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1-7 戦・闘・力・零

デジットの持った槍の刃が発光し、突っ込んでくる!!!

いや、突っ込んでくるが、正直早すぎて目で追えない!!

もう、疾風のような暴風のような塊が、僕に向かってきているとしか言いようがなかった。


「ちぃ!」


ライカがダガーで防ぎに入ったが、ギャンという音ともに、ライカは弾き飛ばされてしまった!


「く!」


ヒラリと着地する大丈夫なようだ。


疾風となったデジットが僕に迫る! あの勢いであれば、確実にあの刃に僕の体は貫かれる勢いであることは理解できた。


これが、スキルなのか!! 勇者の話で出てきた話も半信半疑だったが、実際に目の前で超能力的力を見せられると、信じるしかない。UFOも目の前で飛んでいたら僕は信じたはずだ。


円盤はともかく、躱すのが無理なら、防ぐしかなかった!


「やあああああああああ!!!」

「ゆ、勇者様ー! 防御の魔法が間に合わない!!」


シールディの悲鳴があがった!

が、僕はズタンと咄嗟に転がり、地面に落ちていた伝説の盾『シルバーフィットネスシールド・プラチナ版』を両手で構えた!


伝説通りになら、あの突進も止めてくれるはずだ!! 僕は盾を持っている手に力を入れて、来るべく衝撃に備え適当に叫んだ!


「主を守りたまえ! 伝説の盾よ!!」

「はあっ!  ああああああああああああれぇぇぇぇぇええぇえぇ!」


フォオオオオオオオオン! と、凄まじい風の音とと共に、デジットの槍が、盾にぶつかる直前で、盾をかわすように角度をギュッと変えて、そのまま後方に通り過ぎていった。 え?


その勢いのまま、茂みに突っ込んでいく。


「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ」


あ、あれ!? バキバキバキッーーーーーと枝葉が折れる音とともに、デジットは茂みに突っ込んだままいなくなってしまった。


ふう。どうやら勢い余って、狙いを外してあらぬ方向へ突っ込んでいったみたいだ。


「あ、危なかったですね。でも。さすがです、勇者様。伝説の盾をお使いになるとは」

「いやいや、当たってないから使ってないよ。勝手にデジットが飛んでいったんだ」


「使っていますよ。それ、『あらゆる攻撃を当てることが出来ない盾』ですから」

「ああ、そういうことね・・・」


なるほど。当てることが出来ないなら、硬度とか、関係ないからな。さすが、伝説の盾、すごい特殊能力だった。姑の嫌味もきっと吹き飛ばしてくれるんだろう。


「まあ、刺されたとしてもあんたの本当は自業自得なんで、同情の余地なんてないんだけど」


ジトッーと、した目で僕を見るライカだった。

蚊に刺されるぐらいならいいが、あんなどでかい注射はゴメンだ。


「この機会に心を改めるよ・・・」


と、うだなれるしかなかった。


「そうですよ。女の子がみんな、可愛そうです。もう、こんな悲しいことはやめて下さいね」

「はい・・・」


身に憶えのない罪に対して謝罪し続ける僕であった。


「とりあえず、私、デジットちゃんを見てきますね」

「シールディ、私も行くわ」


2人とも茂みにガサガサと入っていく。


でも、今のは本当に危なかった。伝説の盾サマサマである。これから、大事にしなくちゃね。盾をマントで拭き拭きすると、ビッケに手伝ってもらって再度、剣と盾を体に結びつけた。


そうこうしているうちに、2人が戻ってくる。

縄で縛ったデジットを連れて。

当たり前だが、すごいふてくされた顔をしていた。


「いやあ、ごめん、ごめん。本当にごめんね」

「せっかく努力してきたのに、悔しい! 私を捕まえて何をするの!」

「いや、何もしないよ。危ないから大人しく・・・」


「大人しくしろ、おら! この白い肌もっと見せろや、ボゲェ! き、きゃーやめて! へへへ、なんて魅力的な体だ。胸はまだ発育途中だが、肉付きのいい脚はどうかな、げへへへ! ちょ、やめ、はああああん! とかって、いう展開なのね!」

