別け合う姉妹
「ん…… ママ…」
長い夢を見ていた。
ユニオンファンタジーで自分が作ったキャラクター、アリシアの姿でいる自分の夢を。
随分とリアルな夢だったなぁ…
本当に自分がアリシアになったみたいだった。
プレセアもクラウドも、現実にいる人間みたいに動いて、お話する事が出来た。
ちょっと私が知ってるプレセアと違ったけど、話してて楽しかった。
そう言えば、女の子の村に行くはずっだったけ。
もし夢の続きが見れるなら、今度はちゃんと、夢から覚める前に村に行かなきゃ…
「ん…」
重い瞼が上げられない。
もう少しこのまま寝ていたい。
だって、頭の後ろに感じる柔らかい人肌が凄く気持ちが良いんだもん。
いつの間に居間で寝てたんだろう。
ママが膝枕してくれてるみたい。
いつぶりだろう、ママの膝枕。
小学校の時以来? ううん、中学の始まりの頃までしてもらってた気がする。
テレビとか見ながら寝落ちしちゃった時、気付くとこうやって膝枕しながら頭を撫でてくれた。
「ママ… いつもありがとう」
「… クッ… プップ…」
ん? 何、この笑うのを我慢してるみたいな声は?
「ママ?」
上半身を起こし、頑張って重い瞼を上げると、
「げっ! プレセア!?」
目と鼻の先に、必死で笑いを堪えているパンツ女がいた。
「は~い、プレセアママでちゅよ~ アリシアちゃん。クッ、グフッ!」
ぐぐっ… 夢じゃなかった。
夢じゃなかった衝撃は大きいけど、それ以上に恥ずかしい気持ちの方が爆大よ!
ママじゃない人をママって呼んだのは、小学校の担任の先生以来よ!!
しかもこいつに至っては、
「な、何してんのよプレセア?」
「何って~ 膝枕ですけど~ プレセアママによる愛のひざ… ブッ グフ!」
遊んでるし! 揶揄ってるし! 顔から火が出る思いだわ!!
こうなったら、
「クラウドとリーシャちゃんは?」
誤魔化してやる!
「2人は出発してさっき村に着いたとこよ。いつでも転移可能だけど、どうする? 行く?」
「もちろん!」
よっしゃあああ! 話を変えてやったぜ!
ざまぁみさらせプレセアあ!
「お姉様はまだ本調子じゃないから、転移魔法は私が使うわね」
「OK、っと、ちょっと待って」
「ん?」
私はドレスのスカートを掴み、千切ろうとした。
「何やってるのお姉様?」
「スカートを切って、膝から下の部分をあげるから、あなたはそれを腰に巻いて」
「別にいいのに」
「良かぁないわよ。人様の前で妹をそんな格好で歩かせられるわけないでしょ」
「そう?」
「そうよ!」
ぬぬ! それにしてもこのドレス、もの凄く丈夫ね。中々思うように切れない。
流石『黒曜のドレス』、重課金アイテムだけあるわ。
スクラッチ何回回して当てたことか。
「プレセア、ちょっとこっち側持って、お互いに引っ張って切り取るわよ」
「はいはい」
私とプレセアは、スカートの上と下の部分をそれぞれ掴み、反対方向に力を入れて引っ張った。
……
凄い絵図だ。プレセアの格好が格好なだけに尚更。
傍から見たら、プレセアが追い剥ぎにしか見えないよね。
「「えい!」」
ビリビリビリ!
ふぅ、若干斜めに切れちゃったけど、まぁ大丈夫よね。一応隠すべきとこは隠せるし。
「じゃあこれ巻いて、駄目よプレセア。女の子がそんな格好で外を歩いちゃ」
「ありがとう。でもお姉様、私も1つ言っていい?」
「いいわよ、何?」
「私だって外に出るときくらいちゃんと服を着るわ。今回は急な呼び出しで、その時間が無かっただけよ」
「そうなの? じゃあなんで… あれ? もしかして急な呼び出しって… 私の召喚の事… かな?」
「もしかしなくてもそうだけど。いつもならこっちの都合聞いてから呼び出すのに、寝てる状態で召喚するなんて信じらんないんですけど、召喚拒否も出来なかったんですけど」
げっ! 完全に私のせいじゃん!!
てか都合って何?
召喚って拒否できるの!?
あれか? ユニファじゃ好感度が低かったりすると召喚できなかったりしたけど、
ひょっとしてそれ、実は好感度とか関係無くて、トイレとかお風呂行ってたって事?
何その裏設定!?
「ご、ごめんなさい」
パンツのまま召喚して…
「よろしくてよ。さぁ、転移するわ、ママの手に掴まってアリシアちゃん」
「う、うん…」
「ママは?」
「はい、ママ…」
こうして、私はプレセアママの転移魔法でカーナ村に向かいました。