11 しゃべる魔物
雪も解け新芽がでてだいぶ暖かくなってきたので、農家の仕事が忙しくなってきた。
小さいとはいえそこは北海道、広い農地を耕したり、肥料をまいたりとなにかと忙しい。
ダンジョンのおかげで稼げた豊富な資金を使い、牛鶏の数も増やし、牛舎や鶏小屋も改築した。新しい農業機械も買った。
新たな商売をはじめた、母さんも忙しい。
潤沢な資金を使い、ちゃっかり工房をつくり、冬の間ご近所主婦たちを集め、牛乳や卵でチーズやケーキなどの神崎牧場のちょっとした特産品を作りだしていた。
高級きのこなどのネット販売もあわせて、ネット通販や大きなスーパーなどにこれが爆発的に売れているらしく、女子会?(年齢制限ないらしい?)並みの集まりがいつのまにか工房になり、今では工場と会社になり、母さんが社長と呼ばれ、ご近所の主婦や知人が社員になっていた。
いつの間にか、神崎牧場は近隣のみなさんが元気に働く雇用と収入で地域貢献を果たしていた。
旧神崎牧場改め、会社名も、『ファームKANDAN』、ブランド名みたいになっていた。単純に神崎牧場とダンジョンを掛け合わせただけで、母さんにはネーミングセンスはないと思う。
とにかく、俺の母親は、わずか3か月の間に会社・工場設立をはたし、見事な経営手腕を発揮している。
ちなみに俺はダンジョンのドロップ品を倉庫に集めておくだけで、加工販売経営に関しては、すべて母さんとその仲間達にまかせている。
小さな牧場だったのに、近隣の牛乳や卵も神崎牧場に入荷されるようになり、規模が大きくなった。
実は、餌や肥料・スライム水を近隣にも配っているので、うち並みに品質が向上している。
ダンジョン品は元手が0円で売れるのはあたりまえで、その上皆こぞって配ったダンジョン品をつかっているから集落といっても20家しかないが、活気づいている。
神崎牧場も人が集まりにぎやかになったなあ。残念ながら、年配の女性ばかりだが。
ひとつだけ不満がある。
みんな母さんのことを社長と呼ぶ。俺は専務なのに、なぜか呼び名は、『たっちゃん』のままだった。
文句が言えない。俺のおむつ時代まで知られている人達ばかりなので、逆らえない。
我が地域も過疎化がはげしく、ご近所さんのほとんどが高齢だ。
奥様達は自分家の農家より収入が良いので、率先して神崎牧場で働いてくれる。
残されたのは、高齢のじいさん、失礼、旦那様たちだけだ。
そうなると若人はいないので、集落農業、近隣の実際の労働力はほぼ俺一人になる。
俺だけ農業牧場をやめてダンジョンだけに絞るわけにもいかず、自分家とご近所のところの手伝いとかで、農家の仕事でも超多忙になった。
新品大型農機具を買って良かった。
ダンジョンにはいる時間がない。
冬の間は一日中ダンジョン探索していられたが、今は必要最低限のアイテム補充のため1・2時間くらいしか探索できず、3階層攻略も鈍くなっていた。
そして、探索時間が短いせいでほとんど2階層止まりだった。
そんなある夜、久しぶりに震度6弱の地震がおきた。
家や牛鶏は問題ない。停電になったがすぐ復旧した。
少し残念だ。実は、土地だけは広いので、停電になっても問題ないよう、太陽光の自家用発電機を設置した。
あれ、俺んちって自家発電に水や野菜、燃料もダンジョンで手に入るので、ある程度なら自給自足生活できるな。
地震から5日後、ダンジョン探索と地震の確認のため、朝からダンジョンにはいった。
1階2階と問題ないようだ。
おかしいと気づいたのは、3階層に行った時だ。
なぜかいつまでたっても金属スライムがでてこない。
地震の影響はないようだか、スライムの姿がないのだ。
奥深く行った時だった、鉄はもちろんのこと金やレア金属などのドロップ品がいたるところに落ちていたのだ。
なんだ!?
もしかして俺の他にも、ダンジョン探索し金属スライムを倒している奴でもいるのか。
なぜ、ドロップアイテムはそのままなんだ。
と思っていたら、犯人はすぐに見つかった。
真っ白い子猫がメタルスライムを無邪気に転がし、じゃれて遊んでいた。
なんて微笑ましい。犯猫だった。
可愛いいが、小さな問題がある。いや見た目は子猫だがその大きさが中型犬くらいあるから。
絶対、普通の子猫ではない。
見ていたら、メタルスライムにかみついていた。あっ、メタルスライムが光の粒子になり消えていく。
今度は、残された丸いアダマンタイト金属を転がして遊んでいる。体の大きさを気にしなければ可愛らしい。
いや、いかんいかん、なごんでいる場合ではない。魔物かもしれないのだ。
【鑑定】
種族:ホワイトエンペラーライオン生後3日 オス
レベル5
ダンジョンネコ科系モンスターの最強種。リーダーの雄に雌が数匹、群れを作り集団生活をしている。
栄養失調。
ホワイトエンペラーライオン??猫じゃなくライオン?
日本にはいません。はい、ダンジョンの魔物でした。
しかも、生まれて3日でレベル5、育つとどれほど強くなることやら。
待てよ、赤ちゃんということはもしかして、母親がいるのか?絶対、大きいよな。レベル高いよな。
いやいや、ダンジョンから生まれたかもしれないし、これからこんなのが出てくるのかな?
