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俺のうちにもダンジョンができました  作者: 森羅月光
第二章 新たなる出会い
19/24

19 ちょっとだけダンジョン2

同窓会の日は札幌市内のホテルに一泊し、次の日、俺は飛行機で新千歳空港から羽田空港にいった。

新宿に移動して、喫茶店で人を待っていた。

朝早くでたのに、すでに午前11時だ。あいかわらず、新宿は人でごった返していた。

喫茶店は2階の窓際にいたので人の流れを見ていた。


「おっ来たな。」


ひとり呟いた。

スキル広範囲索敵で待ち人が近づいてくるのがわかった。敵じゃないけど。


喫茶店の入り口に現れたのは、口髭の生えた大柄で見た目クマを想像させる容姿をした男が姿を現わした。

以前勤めていた会社の元同僚である五十嵐隼人先輩だ。

仕事に夢中になりすぎてバツイチ、たしか36歳だったはず。



「おう、達也。」


「お久しぶりです。五十嵐先輩。」


俺は立ち上がり、先輩を迎えた。

歩きながら先輩はウェトレスさんにコーヒーを頼み、席に着いた。

大声とその容姿から、店の客全員の注目を浴びている。

俺と違って、相変わらず存在感が半端ない。


「ほう、ずいぶんたくましくなったな。今なら俺についてこれるんじゃないか。」


クマのような顔でにやりと笑う。怖いからやめてほしい。


「ハハハ、まさか。まだまだですよ。しかし、五十嵐先輩、また焼けてますね。相変わらずですか。」


「まあな、日本に帰ってきたのも3年ぶりだ。」



俺は大学を卒業し貿易会社に入社した。

俺が勤めていた部署は、海外に宝石を買い付けに行く仕事だ。華やかに聞こえるが、内情はまさしくブラックだった。

すでに販売ルートが確立されているところではなく、いまだ未開のそれこそ荒くれた人達との商談だった。

宝石はきれいだが、現場は産地の山の中、汚い怖いつらいのなかでの原石とお金のやりとりだ。

入社してすぐに五十嵐先輩につき、あっちこっち連れまわされた。

それこそ未開の奥地にいくのも珍しくなかった。五十嵐先輩は持ち前のタフさで問題ないが、俺は食い物飲み水で体調を崩すことはよくあった。そのたびに、軟弱だと言われたが、俺は弱くもなく強くもない、いたって平凡な男だ。

自然的な危険や人為的な危険も多々あった。思い出すだけでも震えてくる。

ほんと、最悪な職場環境だった。結果的にリタイヤした。

だが、そのおかげでダンジョン探索には役に立つ道具がいくつかあったが。



「あ、これ、北海道の土産です。熊が鮭咥えている、木彫りじゃないけど、俺が作った熊の彫り物です。」


俺は、新聞紙に包んだ縦横20cmくらいの大きさのものをテーブルにのせた。

あいかわらず、大雑把(がさつ)な人だ。先輩は包みを破りながら言った。


「おまえ、(クマ)の木彫りって嫌みか、と、なんだこれ、金でできてんのか。」


「ハハハ、まさか、()()()ですよ。」


()だ。本当はすべて純金製だ。

もちろん、俺の【スキル錬金】で作った。金30Kgはつかっている。売れば1億はするはずだ。


「お、おう、しかし、本物の金みたいだ。手触りといい、重さと言い、よくできてるな。お前が作ったのか。」


「北海道と言ったら、これでしょう。初めてにしては上出来だと思うんですが、でも師匠(プロ)にいわせれば未熟品だそうですよ。師匠(プロ)は木彫り専門ですが。俺の初クマ彫刻、記念に先輩に渡そうと持ってきたんです。」


