水難
クラウドは女の子を揺らさないように抱き抱えると、もう一度脈を取って、命の危険が去った事を私に教えてくれた。
「もう大丈夫です。心配ありません」
「そう、良かった…」
ホッと胸を撫で下ろし、心の底から思う。
助かってくれて本当に良かったと。
「ありがとうプレセア。あなたのおかげよ」
「じゃあお姉様、今晩は一緒のベットで寝ましょうね」
「何が? 何がじゃあなの!?」
怖い、この娘の方が怖いわ。 下着姿だから余計に怖いわ。
姉想いって何?
私が知ってる姉想いと違うんですけど。
「ん、んん…」
「アリシア様、意識を取り戻したようです」
気を失っていた女の子が、無事に目を覚ましたようだ。
「ええ」
クラウドに促され、意識を取り戻した女の子に近づくと、女の子は小さの声で、
「み、水…」
と口にした。
「OK、水が欲しいのね」
女の子はコクリと頷いた。
回復魔法は使えないけど、水魔法なら使える。
魔法で水を用意できるわ。
えっと、プレセアを見た感じ、詠唱はそこまで重要じゃないみたいね。
私は手の平を前にかざして、水の初級攻撃魔法『ウォーターブレス』を、詠唱を省いて呪文だけで唱えた。
それを見るや否や、クラウドとプレセアの
『え、お前何なやってんの!?』
そう訴えている顔を、私は生涯忘れないだろう
かざした手の平の前に、大きな水の渦が塊として現れる。
渦巻く水は、圧縮された激流。
増え続ける激流の水達は、直ぐに行き場を失い、塊から逃げる様に勢いよく放たれた。
たった今、消えそうだったところを、間一髪救った小さな命に向かって。
「げええええええ!」
……
……
……
「ご、ごめんなさい」
「お姉様酷くない? せっかく私が治したのに」
「… 返す言葉もありません…」
「じゃあ、今晩は一緒にお風呂ね」
「はい…」