1-13 魔・物・戦
「はっ!!」
ライカが叫び、トカゲの棍棒を弾き飛ばした。
ギャー! と、爬虫類らしい?、叫び声をあげ、怒りをあらわにする。
そして、その隙をついて、もう一方のトカゲ(めんどくさいので以後トカゲBとする)が、ライカに襲い掛かかろうする。
「ファイアー・ストーム!」
すでに、詠唱を終えていたビッケが、魔法で火の嵐を巻き起こし、トカゲABを風圧で吹っ飛ばす。
いい連携だった。
ググルゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。
ワニは2体の戦いを見ている。どう見ても、親玉はこいつだろうなあ。
「ライカさん、サポートとします!}
「お願い!」
シールディは、ネックレスを握りしめると、
「エレメント、ウィル、マナ流動、シャイニング・フィールド!」
突如、頭上にカッと、明るいライトが照らされた。LED以上に明るい! 電気がなくても大丈夫な世界だった!
グオ!!?
トカゲが目をつぶった瞬間をライカは見逃さない! ちなみに、僕は驚いて目をつぶってしまった。トカゲの気持ちも分からなくはない。ぐお!
「トランス、マナ流動、エアー・カッター!」
ライカが、2本のダガーをその場で振ると、刃が白い閃光となり、トカゲBを襲う。
すごい、飛び道具になった! 僕は、格ゲーで飛び道具がないキャラだと全然勝てないので、とてもうらやましく思う。やっぱ、飛び道具だね!
「ぐぎゃああああああああ!」
トカゲAの胸元にあたり、血しぶきが飛ぶ。まるで、花火のようにバッと、赤色が舞う。
その瞬間、僕はふらっと、座り込んでしまった。
「? 勇者、大丈夫?」
「いや、大丈夫だよ」
ビッケに心配された。
でもただの、貧血である。温室育ちがあだになったようだぜ!
それはおいておいて、トカゲBは、血しぶきを上げているが、まだ致命傷ではないらしい、再び目に光をともすと、復習せんとばかりに、ライカに襲い掛かる。
「ちぃ! しぶとい!」
「ライカさん! どいて!」
今度は、シルフの風魔法で、トカゲBをけん制する。が、根性か、たじろぐだけで、構わずに突っ込んでくる! 爬虫類の皮はぶ厚いようである。
グおおお!!!
「えいっ!」
しかし、正面に飛び出したシールディが、回し蹴りでトカゲBを吹き飛ばした!? 僧侶と聞いていたが、最近の僧侶は格闘技も出来ないといけないらしい。副業が許可されているんだろう。
と、緊張感ありありの戦闘を目の前で繰り広げられているが、僕の思考の中でどーでもいいツッコミが勝手に飛び交うため、雰囲気を大いに損なっていた。まあ、僕の中の話だから、いいんだけど。
「ちょっと、勇者!!」
「え?」
クィクィと、袖を引っ張られて後ろを見ると、ビジットの表情が固まっていた。
その後ろには・・・ワニが来ていた!!
「ワニっ――――――――!」
「キャー!!!」
しまった! こちらが、戦闘に見入っているうちに、気づかれない様に背後から回り込んだのか。知能があることを、軽視していた、僕の失敗だった。
「グオオオオオオオオオオ!!」
ワニは、にやりと笑ったかに見えた。手にした大剣を振り下ろしてくる!
やるしかない!
「逃げろっ!」
「いたっ!」
僕は、ビジットの体を吹き飛ばして後方に逃がすと、手にした槍で防御に入る。
「!? しまった! ワニが勇者の方へ行ってしまったわ!」
「やばいです。僕が行きます!」
ビッケが向かってきてくれているが、到底間に合わない。
ガキン、と槍の柄で大剣を受け止める! 手がしびれるような振動が走るが、槍を手放すわけにはいかない。こんなに…力が…力が強いとは!
しかし、ワニはいける、と踏んだのか、何度も何度も、剣を叩き込んできた!
ガンッ! ガンッ!ガンッ! ガンッ!
「グワワワワワワァァァァ!」
「っぐ! いたい!」
剣を雑ながらも槍で受け止め切れているが、いつ、落としてしまうか、わかったもんじゃない。さらに、押されて後方に、じりじりと下がりつつある。
「グハハハハハハ!!」
「こいつめっ」
ワニの剣筋に剣技はなく、力で何度も叩き込んできているだけだった。相手を圧倒していることに愉悦しているのか、笑っているように感じた。
馬鹿にされるのは、頭に、来るなぁ・・・。
「勇者様、気をつけて! そっちは、危ないです!」
「え?」
後方に視線を送ると、しまった! 崖になっている、しかも、ビジットもまだいるじゃないか。なんで、別方向に逃げていない!
「ど、ど、ど、ど、どうしよう!?」
「グハハハハハ!」
もはや、叫びは、嘲笑と変わり、剣の叩き込みはさらに、激しさを増した!
ガンッ、ガンッ。ガンッ!
剣力を受け止めていた手も、いよいよ痺れてきて感触がなくなってきた・・・。決断をしないと!!
横のラインに逃げ道はない、前方のワニを押し切る力もない。かといって、このままなら、ビッケが来る前にやられる可能性が高い。ならーーーーーー。
僕は、ワニの振り上げた剣の隙をついて、反転、ビジットの体を抱きしめ、そのまま走った。
「キャー! イヤー!」
「ごめん! いったん引くことにする!」
せーの、
「はああああああ!!」
僕は、叫んで、そのまま、暗闇の崖にダイブしたーーーーーーーーー。