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サラリーマン賢者の異世界業務日誌~ダラダラしながら高給をもらえるように一生懸命頑張ります~  作者: 徳川レモン
一章 平社員編

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二十三話 平社員のドラゴン退治その2

 ギルドでツァルトの森の依頼を引き受けることにした。

 討伐対象は『ホロ』と呼ばれる魔物だ。


 ホロはこの辺りではかなり珍しい魔物らしく、本来の生息地は南方になるらしい。

 その奇怪な姿に似合わず肉はとても美味で、一度食べるとやみつきになるのだとか。

 ただ、巨体な割に非常に足が速い為、仕留めるのはかなり難しいとギルドの職員が教えてくれた。


「絶対に捕まえて食べるで」

「お、おお……」


 珍しくルルフェがやる気に満ちている。

 その迸る情熱に気圧されるほどだ。


 がさささ。


 鬱蒼とした森の中、草むらで何かが動く。

 瞬発的に飛び出した幼女はがばっと捕まえた。


「ツチノコか。いらん」

「ま、まってく――」


 ずんぐりとした蛇をぽいっと放り捨てた。


 うわぁぁぁぁぁぁっ!! ツチノコが!!

 世紀の大発見が!!


「ノリタカ、なんで落ち込んでんの?」

「ツチノコ……」

「ああ、あんなのいくらでもいるからボクが捕まえてあげるよ」


 そうなのか。だったら嬉しい話だ。

 さぁて、ツチノコの懸賞金は今でも有効なのか後で調べないとな。


「――あそこモワモワしとるで」

「もわもわ?」


 ルルフェが指さす方には確かにそんな感じの現象が起きていた。

 空間が揺らめいていると言ったところだろうか。


「お、おい、危ないぞ」

「あそこにホロがおるかもしれん」


 すたすたと幼女は臆することなく近づく。

 あいつのハートはダイヤモンドでできているのか。

 俺じゃあ絶対に近づけない。


 すっ。


 ルルフェは揺らめきに入ると姿を消した。

 それを見た俺は恐怖に震える。


 ほら、やっぱヤバいやつなんだよ。

 神隠しとかそう類いのなにかなんだ。


「ノリタカ! ルルフェが消えたぞ! どうなってるんだ!?」

「俺が知るか!」

「なんじゃ、呼んだか?」


 ひょこ、何もないところから顔を出したルルフェに俺は腰が抜けた。

 な、生首だ! ひぃいいいいいいっ!


「ルルフェ大丈夫なのか!?」

「これは入り口みたいじゃ。こっちはキラキラしててなかなかええで」


 入り口?? キラキラ?

