プロローグ
轟音が鳴り響く。地面から炎が吹き出し大地は裂けた。
現われるのは炎魔竜エグジオス。
紅き鱗を輝かせて強大な存在が顕現する。
巨竜は咆哮し、びりびりと空気を震わせた。
「行くぞ!」
「でぇれぇ、でっかいのがきよるわ」
「ガウッ」
俺は右手に杖を。左手に盾として幼女を掴む。
またがるのは白き神獣だ。
俺達はエグジオスへ猛然と向かった。
風のごとく疾走、攻撃を防ぐために幼女を前に出す。
その間に鑑定でレベルを最大限にまで上げた魔法を構築する。
吐き出されたブレスが俺達を直撃する。
「あちー、こんなん耐えられんわ」
「耐えてもらわないと俺が困る!」
「しゃーないな」
激しい炎をその身で防ぎ続ける幼女。
余波だけで死にそうだ。
「あかん、ヤバいのがくるで」
「うそだろ……」
さらに強烈なブレスが俺達を吹き飛ばし、視界は真っ白になった。
両手を失った激痛に俺は目覚めた。
それでも杖を口にくわえ立ち上がる。
紅き巨竜は悠然と俺を見下ろしていた。
「なんだよその顔、人間だからってなめてんだろ」
いいだろ、見せてやるよ。
サラリーマンの底力を。
俺は力を振り絞って走り出した。