「まったく違います」


僕は無表情でノーと入れる日本人だった。


「冗談はともかく、危ないからこのまま家に届けてから、魔物退治に出発しましょう。早くしないと、日が暮れると難しくなるわよ」

「失敗しちゃえーバカー!」


もはや、捉えられたただの小学生だった。


「これ持ってて」


ライカから、ビジットの槍を手渡された。ブンブン振ってみる。おお、これなら武器として使えそうだ。


「あ、それ、師匠からもらった大事な槍、とっても高価なんだから! 返して」

「高価? たぶん、250Gゴッドぐらいよ、それ・・・」

「えええ、安い! そんなはずないわー!」


デジット、他にも騙されていたのか・・・。きっと人を疑わない純粋な女の子なんだろう。合掌。


そして、この世界の通貨を知った。ゴットって・・・。まあ、お金は神様みたいなもの、ってところかな。


「とにかく、急ぎましょう! もうお昼過ぎてしまいました。山を越えないと」


かくして、「せかいだいちゅきれんごう」はやっと、残党魔物狩りに向かって歩き出したのだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


というわけで、村の村長さんにビジットを引き渡すと(親父さんは何故かめちゃくちゃ謝っていたけど)、目的地に向かって歩き出す。


僕は、先ほどの戦いから不安だけが募っており、それを払拭するかのように手に持った槍をブンブンと振り回していた。


「う~ん」

「やはり、記憶喪失なんですね。先ほどの戦闘は、危なかったです、正直」

「だよね」


僕もそれはわかる。先ほどは、相手が相手だったので、助かったが、本当の魔物との戦闘で僕が戦えるとは到底思えなかった。


それは、みんなも同じだろう。


「勇者様の奥義は、思い出せませんか? 筋力倍増とか、相手を吹き飛ばすとか、そんな風な」

「そ、それが、さっぱりだったので」


思い出すも何も、基礎知識がないので、使える気がしない。先ほどビジットが行ったスキルもよくわかっていないのだ。


「ちょっと、このまま、魔物討伐に行くのは不安ね」

「そうですね。少し打ち合わせしたほうがいいでしょうか?」


「そんなの、いいわよ。こいつが本調子じゃないだけだし。ちょっと、動けば、体が思い出すって」


2本のダガーをビシッと装備すると、ライカが何か、怖いことを言った。


「さ、あんたも構えて! 練習よ」

「れ、練習!? じ、時間ないんじゃあ」

「すぐ終わるって!」


僕はしぶしぶ槍を構えると、刃をライカに向けた。人に刃を向けるのは怖い。


「じゃ、行くわよ」


言った瞬間、ライカが消えた。のではなく、低い体勢で槍の下に滑り込んだのだ。慌てて、槍を動かそうとしても遅かった。2本のダガーで挟みこまれ、槍は固定され、左方へそらされてしまった。


そして、さらに踏み込んできた、ライカが僕の顎を蹴り上げる!! ガキッ! 目の前がチカッとして僕は地面に倒れた。


異世界で初めて受けたダメージは、女の子に顎を蹴り上げられるに決まった。ぜひ、トロフィー設定しておいてもらいたい。


なんて、冗談言っている場合じゃない。顎が痛かった・・・。


「い、痛い!」

「え、あ! ごめん、マジで、はいちゃった! ギリギリで止めるつもりだったんだけど」

「ひ、酷いよ」


今までの恨みもこもっていたんじゃないだろうか。


「ライカさんに負けてしまうとは。今までの勇者さまとは思えない。今の場合だったら、勇者様が先に動いて、お尻を触って、意識をそらした瞬間を狙い、ダガーを2本とも奪い取り、背中を片手で押して地面に倒しているところでした」


えらい、具体的なので本当にそうなんだろう。そんな、戦闘中にセクハラをする余裕はない。


「大丈夫ですか。立ってください」

「ありがとう。いててて」

「うーん。でも、このままだと、やっぱり、ダメね。どう考えても、危ないと思うわ」


「僕も思います。とりあえず、後方で様子を見ますか?」

「後方でいいけど、もし、守り切れなかったらシャレにならないわ」

「私たちも、ほとんど勇者さまに頼ってきましたからね。実は、私達ってそんなに強い方ではないんです」


「そうなの?」

「そうですよ。もともと、戦闘の才能があって、仲間に誘われたわけではないので。戦闘力は、まあ普通の上ぐらい?」

「まあねー。強いやつは、ぜーんぶ、あいつ1人で倒してたから、私達、あんまり何にもしていないのよね」

「それじゃ、今からの魔物討伐も、僕が1人でするはずだったの?」

「まあ、今回のは上級じゃないから、私達でも大丈夫だとは、思うんだけど」


かなり前途多難だった。


「とはいえ、このままだと危険なので、戦闘の基本ぐらいは、復習しておきましょうか」

「お願いします」


というわけで、戦闘の基本を習うことになった。


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