2-5 アホ毛決定権委員会
「まずは、事情から聞いていこう!」
リーダーと思わしき人物がもめている2人と話を別々で聞いた。
「ふむ、要は、ジックとキャミ―はお付き合いしているが、前日のデートをすっぽかされたキャミ―が怒っている。隣の家のパティと二股をかけていたのではないか? ということが問題でいいんだな」
キャミ―はうんと、頷いた。
しかしジックは納得していないようだった。
「ちょっと、待ってくれよ!? 証拠もないのに、まさか、あほ毛で取りまとめるつもりか!? 僕が負けたら認めろってことなの!?」
「その通りだ。こんな道のど真ん中で1時間以上、一般市民の生活を阻害している。犯罪行為とも言えなくもない状況だ」
「そ、そんな!」
「観念しなさい! ジック!」
女性は怖いなあ。
「やあ、ちょうどあんたが決めた制度が目の当たりにできるんじゃないの」
トウモロコシをもぐもぐとほおばったままライカが言った。
「ま、私の勘だと…。あの男が黒ね!!」
勘ねえ…。確かに女性の勘は怖い。
そして、この決定の仕方は勘じゃなくてギャンブルじゃないのか!?
「それでは、審判を始める。双方、動かない様に!」
「ひ、ひどい! やめてくれ!」
「こら、動くな!」
ジックという人物は抵抗しようとしたが、制服の2人に押さえつけれられてしまった。
「アホ毛キャップを装着!」
『アホ毛キャップを装着!!」
リーダーの呼称に2人が応えると、2人は2つのキャップを出した。そのキャップには、あほ毛と思われるマークがついている。お、おおう。
2人が、ジックとキャミ―の頭にキャップをかぶせる。
「それでは、審判を始める…皆様方お静かに…」
リーダーが静かに目を閉じる。え、演出するのに馴れているぞ。
周囲を囲んでいた人たちも、静かになった。
人通りが多いはずなのに、沈黙が流れる。
そして、
「ジャッジメントおおおお!!」
リーダーが言った瞬間、2人の帽子をとった!!
おおおお!! と住民たちが感嘆の声を上げる!!!
ジックが数本のみ、キャミ―がぼさぼさに髪が逆立っていった。
「チェエエエエック!」
2人がそれぞれの髪の毛をカウントしているようだった。
それが、終わると3人はこそこそと話をしている。審議しているようだった。
「オーケー」
ごほん、とリーダーは咳払いすると、こちらに向き直る。
「審判が決定した! アホ毛総数ジック9本! アホ毛総数キャミ―40本! よって、ジックが浮気した事実が確定した!!!」
おおおおおおお! と周囲が盛り上がる。
ひでええ! いいのか、これ?
「そ、そんなあ! パティに聞いてくれよ! 無実だ、なんだこれは!? 勇者の、いや、あの狂言の考えた規律なんておかしいだろ!」
「ジック!! さあ、洗いざらい白状してもらうわよ!!」
3人は、バッと敬礼すると
「皆の者、お時間を取らせてしまい、大変失礼した。それでは、2人は委員会本部で、書類の記載があるのでこちらへ」
あっという間に雑踏の渦へ消えていった。
と、いうわけで、アホ毛決定権は、事実であり、実行されていた!
「勇者様の考えが町で機能していますね。うーん、すっぱい」
テウンウッドの実をほおばりながらビッケが言う。
「いや、実行しているのはすごいけど、これ、いいのか!?」
しかし、町の人は馴れているようで、すぐに元の営みに戻っていった。
人間て、適合能力が高いのね!