これを、倒すのか?
か・可愛くて倒せない。
ひとり葛藤していた。
とりあえず、ホワイトエンペラーライオンの子供は気づいていない。
ここは戦略的撤退だ。そっとその場をはなれた。
家に帰ると、俺は大きなペットショップにいき、子猫用ミルクや犬用哺乳瓶、子猫用離乳食やらを大量に買い込んだ。子ライオンが栄養不足状態だったからだ。
翌日、3階層ダンジョンにいき、子ライオンを探した。
いた。俺に気づくと、毛を逆立てて威嚇してくる。
そして、とびかかってきたが、俺は簡単に子ライオンを捕まえた。
レベル18をなめるなよ。
かみつかれる前に強引に哺乳瓶を口に押し込む。
すると暴れていた子ライオンがおとなしくなり、夢中でミルクを飲みはじめた。20秒ほどでミルクがなくなった。
まだ哺乳瓶をかじっている。ひびが入り使えなくなった。
こんなこともあろうかと次の哺乳瓶をとりだすと、子ライオンはすぐに吸いつき飲みだした。
静かに俺に抱かれて、子ライオンはミルクを飲んでいる。
少し大きめだが、ふわふわの真っ白なもふもふを、おとなしいうちに堪能する。
餌付け作戦成功だ。
なんて幸せなんだ。ちょっと大きいけど。
あっという間に飲み終わる。次のミルクをだし飲ませる。
どれくらい飲ませればいいのかわからないがとりあえず飲みたいだけあげてみることにした。
用意した5本全部のんだ。
満足したのか俺に抱かれたまま毛づくろいを始めた。
まだ生まれて間もないからか大きさの割には軽い。栄養不足のせいか少し骨ばっているようにも感じる。
すると子ライオンの青い瞳と目があった。
『ママ。乳もっとほしい。』
頭の中で幼児の声が聞こえた。驚いて思わず子ライオン落とすとこだった。
「もしかして、お前が話しかけてきたのか?」
『ママ、乳もっともっとほしい』
やはり頭の中で声がする。
驚いた!そうか、しゃべる魔物もいるのか。
「ちょっと待ってろ、いまミルク作るから。」
俺は子ライオンをおろし、リュックから粉ミルク缶とペットボトルを取り出した。
持ってきてよかった粉ミルク缶。ペットボトルにはスライム水を入れてある。
哺乳瓶も2本ダメになったので残りの3本にミルクとスライム水をいれる。
指先に哺乳瓶を近づけ「ファイヤー」と唱える。指先からマッチくらいの炎がでて、ミルクを温める。
魔法の鍛錬も少しずつしていたので、炎の加減も自由に使えるようになっていた。
野生?なので温めなくてもいいのかもしれないが、一応子猫の育て方本に書いてあったので温めた。
「よしできたぞ。おいで。」
声をかけるとおとなしく見ていた子ライオンが俺のそばにきた。
俺は抱き上げミルクを飲ませた。わざわざ抱き上げるのは、もちろん、もふもふのためだ。
あっというまに3本を飲みきった。
すると、俺の腕から飛び降り、いきなり走り出した。
『ママ、こっち。こっちだよ。』
頭の中で声がする。
「あ、ま、待て。」
子ライオンがかけだしていくので、あわてて荷物をリュックに入れ、後を追いかける。
俺は子ライオンを見失しないよう20分くらい、ものすごい速さで走り追い続け、子ライオンは開いていた大きな金属扉の中に入っていった。
ここは、3階層ボス部屋ではないか。
もしかして、あれの親がボス部屋の主なのか。
戦うのか、どうしよう。
俺は扉の前で悩んでいたら、また声が聞こえた。
『ママ、こっち。助けて。』
助けて?しかもなぜ、さっきから俺の事をママと呼ぶ。
恐る恐るボス部屋に入っていく。
3階層ボス部屋は、地面と壁は土でできている、広いスペースになっていた。
今までのパターンでいけば金属スライムがでてきて戦闘になるはずだが、なぜか、あちらこちらにドロップアイテムが落ちている。
奥に進むとダイヤモンドや金など、ものすごい数のレアアイテムも落ちている。
慎重に進んでいく。
すると、最奥にいつもはキングスライムがいるはずの場所に、10mはある巨大な白いライオンが一匹横たわっていた。
やはり子ライオンの親がボスなのか。俺は武器を構える。
『ママ、こっち』
頭の中に幼児の声がする。
子ライオンが、親ライオンのまわりをうろつきまわっているが、親ライオンは動く気配がない。
【鑑定】
種族:ホワイトエンペラーライオン 雌 150歳
レベル255
ダンジョンネコ科系モンスターの最強種。リーダーの雄に雌が数匹、群れを作り集団生活をしている。
死亡。
母ライオンは死んでいた。
第2章 新たなる出会い
新章、始めました。あいもかわらずマイペースで話は進みます。
お楽しみいただけると嬉しいです。
第一・二話を投稿したときは、評価2、ブックマーク2でした。
やはり、評価は気になります。結果が悪くても十話までは投稿しようと思っていましたが、今はランキング・pt、夢のようです。励みになります。
たくさんの応援ありがとうございます。
これからも、感想・評価・ブクマよろしくお願いします。