これは、本当だ。うちの年寄りの元大工の一人に教えを受けた。

先輩(クマ)が熊持ってる。俺はこれが見たくて、わざわざこれを作った。


先輩は、まじまじと、俺の土産品をみている。

先輩の事だから、純金製とすぐに気が付くだろう。



「金と言えば、神崎、かなり派手に売ってるらしいな。」


クマ顔がさらに凶悪に見える笑顔をむけられた。


「さすがに、情報通ですね。まだ、日本に戻ってそんな日数立っていないですよね。」


「おう、2日だ。明後日には、また、発つ。」


「今度はどこに行くんすか。」


「タンザニアだ。」


「タフっすね。」


「それより、どうなんだ。そんなに儲かるのか牧場は。3億も売っただろう。」


「ほんと、よく知ってますね。」


「そりゃー、短期間に個人が売るにしては高額だからな。たまたま知り合いが教えてくれたんだ。」


まあ目立つだろうな。

俺は勤めていたときの販売ルートを使って、例のダンジョン産の純金を売りはらっていた。

一応、正規の販売方法なので、税金も大量に持っていかれた。日本は税金、高すぎだ。



「それについては、先輩にぜひ関西の裏の貴金属(みせ)を紹介してほしいんですが。」


「おいおい、まだ売るのか。しかも、裏とか穏やかじゃねえな。」


「急に大金が必要になったんですよ。買った(狩った)やつ全部売りたいんですが理由(わけ)ありのやつなんで。

先輩なら詳しいと思って。」


「教えてもいいが、関西は怖いぞ。その筋と海外も絡んでやがるからな。」


「平気っすよ。たぶん。」


「あんまり気は進まないが。」


俺の、レベルは268。なんせ、人間やめている。

刃物も銃も大砲も効かない。戦車でむかってこられても対抗できるだろう。

その筋の人がきても、対応できると自負してる。

あっ、数で襲ってきたらどうしよう。怖いから変装していこう。



先輩は俺をまじまじと見て値踏みする。


「今のお前なら平気かな。メールするわ。

いつでも戻ってこいよ。じゃあな。」


「先輩も気をつけて。」


先輩は慌ただしく動きだし立ち去った。本当に忙しい人だ。

頼りになり易しいから性格的には好ましい先輩なんだが、夢中になるとクマなのにイノシシのように突っ走るのが欠点だ。


俺は、先輩と別れた。




その日の午後には、飛行機に飛び乗り、大阪の関西空港に降り立った。

飛行機の手荷物検査をどうやって通過したか。もちろん、収納魔法で大量の金を収納してある。


それを、先輩に教えてもらった貴金属店(ルート)でかなり買いたたかれたが売り、30億ほどの現金を手に入れた。

もちろん、そのあと、ある筋の人たちに絡まれたが、俺の相手になるような人間はいない。

なんたって、俺、神人類だし。


怖いから、かつらとサングラスとマスクをしたが、返って怪しくなった。





俺には、気になっていることがあった。それは、ダンジョンについてだ。

一つは、母ライオンが言っていたダンジョン改変についてだ。大地震がおきて、そのあと俺はダンジョンを発見した。

また地震がおきて、母ライオンたちと出会った。地震とダンジョンは関係しているのではないか。

ダンジョン改変=地震なのではないか。


地震と言えば、阪神神戸の大震災だ。

俺の推測が正しければ、ダンジョンがあるのではないか、神戸に。


大阪から神戸に移動したときには、もう夜だった。

さて、来てみたのは良いがどこから手を付ければいいんだ。


被害が大きかったのは大都市の神戸だが、大地震の震源地は海だった。

震源地にダンジョンがあるわけではないが、海の中では手が出ない。

その夜は神戸で一泊し、熊本に行くことにした。

そう、熊本地震があったからだ。




思えば、北海道から九州まで遠くに来たもんだ。


ご当地キャラの『くまえもん』いるかなと、熊本空港について探したがいなかった。

ぬいぐるみやお土産グッズではいたるところにいた。せっかく来たんだから、実物見てみたかったな。



実は、ネットで陸上自衛隊 高野原分屯地と熊本地震の関係が載っていたのを見つけた。

阿蘇山あたりも何かと騒がしいので怪しいのだが、どうしたものか。



俺はなんとなくだが自衛隊の駐屯地にいった。

駐屯地の近くの喫茶店に入り、本当はいけないだろうが、【スキル広範囲索敵】を使った。

対象はレベル2の人間の索敵だ。


陸上自衛隊には、なかなかの人数がいるんだな。

いた、レベル2以上の人間の反応がある。

通常、普通なら人はレベルは1である。レベル2には、魔物を倒さないと上がらない。

やはり自衛隊の中には、魔物を倒したことがある隊員がいたのだ。


今度は、レベル持ちの人間の索敵をおこなった。120名近くいた。

ほとんとが、レベル2だが、40名だけレベル3、10名がレベル4、5名がレベル5だった。

レベル6以上はいなかった。

しかも、40名くらいが一か所に集中している。

レベル持ちの確認が目的だったが、もしかして駐屯地内にダンジョンがあるのかもしれない。



とにかくレベル2の人間がいるのがわかった。やはり、ダンジョンがあるにちがいない。



自衛隊もしくは政府はダンジョンがある事を隠している。

ダンジョンは、俺んち(北海道)熊本のように大地震の起きた場所の近くにあり、もしかして阪神、東北、新潟などにもあるかもしれない。

レベル6以上のものはここにはいない。

最高がレベル5なのか、もしくはここ以外の場所にいるかもしれないが、探索者は存在する。

隊員がレベル上げしている。



おっと、ダンジョンがあるかどうかは【広範囲索敵】で1階層魔物を探せばわかると思い使ってみた。



驚いた。

熊本ダンジョンはあり、しかもレベルが10から15もある、種族ゴボルト、コブリン、オークとでてきた。

1階層でこれほど強い魔物がでるなんて。俺んちでは1階層はレベル1か2のスライムだったのに。

しかも種族が人型モンスターだ。

うちでは見たことがない。これから、でてくるのか。



俺んちと熊本ダンジョンの違いはどこだ。

俺は一人で探索しているが、ここは自衛隊という集団で探索している。魔物が10点持っているとすると、俺は一人だから10点もらえる。だが、自衛隊員は最低でも5人で探索していると、10点÷5人で2点しかもらえないとするとどうだろう。レベルアップには時間がかかる。


それとも、ダンジョンによって出てくる魔物とレベルが違うのか。


ダンジョンに探索する人数に応じて魔物のレベルが決まるのか。



ああ、母ライオンの知識があれば、悔やまれる。

考えることがいろいろ増えた。



あれ、俺ってば防衛機密に触れていないか。テロ対策なんたら法で罪に問われるのかな。

うん、証拠がないから大丈夫。



結論、いくら考えても俺みたいな凡人男には、一生理解できないだろう。

俺は土産を買い、家路に向かった。




空港にはご当地キャラ・くまえもん、いなかった。

そういえば、『くまえもん』は移動の時どうしているんだろう。

俺みたいに収納魔法があれば簡単だが、結構大きいから荷物になるよな。

飛行機の座席を占有して座っている姿を想像してひとりニヤけてしまった・・・





現実世界の続きになります。

あくまでもフィクションです。ご都合主義でお読みください。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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