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1-8 戦・闘・指・南

ビッケが戦闘の基本について教えてくれることとなった。

記憶喪失の面倒見るのって大変だとおもっているだろうなあ。


「まず、物理戦闘ですが」

「ぶ、物理」

「剣とか槍とか短剣で直接戦うことです」


「基本、近距離の戦闘にはなりますが、先ほどのようにスキルを使うことで、中距離や遠距離攻撃も可能となりますので、注意が必要です」


先ほどのビジットのスキルだと、中距離攻撃となるんだろう。


「で、今の勇者様の様子だと、すぐには物理戦闘に交わるのは、危険なので、ここは諦めましょう」

「今すぐに、熟練度を上げるのは無理だもんね」


「いや、この槍でやってみるよ」


僕は、槍を頭上でくるくると回してやる気をアピールした。

情けなさすぎるので。


「その使い方が、そもそも間違っているし・・・」

「無理しないでくださいね、勇者様」


シールディにそっと、肩に手を置かれて諭される。

どんだけだ。


「というわけで、今回の魔物討伐の戦闘の並びですが、ライカ、僕、シールディ、勇者様、の順でいきましょう」


盗賊、魔法使い、僧侶、勇者の順か。

僕がやってきたRPGなら絶対にしない並び順だった。

勇者って役職の人、なんなの! いるの!?


「でも、隊列が崩れて突破されたら、もちろんその槍で戦って身を守ってください」

「わ、わかったよ」


背中の剣は、いよいよ飾りになった。槍も使ったことないわけだけど。


「で、あと、勇者様にできることですが」

「教えてほしい!」


僕は、待ってましたとばかりに、声をあげた。無力とはいえ、何もしないは、罪悪感を感じる。


「あります。魔法です」

「魔法?? いや、そ、それも忘れちゃって、さっぱり」


「スキルの方は、鍛錬が必要ですが、魔法の方はアイテムの力を借りるので、やれるはずです。以前の勇者様も正直、かなり下手くそとはいえ、魔法は使えていましたから」


ビッケはコホンと咳ばらいをすると


「やり方を簡単に説明しますので、やってみましょう」


魔法の説明は長いので、簡単に要約するとこの世界の魔法ってのは、世界に存在する見えない精霊の力を使って行うものだ。


まずは、自分が6種類から使いたい系統の精霊を自分の周りに集める。その時に、集めたい精霊の力を宿した宝石を媒体にして集めなければならない。


精霊が、集まったら、自分の生命力、この世界ではマナというのだが、それを精霊の流脈と呼ばれるエネルギーが伝わっていくパイプみたなもに、流し込む。流し込む流脈は、精霊には幾度もあるので、流脈の場所や数によって、発動する魔法が決まる。


流脈への流し込みが終わったら、使いたい力を言葉にすることで、発動という流れだ。


ちなみに、スキルとは、マナを自分の体の流脈に流し込んで行うものらしい。なので、精霊を呼ぶプロセスが簡略化されるため、スキルの方が発動が圧倒的に早い。また、魔法は相反する精霊で打ち消すこともできるので、スキルの方が安定して発動できる。


「というわけで、簡単な風の攻撃魔法、『ウィンドウ・カッター』をやってみましょう。


聞いただけで、内容がわかる魔法名だった。

とりあえず、やってみよう。


「まずは、風の精霊を呼び出しましょう。シルフですね」

「わかった。シルフだな。性別は男性か、女性か。何歳がいい? 背は高い方、低い方?」

「精霊に、そんな設定はありませんので、考えないでください」


考えなくていいらしい。精霊ってイメージが湧かないが、とりあえずディ〇〇ーっぽいのを、イメージしようと決めた。


「分かった。じゃ、やるよ」


やり方はわからないけれど、勢いでやってみよう。

僕は、目をつぶり、足を少し開くと、両手を前でクロスさせると、バッと手を天にかがげて、唸った!


「我が契約の元、汝、来たれよ風の暴君シルフよ! いざ、集へたまへ!」


叫んだ。

・・・。

さぁーっと、そよ風が吹いて気持ちいい。


「…。何やってんの」

「勇者様、面白くないです」


ギャグと勘違いされた。


「まずは、アイテムを掲げる必要がありますよ。僕はこの杖に、シールディはネックレスに精霊のそれぞれの宝石がつけてあります。勇者様の場合は、その派手な指輪です」


ビッケが指刺すのは、僕が意図が不明と思っていた指輪だった。

これ、そういう意図があったの!


「緑の宝石が風のシルフの精霊を呼ぶための拡張機となるものです。まずは、それを掲げましょう」


「こう?」


僕は、中指にはめた指輪だったので、中指だけを天につきだした。

いいんか、これは。


「そんなに、誇張しないでいいです。手を前に出すだけでいいです」

「安心した」


僕は、手をいったん下ろして、手のひらをそのまま前に突き出した。


「真似してください。『エレメント、シルフ』」

「『エレメント、シルフ』」


緑色の宝石が薄く光った。

周囲の鳥たちががざわつく。周囲に見た目の変化がないが、感じ取れる何かが起きている。


「うまくいっています。次が難しいですが」

「やってみる」


「自分の体内に流れる生命エネルギー、マナを感じてください。それを、精霊に流し込む、う~ん、渡すような感じか、液体のエネルギーをパイプに流し込む感じをイメージしてもらえれば、」

「せ、生命エネルギー? 自分には、感じないなあ」


僕は今まで、生きていて、生命エネルギーなるものを感じたことがないので、困った。とりあえず、目をつむってみる。


そもそも、生きる気力もないに等しかった僕に、生命力があふれているのか、はなはだ怪しかった。いや、何も感じない。


「感じませんか?」

「感じません」


「勇者様、そもそもですけれど、自分の中の生命力を信じていらっしゃいますか?」


スバリ来た。某ド〇クエなら、即罪に「いいえ」を選択するだろう。


「い、いや、その」

「自分の中の、生きる力、生命力をそもそも信じるところから、スキルも魔法も始まります。ご自分を信じるところから、強さのステップは始まる。まずは、自分には生きる力がある、それを信じるんだ、って、私はあなたに習いました。その言葉をお返しします」


「な、なるほど」


つまり、僕が自分を信じていないから、感じることが出来ないのか。


「こいつが、自分を信じていないの?? そんなのないでしょう」

「まあ、でも、記憶喪失してから、かなり自信を失っているようですので、ありえますね、ナイスアドバイスです、シールディ」


「いえ、私は、教えてもらったことを返しただけです。かつての私もそうでしたから」


笑っているシールディだったが、何故か元気はなく寂しそうに言った。


「ふーん、私は気にしたことなかったけどなあ。じゃあ、自分を信じて再トライしなさい。簡単じゃないの」

「そ、そんなに簡単かなあ。やってみるけど」


僕は目をつぶった。

自分の中の生きる力を信じる…。やり方は良くわからないが、思い込むことからやってみるか。


いのち。


いのち。


いのち。


いの。


い・・・。


命!!


「うおおおおお! 生命力! 命!」


眠気に追い詰めらられた僕は勢いでごまかすため、体で「命」を表現した! 両手を斜め下にそらし、左足を曲げ立った! この世界に漢字で伝わるかどうかわからないけど。


「!!! な、なんか、よくわかんないけど、ふざけているのね! 怒るわよ!」


パコン! と、頭をはたかれる音が森に響いた。

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