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1-5 出・発・進・行

なかなか快適なベットで寝ることが出来た。

体の調子もいい。


僕は本来、いつもの枕じゃないと眠れないよー、みたないしなびたきゅうりのような考えの男の子だったが、状況が状況だけに強引に寝たら、意外と気持ちよく寝れた。


今日は、残党魔物狩りという、今まで経験したことがないことをしなくてはいけない。

この世界の居場所を手に入れるために、勇者になりきらなくては・・・。


昨日までの僕の人生が、急に変わってしまった。

悲しみもあるが、少しワクワクしている自分がいることに、驚いた。


そういえば、僕と入れ替わった、勇者はどうなったんだろう? 僕の人生なんかと入れ替えてしまって申し訳ないなあ、と思ったけど、自分でしたことなので、まあ、置いておこう。


僕は、出発の準備をした。

勇者が持ち歩いていた備品というかアイテムのバッグを広げたが、いろいろな宝石や変な形をしたオブジェ、金色の縁の手鏡などが入っていたが、何かしら意味があるものかと思ってそのままにした。


僕は、使うかもしれないものはとっていく、おばあちゃん派の男だった。


服を着たまでは良かったが、問題は装備品だった。もともと多いと思ってはいたが、とにかく全部装備すると重すぎる。


ネックレスやアミュレットみたいなものは10種類ぐらいあるし、指輪も7種類もある。おまけにイヤリングも派手にでかい。こんなものを全部つけている人間なんて、僕の記憶ではテレビで見たアジアの大富豪ぐらいだった。


そして、僕は日頃からやっていたRPGのゲームのキャラクターたちに心からわびた。ステータスが強くなるからといって、やたら装備させていたが、本人たちからしてみたら今の僕と同じ心情だったに違いない。


僕は次元を超えた共感性を持ったのだった。


なので、いくつか重いものは、バッグにしまいこんだ。


そして、一番重いものは、価値と重さが比例するのか、伝説の剣『ゴールデンフェニックスカリバー・プレミアム版』と伝説の盾『シルバーフィットネスシールド・プラチナ版』だった。ちなみに、ブーツは問題なし。


この伝説グッズ(?)が、とにかく重い。なんで、こんなものを日常的に持ち運べていたのか、謎すぎる。これじゃ、持っていてもうまく使いこなせない。どうも、筋力は、前の世界の僕を引き継いじゃったのか?


何とか背中に剣と盾を背負い込んだ。お、重い・・・。ふと壁にかかっている鏡を見ると、昨日見た時には、元気ツンツンだった髪や鋭い目つきが、ふにゃっとしなり、睡魔に襲われたようにトロンとしていた。


なんか、どんどん、以前の僕要素が混じってきちゃっているなあ。


そんな事を考えながら、僕は仲間たちが待っている外へ向かった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


外に出るとみんな、すでに準備して待っていた。

ビッケも、ライカもシールディも、冒険に出ます! 身なり整え、冒険にいきますよって感じだった。


「おっはよ! 記憶戻った!?」

「おはよう。いいえ、全然、まったく」

「記憶喪失続行か、まあ、いいわ」


皮の鎧にマントをひるがえし、ライカがぽんと僕の肩を軽快に叩いた。


「今日の残党魔物狩りは、そんなに難しいもんじゃないから、ちゃっちゃと終わらせてから、記憶喪失のことを考えましょう!」

「それがいいですね。まずは、簡単なお仕事は終わらせましょう。もしかしたら、戦闘しているうちに記憶が戻るかもしれませんし」


ビッケが朗らかに笑った。

シールディが地図を取り出すと広げて説明をしてくれた。


「勇者様、現在地がここ、ワーイン村のはずれにある別荘です。ここから村を出て、川沿いに北へ向かってそのまま山を越えると、そこに魔物さんたちが、縄張りを作っているってお話です。近くに大きな滝がありますから、わかりやすいですね」

「ふむふむ」


僕は、そんなにわかっていなかったが、盛大に頷いた。


「忘れ物はないわね。それじゃ、村を出るまで少し林を歩くわよ。いきましょうか!」

「ええ」


というわけで、村の出口に向かった。

少し、転移魔法なるものに期待したが、ないっぽい。


僕はふと、太陽を見た。眩しい。ってことで、いまさらだが、地球と同じ環境だ。夜から朝、異世界っていっても基本環境は同じだった。


別荘(?)で、みたところ、電気屋や機械などは見当たらなかった。建物や机、椅子の作り、みんなの服装などから、この世界は、まんまRPGゲームの中世をモチーフにした世界観だとわかる。


