

 あそこなら見晴らしも良いし見つかりにくい。


 レベル五の身体向上で一気に走り出す。

 いつまでも領主の娘が無事とは限らないからな。


「なんだか身体が軽いな」


 いつにも増して速度が出ているように感じる。

 これも身体が変化した影響か。

 体感だが軽く時速三十キロは出ている。


 これでレベル五と考えると、最大の十にすればどうなることやら。


 山の麓にやってくると、俺は早速地面に馬の蹄を見つける。

 それも複数だ。馬が通ったらしき道を見つけ、ルルフェと一緒に駆け上がる。


「あったぞ。あそこが盗賊の根城だ」

「三十人くらいやな。ノリタカやったらよゆうやろ」

「……なぁ、そろそろ役に立つところも見せてくれないか。今のお前は俺に寄生するタダ飯くらいだぞ」

「ウチの使い方を知りたいんか」


 ルルフェはすっとと立ち上がって根城へと向かい始める。

 慌てて止めようとするが、彼女は単身で盗賊の前に出て行った。


「おぉん? 嬢ちゃんどこから来たのかなぁ?」

「頭に報告しやすか」

「んなことしなくていいぜ。俺がじっくり味見してから始末しておくからよ」

「またすか兄貴。そういうのはさすがにどうかと思いやずぜ」

「うるせぇ! 俺の趣味に口出すな!」


 見張りである二人の男がルルフェを前に言い合いをしている。

 だが次の瞬間、ロリコン趣味丸出しの男の首が飛んだ。


 ごろり。


 男の頭が地面に転がる。

 それを見たもう一人が小さく悲鳴をあげた。


「よ、よくも兄貴を! ガキが!」


 男はナイフを抜いて彼女の腹部に突き刺した。




 そう、突き刺したはずなのに、ルルフェは無表情で微動だにしない。

 むしろ刺した方が驚きで後ずさりしていた。


「なんで、刺さらないんだ……」

「ウチは『完全防御』のギフトを持っとるんじゃ。そんなん効かんで」

「ばけ、ばけものだ!」

「違う。美幼女やで」


 しゅぱっ、もう一人も手刀で首を切り落とす。


 ルルフェは振り返って『分かったやろ?』といいたそうな顔をしていた。



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