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2-2 僕の成長絵日記

1つ分かったことは、この世界の住人はあんまり人の話を聞いてはくれないということだった。


「ちょっと、待って待って!」

「ゆくぞ!」


ふんふんと鼻息を荒く、ナイルは刀をふるってくる。その瞬間、


『逃げるんじゃねえぞ、てやんでばろーチクショー!』


なぜか、江戸っ子言葉が聞こえてきた。


「え?」


『おめえさん、勇者なんだから逃げるんじゃあ、ねえよ‼』


「ま、まさか、刀がしゃべった!?」

「おぬし、以前も同じリアクションをしたではござらんか」


そりゃ、普通ビックリするだろう。刀がしゃべるんだから。


「この妖刀『重丸』は、刀の中でも最高の切れ味と、匠の技を兼ね備えた意志を持った、この世にただ1つしかない刀でござる。お主の伝説の剣と同等の価値をもっているでござるよ」

「こっちの剣は、喋らないけど…」


あと、匠の技を兼ね備えた意志っていうのがわからない。


『ともかく、おれっちの錆にさっさとなっちまいないな!』


匠の技とは遠くかけ離れたことを刀はおっしゃっている。


「分かっているでござる。私も、この神矢一刀流を皆伝した身。恥をさらすつもりはござらん! いざ参る!」


というわけで、再び刀を振り下ろしてくる。

サッと躱す僕に、


「私に勝てないと思うのであれば、仲間の力を借りても構わんでござるよ!」


「それはいらないんじゃない? きっと大丈夫よ」

「ですね」


ライカとビッケが言った。


そう、僕もここ1カ月遊んでいたわけではない。みんなと、厳しい修行を重ね、一人前になるために、血と汗と涙の努力を積んできたのだ。


僕はゆっくりと、腰から小ぶりのアイアンソードを引き抜くと、刃を相手と平行になるように構えた。


「貴様。背中に背負っている伝説の剣は、使わんと申すのか!」

「お前程度には、こっちで十分だぜ!」


ーーーそう、あれは、ライカと剣の修行をしていた時のことだーーーー


「ぐぐぐ! この伝説の剣、重い! ぜんぜん、持てない!」

「ふう、こりゃ、その剣はあきらめないと、ダメみたい。全然、練習にならないわ」


ライカがあきれるように言った。


「はあはあ、こんなの、どうやって振り回していたんだか…」

「やってた本人からそう言われるとどうしようもないけど」


ライカは、てくてくと荷物の方へ行くと、ガサゴソと漁った。


「あった! とりあえず、こっちを使って」


ポイっと投げられたものを慌てて、受け取るとそれは、小ぶりの剣だった。


「アイアンソードよ。私が剣のトレーニングで使っていた物だけど。もう、使わないからそれあげるわ」


「おお! ありがとう!」


僕は、その剣を片手でブンブンと振りまわした。

面白いように、風を切り、近くの草木も刈っていく。

今までのフラストレーションを解消するかのように、振り回した。


「まずは、装備できないとトレーニングも出来ないから。スキルも何もあったもんじゃないし」

「そうだね! ようし、このアイアンソードでやってやるぞ!」


僕は、調子に乗って剣を振り回しながらそう言った。


振り向いた瞬間、スン、と音も立てずに剣は、ライカのズボンの紐を切っていたのだった。


『え?』


ライカのズボンは、ストンとそのまま落ちる。

誘導されるかのように、僕の視線はライカの下半身に向けられた。


「水玉とかは、まったく見てませんよ!」

「ばっちし見てるし!!!」


どごぉお!


ライカの下着を目に焼き付けた僕は、背中を思いっきり蹴られて、その場に倒れたのだったーーーーーー。


「何を笑っているで、ござるか! 気持ち悪いでござる」

『さっさと、やっちまいな、ライル! こいつ、変だぞ、ちくしょー!』


しまった!? ライカの下着を思い出した僕は、ダメな笑顔になっていたらしい。涎を拭きとると、再び剣を構えた。


つまり、特に剣技は成長してないのだ。前と違うのは、剣を装備していることぐらいだった。


しかし、大丈夫だ。


僕は、右手で剣を構えたまま、左手をナイルに掌を向ける。


「ム! 貴様、まさか、魔法を使うでござるか!」

『卑怯だぞ、チクショー!』


刀うるさいな!


そう、僕に魔法の才能があふれていたのだーーーーーーーー。


「う~ん、シルフ以外の魔法が、まったく発動できないですね」


ビッケが困ったように言った。


「サラマンダーとか、呼び出しはうまくいっているんですけど、マナの流動が下手くそなんでしょうね」

「グサッ! はっきり言うなよう!」


と言っても仕方なかった。

本当に、他の属性魔法がまったく発動できない。なんでなのか!?


「とにかく、出来る幅を広げていって、少しずつ他に派生していく方法でやりましょう。シルフ系の魔法ならいけるわけですから」

「そうかー。火で爆破したり、氷の刃で敵をハチの巣にしたり、したかったのになあ」


夢見てた。


「鍛錬ですよ。鍛錬。さあ、まずは、あの木に向かって、風の攻撃魔法をかけてください!」

「オーケー師匠!」

「その師匠ってのやめてくださいよ」


僕は、シルフに語り掛け、大声で呪文を唱えた!!


「ウィンドウズ・ソサエティ!」


その瞬間!


「またですかー!!!」


ビッケの上着と下着がバッと脱げてしまった。

上半身が生まれたままの姿の男が目の前に誕生した!


「わざとやってないですか!? これで10回目ぐらいですよ!?」

「わかってるんなら、よけてよね」

「そんな無茶な!」


ビッケは、女の子のように、上半身を腕で隠しながら服をいそいそと着た。

妙に色っぽいなあ。おっと、もちろん、そんな気ははないよ。


「とにかく…その魔法は一応、勇者様が防具と認識しているものだけを、解除する魔法のようですが…」

「そう言われれば、そうだな」


女性には使いずらいが、戦闘では意外と役に立ちそうである。


「あと練度があがってくれば、上着だけ脱がしたり、下着も脱がしたり、コントロールできるようになるんじゃないでしょうかね…。なんか、ダメな成長をしている気がしますが」


ふむふむ、一応僕も成長しているわけだね。


「よっしゃ! とにかく、鍛錬を続けよう。もう一回、やるぞ!」

「え、ええ…」


ビッケは自分の体を守るかのように体を自分の腕で抱きしめてながら言った。(笑)そうして、夜は更けていくのだったーーーーーーー。



しかし、この魔法を全力でかけると相手の裸を見ることになるかもしれないのかー。

おえー。


「な、なんでござるか! こっちを見て気分悪そうな顔をするなでござる!」

『失礼だぞ、バカ―!』


もはや、江戸っ子口調ですらない。


「あの~早くしないとお城に間に合わないのでは~」


シールディが申し訳なさそうに言った。


「そ、そうだった! 急ごう!」


ぶっちゃけ、僕は魔法以外、あんまり成長していないのだーーーってわけで、出来ることをやろう。


「いくぞ、ナイル! 受けてみよ! 僕のライカ一刀流の妙技!」

「ちょ、何よそれ! 恥ずかしいからやめてー!」


ライカが視界の端でぴょんぴょん飛び跳ねて抗議しているが無視する。

アイアンソードを構え、スタスタとライルに向かっていった!!

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