言葉や文字がわかったおかげで話がスムーズに進んでいるが、それがなかったら、どうなっていたことか・・・。


とか何とか、考えているとビッケが横に来た。


「勇者様、準備が遅れて朝ごはん食べてないですよね?」

「あ、そういえば」


見たことない物で準備が手間取り、そういえば、食べてない。気になるとお腹が減ってきた。


「これ、どうぞ。テウンウッドの実です」

「テウンウッドの実??」


見たことない赤色の実だった。


「少し酸っぱいですが、腹持ちはいいので、おひつどうぞ」

「そ、そうか。ありがとう。頂きます」


僕は、ビッケから赤色の実を受け取ると、指でぶよぶよして感触を確かめて口に放り込んだ。


その瞬間、口の中に酸味が広がった!!


「×」

「ははは、おいしいでしょう!」


僕の口はどこぞのうさぎのぬいぐるみの口と同じ造形となった。すっぱくて。そしてこれは。


「これって、梅干し!!?」

「え、うめ、ってなんですか?」


ま、間違った。どうも、前の世界と似ている物を見つけるとそれを口にしてしまう。これは、中身を疑われかねないので、気をつけないと。


「い、いや、こいつはうめーや って思ってね」

「そうですよね。勇者様は、いつもテウンウッドの実を食していたので、ビッケが進めたのですよ」

「な、なるほど」

「あわよくば、記憶が戻るかと思ったんですけどね」


記憶は戻らないが、スッキリはした。しかし、梅干しってわからないで食べると、カウンター効果バツグンだな。


「勇者様、そういえば、昨日よりも身に着けているアクセサリーが少ないようですが・・・」

「あ、ああ、これ? 重いから少し外してみたんだ」

「いいのかしら? なんか、1つ1つ何かしらの効力があるってあんた、言ってたけど」


「僕らも、詳しくはわからないものも多いですからね」

「とりあえず、捨ててはないから、使うものだったらまた、身につけていくよ」

「そうなんですね。記憶喪失って大変なんですね、私にできることがあったら、いつでも言ってくださいね、勇者様」


心から共感してくれているようにシールディが言った。


僕はシールディの身なりを見てみた。さらさらの青い髪をなびかせて、瞳はとても大きく相手を包み込むような優しさを感じさせる。


フード付きの白いローブをまとい、腰にはいくつか小さいバッグがついている。この中にアイテムなどが入っているのだろう。


白いローブは膝までで、白のショートパンツを履き靴はブーツだった。


う~ん。僧侶というよりは、回復系の魔法使いっぽい感じだった。そういえば、ビッケは、頭に宝石がいくつかついた杖を持っているが、シールディは持っていない。


「? 何か変なところがありますか!?」


しまった。この世界について少しでも知ろうとして無意識に、シールディを凝視してしまっていたらしい。


「え、い、いや! そんなことはないよ、全然。その、とてもお美しいなあと思いましてね・・・」

「え!??」

「あ、こ、こら! あんた、何言ってんのよ! やっぱり記憶が戻ってるんじゃないの!!」


「そ、そんなことないよ、ラ、ライカも美しいなあ」

「そんな言われ方して、嬉しい人間なんていないわよ!!」


パコッと頭を叩かれた。このままだと、勇者でなくてボケ担当になってしまうんじゃないのか。


「まあまあ、喧嘩はやめてさあ」


ビッケが仲裁に入ろうとしてくれた瞬間、


『相変わらず、女性に対しては、誰にもかれにも甘いわね。勇者様、いえ、勇者!!!』


「なんだ!」

「上から聞こえてきます。勇者様、注意して!」


言われて上を見るが、木の葉に覆われており、何も見つけられない。


『そうやって、人の心を踏みにじり、心で嘲笑っているんだろう・・・、なんて、やつなの!』


いきなり、天から人格否定される人生になってしまった。


『勇者よ、そうやって、日々罪を作って生きるなら、今ここでその息の根を絶ってやろう! やあああ!』


どこだ!? 


ガサガサガサッーーーーーーーーーーーー


そしてーーーー葉に遮られた上段を割いて、僕をめがけて、人影が落ちてきたーーーーーーー。


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