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1-10 再・出・発

「戦闘は、だいたいこんな感じでいいですかね?」

「そうね。正直、こいつに教えること自体が意味不明だし、どこまで教えれば済むのかわからなくなってきたわね」


結論が出そうだった。


「もう、本番迎えれば、何とかなるんじゃないの?」

「そうですね。基本はマスターしたことですし」


してない、してない! できたことは、手を使わずに3人のベルトをすっ飛ばしたことだけだろう。

この力は、僕が来た元の世界からしてみればすごいことだが、こちらの世界ではデフォルトっぽい。


「何とか戦闘で迷惑をかけないように、ど、努力してみるよ」

「本当よ。努力して思い出してよ」


そっちは、無理だろう。そもそも、記憶はない。


「最後に、魔物についても共有しておきましょう」

「頼みます」


「今から討伐に行くのは、魔王軍の魔物です。普通の魔物ではありません」

「なるほど。種類があるわけね」


「そうです。魔王軍の魔物は、積極的に人間を襲ってきます。なので、害がでるので討伐します。逆にそうでない、魔物は襲ってこない限りは、スルーします」


「どう区別するの?」

「忘れてますよね。魔王軍の魔物は、額に黒色の宝石がついているはずです。宝石がない魔物は天然の魔物です」

「じゃあ、今から討伐に行くのは、額に黒い宝石が埋め込まれている方でお間違えないのね?」


「そうです」

「OK!」


「というわけで、なんだかんだでお昼過ぎちゃった。夜になると厄介だから、ちょっと急ぐわよ!」


僕らは、地図を見て山道に入っていった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ギラギラ日差しに照らされて、川沿いに山を登っていく。

ふう、日頃から運動をいていなかったので、きつくなってきた。

身体的には、まんま以前の僕だな。


ライカが先行し、後から僕らがついていく。

さすが、盗賊っぽい動きだった。


僕は、今の状況を冷静に考えてみることにした。


僕は、異世界の勇者と交代することになった。元の世界で僕は、世界に必要とされていないと思っていたので、それを受け入れ、この機会を逆にチャンスだと思い、頑張って生きてみようと考えたので、そこに悲愴な思いはなかった。

なかったが、この世界に来て、半日。状況は思わしくないことに気づいた。っていうか、気づくのが遅すぎたのかもしれない。


もともと別の人の人生と交代すること。これは、まあいい。普通にはありえないことだけど。


しかし、その時に前の環境をそのまま、僕が引き継ぐわけだが、記憶と才能、この世界ではスキルと言われているものが、まったく、僕に引き継がれていないことが問題だった。


環境は、前勇者は、世界を救った後、しかも、その後の世界にも干渉し続け、問題を抱えたり、恨まれたりしている。で、僕にはその記憶がさっぱりないのだ。


ゲームでも、他人のセーブデータを途中からやって、と言われたら混乱するだろう。それと同じだった。


そして、才能だ。勇者の奥義ってものが、全く使えない・・・。しかし、この世界の僕は、その奥義あってこそ、評価され機能していたわけだ。


そして、僕は記憶喪失ということになってはいるが、本当は魂(?)が入れ替わっているので、記憶が戻ることはない。しかし、ビッケたちは、記憶を戻すことを目的として行動していくだろう。


なので、僕がやるべきことは、この世界のことを知りながら、前勇者までの戦闘力を身につけていくこと。そして、前勇者のポストにまずは、違和感なく戻ることではないだろうか。


・・・。世界のことは、どんどん分かっていきそうな気がするが、戦闘力はだいぶ困ったことだ。破天荒な力でのし上がった前勇者なわけだから、それがまるまるなくなっている、ってバレたら、問題になるんじゃないだろうか・・・?


これは、少しずつ努力して、力をつけていかなくてはいけない。夜な夜な村の周辺をぐるぐる回り、スライムとかを、倒し続ければ、僕のレベルが上がるのだろうか? 


なんか、沈鬱な気持ちになってきたが、まずは目先の魔物退治に集中しよう。


「そろそろ、近づいてきましたね」


ビッケは、手に持った杖を天にかざした。

すると、ピコーンピコーンとレーダー音のようなものが鳴り響いた。突然の機械音がツボに入ってクスリと笑ったが、他は誰も笑っていなかった・・・。


「ライカ、こっちに方向を変えましょう」

「わかったわ」


僕らは、ずっと川沿いにそって歩いてきたが、そこから外れていく。


「待って!」


ライカが、僕らを制し、ダガーを構える。


「グルルルルル・…」


前方のしげみから、僕の背丈の2倍はあるだろう、大きな獣がゆっくりと僕らの前に立ちふさがったのだった。


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