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1-12 魔・物・出・現


「こっちです」


ビッケの杖がさらなる反応を示した。とにかく、ピコーンピコーンうるさかった。逆に目立つんじゃなかろうか。


「ビッケ、そろそろ、近いわ。消して」

「分かりました」


ひたすらに上がっていくと、ザーッと音が聞えてきた。元の世界でもなかなかないほど、大きな滝だった。水飛沫が飛び交っており、きっとマイナスイオンも多いはずだ、たぶん。


ごつごつした岩肌を上がっていくと、大広間に出た。


そしてーーーそこに、やつらはいたのである。


「シッー。やつらよ」

「いますね。村人の情報通り3体です」


僕らは、岩肌にかくれて、様子をうかがった。

僕は、やつらを目視した。


1体は、なんと大きなワニの化け物のようだった。が、しかし、直立で立っており、さらに、人間のように剣と鎧も装備している。あとの2体は、トカゲのようだった。こっちは、直立しているが、鎧は着ておらず、こんぼうのようなものを握りしめている。


ワニを先頭に、3体はゆっくり奥に歩いていく。


「やつらには知性はあるの?」

「知性ですか? あると思います。魔王からの命令を受けて、動くわけですから。個体差はあると思いますけど。今は、もちろん、魔王がいないので、人を襲うという目的だけで、活動しています」

「なるほど・・・」


僕は、人間以外の生物が、高い知性を持って活動しているのを見たことがなかったので、驚いた。しかも、その目的が人だなんて。恐ろしい。


「あいつらに、間違いないわ。ほら」


ライカの指を追うと、額を指さしていた。確かに、3体の額には、黒い宝石のようなものがついている。


「さて、どうしますか。やつらは、こちらに気づいていないので、先手はとれます」

「先に回り込んで罠をはりたいけど、回り込んでいけそうな道がないから、みんなで囲んで一気に、叩き潰すのがいいかな」


「とかげの2体をライカと僕で倒して、残った1体を2人で一気に倒しますか?」

「そうね。この戦力だと、そうなるわね。明らかに、ワニの方が強そうだし」


ワニとトカゲであってた。そして、何気に戦力外通知をもらった。


「というわけで、あんたはビッケの後ろについていって。シールディは、私ね。サポートよろしく」

「わかりました。お任せください。勇者さんも頑張って下さいね」

「わかった。やってみるよ」


仲間のズボンを脱がすことぐらいしかできない勇者ではあるがいいのだろうか。

持ち場につこう、と腰を上げた時、


「ん? あれ? ちょっとみなさん! あれ、見て下さい」

「ん?」


ビッケが、魔物近くの岩肌を指さした。そこに人影が潜んでいるのが見えた。

あれはーーー


「え?? あー! あれは、ビジットじゃないの!?」

「な、なんで、あんなところにいるのですか?」


確かに、村長に引き渡してきたはずなのに、僕らよりも先行している場所にいる。

どういうことだろうか。


そして、次の瞬間、最悪なことが起きた。ビジットがこちらに気がついたのだ。

岩肌から、出てくるなり、


「アッー! 見つけたわよ、勇者!! どうやら、地元の地理は私の方が詳しかったみたいね。ふっふっふ。さっきは、よくも私に痛い目をみせてくれたわね。さらなる新しい槍を先生から買ったから、今度こそ、やっつけてやるわ!!」


魔物に気づかないで、こちらに向かって大声で叫んだのだった。


新しい槍が売れて良かったね。先生。


って、それどころじゃなくて。

次の瞬間、ビジットに気がついた、魔物が吼えた。

ビギャァァァァァァァ! っと、叫ぶと、武器を振り上げて、ビジットに迫る!


「え? な、なに!? あ! 何なのこいつら! こっち、来るなー!」


ビジットは、魔物の存在に気づいて、こちらに向かって走ってくる。


「ちょっと、もう、なんなのよ! 作戦失敗よ。大迷惑よ」

「でも、ビジットさん、あの場所はやばいです。こちらよりも、先にやつらの攻撃を受けてしまいます」


「分かってる。作戦は、もう『突っ込むしかない』、よ!」

「なんかあんまり、いつもと変わらないですが。急ぎましょう」


こちらも、岩から飛び出して、走り出す。かくして、『作戦はなし』の、衝突戦となってしまった。


「シールディ! 補助、お願い!」

「はい! 『エレメント、シルフ! マナ流動、ウィンドウ・ファーストアシスト!」

「はいっ! サンキュー!」


シールディが、唱えた瞬間、ライカが光に包まれ、その速度をました。風をまとい、僕らを突き放し一気に、ビジットの場所まで駆けていく。


「ちょ、こっちに来ないでよー! うそー!!」

「グワォォォォォォォ!」


そして、いよいよビジットに追い付いたトカゲが棍棒を振り下ろした!


「きゃー!」

「っと!!!」


ガキンと、音がして棍棒は、その動きをダガーによって防がれていた。


「え?」

「本当に何やってるのよ。あっち、早く逃げて!」


ライカがぐぐぐっと、棍棒を受けて止めながら、言った。


「ありがとう、そして、ご、ごめんなさいー!」


こちらにビジットが駆けてくる。


ライカは、受け止めていた棍棒を、はじき返すと、バックステップで後方に躱した。その場所を、もう一体のトカゲの魔物の棍棒が貫いていた。

間一髪だった。


「さすがに、3体1は、ライカも苦戦します! 僕らも急ぎましょう!」

「はあはあ、もちろん、急いでるんだけど、ね…」


僕らも走ってはいるけど、まだ、ずいぶん距離がある。こりゃ、マラソンもしないと、体力面もダメみたいだった。


そして、僕らはビジットと合流した。


「話は後ですビジット。勇者様、この娘をお願いします!」

「わ、わかった!」

「シールディ急ぎましょう!」

「ええ!」


ライカは、2体の攻撃を躱しながら、時折ダガーで反撃をしているが、致命傷は与えられていないようだった。


「大丈夫、怪我はない?」


僕は、ガッとビジットの肩を掴んだ。


「大丈夫よ、ってっキャー! こんなところで、服を脱がさないで―!」


バチン! と音がして僕の頬に平手打ちが飛んできた。

ひ、ひどい。


「ちょっと、今のはふざけて心配をしたんだけど・・・」

「え、あ! ごめんさい、つい、条件反射で」


条件反射で、心配してくれている人にびんたをするようになってしまったらしい。酷いトラウマだった。


「とにかく、こっちに離れておこう。僕らに出来ることはないし」

「??」


ビジットは不思議そうな顔をした。強いはずの勇者が出来ることがない、と言ったからだろう。


「これぐらいの戦いなら、仲間で十分だってことさ! はっはっは」

「まあ、そうですよね。わかったわ」


僕らは、距離を置いて、3人の戦を見守ることにした。


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