 飛び込んだルルーナが姿を消す。


「ノリタカ! すっごくキラキラしてる!」


 ルルーナも宙に浮かぶ生首状態で笑顔を浮かべている。

 俺は恐る恐る揺らめく空間へと歩み寄った。


「――なんだここ?」


 通り抜けた先は真っ白い広大な空間だった。

 天井も床も純白で心なしかキラキラ発光しているように見える。


 壁は……かなり遠くにうっすらとだがあるように見えた。

 つまりここは馬鹿でかい部屋。

 振り返ると出口である空間の揺らめきが見える。

 今なら帰ることは可能というわけだな。


 しかし、ここはなんなのだろうか。


「向こうに扉があるで」


 確かに何か見える。

 だが、俺の視力ではそれが扉なのか確認できない。


 三人で近づくと、すぐに引き返すべきだったと後悔した。


「ぐるるるるるっ」


 石で作られた大きな扉の前に純白の巨大な狼が立ち塞いでいたのだ。

 その大きさは小型トラックにも相当する。

 狼はうなり声を上げてこちらを睨んでいた。


「餌やるで」

「あ、こら!」


 ルルフェはリュックにしがみついてガサゴソしている。

 飛び降りたと思えば、ぽいっと狼に干し肉の塊を投げ捨てた。


 ああ、貴重な食料が。また町で購入しないといけない。

 つーか、勝手に荷物漁るなよ。だれが餌をやっていいって言ったんだ。


「がうっ?」


 すんすん。干し肉の匂いを嗅ぐ狼。

 数秒ほど経過してからパクッと口に入れた。


「美味いか?」

「がうっ」


 ルルフェに狼は顔を擦り付ける。

 マジかよ――懐いてやがる。


 狼も狼だが、アレに餌をやろうと考えたルルフェもルルフェだ。

 だがしかし、ルルフェが扉を開けようとすると狼はうなり声をあげた。


 どうやっても向こうには行かせたくないらしい。


「しょうがない戻るぞ」

「む、もう帰るんか」

「扉の向こうが気にならないわけじゃないが、俺達のやるべきことはエグジオス退治だ。それにホロは食いたくないのか」

「しゃーない、戻るで」


 飯に釣られて幼女はあっさりきびすを返した。


「あははは、コイツ可愛いな」


 ルルーナはいつの間にか狼と仲良くなって戯れている。

 ちょっと羨ましい。俺って犬好きなんだよなぁ。


「行くぞルルーナ」

「は~い、またな」


 狼は去って行く俺達を見ながら「くぅううん」と寂しそうな声を出していた。

 しょうがないんだ。今はどうでも良いことに構っている暇はない。

 さっさと肩慣らしを済ませて町に帰らないと。食料の買い足しもしないといけないし。


 揺らめく空間から出た俺達は、再び森の中を散策する。


 がさささっ。


 何かが草むらを走った。

 素早くルルフェがハンマーを振るい、ソレを弾き飛ばす。

 大木に叩きつけられた生き物はピクピクしていた。


「ホロじゃ!」

「え、これが? 本気で言ってんのか??」

「ボクも一度だけ見たことがあるけど、確かにこんな感じだったかなぁ」


 そこに横たわっていたのはだった。

 いや、マグロに蟹の足が生えたナニカと言うべきだろう。


 体長は二メートルほど、表面は水気を帯びていてつやつやしていた。

 新鮮で活きがいい証拠だ。しかも足もタラバガニっぽくて美味そうに見えてしまう。


 くそっ、得体の知れない生き物なのに、めちゃくちゃ食欲を刺激するじゃねぇか。


「それじゃあ血抜きしておくよ」

「お、おお……」


 ルルーナは王女とは思えない手慣れた手つきでエラの辺りにナイフを入れる。

 つーか、陸上生物なのにエラがあるのかよ。なんなんだこの生き物。


「持って帰って食べるで」


 小さい身体でマグロ――じゃなくて、ホロを担ぎ上げた。

 予定とは違ったが、これはこれで悪くないかもな。

 それにもしあれがマグロと同じ味なら、養殖して出荷できるかもしれない。

 つまりアレもまた金のなる木。この世界は本当に宝庫だな。


 森を出てジープの辺りまで戻ると、背後に妙な気配を感じた。


「くぅうん」


 がささ。草を割って出てきたのは白い毛の子犬だった。

 あまりの愛らしい姿に俺は干し肉を取り出して餌をやる。


「どうしたんだ、親とはぐれたのか?」

「ぺろぺろ」


 肉を食べた子犬は俺の手の平を舐める。

 ホロをジープに乗せたルルフェは後部座席のドアを開けた。


「わんっ」


 子犬はルルフェと一緒にジープに乗り込む。

 幼女は子犬を抱き上げ笑みを浮かべた。


「お前もついてくるんか?」

「わううっ!」

「じゃあ今日からお前は『もっちゃん』じゃ」


 おいー、勝手に名前を付けんなよ!

 誰も飼うとは言ってねぇだろ!


「なんでもっちゃんなんだ?」

「もふもふしてるから」

「そうなんだ。ボクにも触らせて」

「ん」


 子犬はルルーナの鼻先をペロペロなめている。

 くっ、俺も舐められたい。


「今回だけだからなっ! ちゃんと自分で世話するんだぞ!」

「わかったで」


 そして、子犬を乗せたジープは走り出す。

 この時の俺はまったく気が付いていなかった。


 拾ったのは子犬ではなく子狼だったってことに。



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