2-22 策略
「エルバディが! それは何としてでも探し出さねば!」
「エルバディが、さっき会っていたのに…」
「なんだと!? 貴様、なぜ、エルバディと会っていた?」
「それは…」
たぶん、ユイにとっては面白くない展開となるだろうが、仕方がない。
「エルバディがアホ毛決定権で悩んでいたから話を聞きに行っていたんだ」
「エルバディが!? まさか…よけないことを」
というわけで、この問題が分かった!
ヒアリングを開始するぞ!
「言っちゃいけないけど、町人が1人攫われたぐらいで、緊急事態ってことは、ユイ様にとっては大きな問題ってことですよね?」
「そ、そうだ。私とエルバディは友人だからな。ははは…」
「違いますね。ズバリ言っちゃいますけど、アホ毛決定権で必ず勝つために、エルバディを利用していたんでしょう!」
「ななな、なんだと!? 何を証拠に!」
僕はくるっと背中を向けて言った。
「衣食住の話を聞いた時に、ユイさんとユマさんがうまくいっている話、これは、根拠がないなあって思っていたんですよ。まあ、実績が上がればいいですが、正攻法でない以上、永続的じゃない」
「わ、私は、きちんとやっているぞ!」
「いや、やっていない! 土地や物件の獲得を本来交渉してかなければならないところを、アホ毛決定権で突破している、たぶん、ユマさんもですね」
「ユマの事など、知らん」
「たぶん、ユマさんの仕入れに関しては、アホ毛決定権を悪用することで、少ないコストで無茶な要求を通しているはずです!」
「だ、だから、何を根拠に!」
僕は、びっしとユイに指をさして言った!
「勘です!」
「勘で私を責めるな!」
「まあ、エルバディを助けて聞いてみればわかる話なので、今から、助けに行きます」
僕は部屋から出ようとしたが、兵士に止められた。
「あ、あの…」
「なにか?」
「それが、この手紙がエルバディ宅に落ちていたのです」
「ふむふむ、エルバディを預かった。返してほしくば、エルド5丁目の3の広場に、ユイとユマの2人で来い。誰かを連れてきたらエルバディの無事は保証しない。勇者より。ふむふむ。なんだ、僕か…。って、僕か―!?」
「そ、そうです。あと、証拠として、エルバディ宅に、剣が落ちていました」
「え? 剣? 剣なら入口で預けたけど」
「そ、そうなのですか? エルバディ宅に素晴らしい豪華な剣が床に刺さっているそうです」
「んー!?」
僕は、扉を開けて、お預けボックスを開けると…確かに、伝説の剣がなかった。
「な、ないー!?」
「ん? どうしたんですか? 勇者様?」
椅子に腰かけて待っていたシールディがこちらによって来る。
「この中の伝説の剣知らない?」
「え? な、ないんですか? 私もずっとここにいたのではないので」
「まじかー」
こりゃ、どうしようもない。はめられたか。
「どうするのだ、勇者よ。私は断じて誘拐犯のゆうことなど聞きたくないが」
「無責任ですね。まあ、僕が行きます。姫さまたちが行くのは危ないだろうし」
「お、お前だって、あ、危ないだろうが」
どうやら気遣ってくれるらしい。エルバディも気遣えよ!
「お言葉は嬉しいですが、行きます」
「ですが、勇者様、主犯の可能性のあなたに行ってもらうのはちょっとおかしくないでしょうか?」
モブ兵士がいたらんことを言っている。
うーん。
「分かりました。まずは、エルバディ宅に行って、僕が犯人でない証拠をお見せしましょう!」
「え?」
「だったらいいですよね?」
「はあ、まあ」
モブ兵士はしぶしぶ従った。
よし。
「シールディ、エルバディ宅に行こう」
「え? ど、どうして」
「行きながら説明するよ。というわけで、姫様は待っててください」
「わ、わかったぞ」
しゅんとなり、ユイは僕の意見に従った。
エルバディの件に、責任を感じているのだろうか。
それぐらいは、あってほしい。
「よし、行こう」
僕とシールディは、再びエルバディ低に戻るのだった。