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フリルな妹 

 あてもなく歩く私とクラウド。


 とりあえず森を抜ければ良いという、安易な考えでひたすら直進する。


 そんな中、私は森に生えている木を見て呆気に取られていた。

 

 流石ファンタジーの世界だわ、木がデカい。まるで都心にある高層ビルの様。


 土から地上に出て来ている、木の根ですら私の背より高いんだけど…


 アリシアの身長は175cm、リアルの私よりちょうど20cm高い、それに加えてヒールを履いているのだから180smを越えている。


 どんだけよって感じ。


 途中、襲い掛かる魔物と何度か出くわすも、全てクラウドが持ってる剣で即座に一刀両断。私も魔法を使って応戦しようとしんたけど、そんな事をする隙は無い。一瞬で魔物は切り倒されている。


 やだ格好いい、惚れ惚れするわ!



 2時間程歩き、ようやく森を出た。


 辺り一面の草原が視界に入り、少し離れた場所に一本の道が通っている。


 ここはユニオンファンタジーのどこら辺だろう?


 2次元画面と勝手が違うから分かりにくいなぁ。


 一先ず道へと足を運び、右に行こうか左に行こうか考える。


 と、待て待て。その前に考える事あるよ!


 私、これからどうしたらいいの?


 今更だけど、重要な事を考えてなかったわ。


 元の世界に戻らないと!!


 これでしょこれ! 普通は最初にこれを考えるでしょ。 


 はぁ… やばいよね。イケメンクラウドと念願のナイスバディを手に入れた事ですっかり頭に無かったわ。


 むしろ、この状況を楽しもうとしてたくらい。


「うーん。うーん」


 うーんうーんと考え込む。


 そんな私に、


「アリシア様」


 と、クラウドが声を掛ける。


「どうしたの?」


「あちらに人が」


「え、どこどこ?」


「あそこです」


 クラウドは私に分かり易いように、ある方向を指差した。


 その方向には、確かに道に上を歩く人影が見える。


 背の高さからして子供だろうか、やけに足取りが悪く、『ヨタヨタ』としている。


 かと思いきや、急にドサッ!と倒れた。


 受け身も取らず、顔面から一直線に。


 これ、絶対ただ事じゃないよね。


 嫌な予感がする。

 

「行くよ、クラウド!」


「はっ!」


 私達は全速力で駆けた。


 倒れた人影の所まで約500m、それを10秒足らずで走り切る。


 すご…


 超驚いた。運動能力半端ない!


 流石ゲームのキャラクター、アリシアのSPEEDの数値が320だったけど、この320を体現するとこんな速度が出るのね。


 でも、今はそこを気にしてる場合じゃない。



「あ……」


 嫌な予感が的中した。


 倒れていたのは女の子、それも10歳になるかどうかの幼さ。


 衣服は乱れ、全身は傷だらけ。靴を履いていないせいだろう、足の裏は豆が潰れて血まみれになっていた。


 呼吸は弱く、苦しそうに小さく唸っている。


 気を失っているみたいで、側にいる私達に気付いていない。


「酷い…」


 クラウドはゆっくりと女の子を抱えると、仰向けにし、傷口を確認した後、脈を取った。


「かなり衰弱しています。このままでは一刻を待つことなくこの子は…」


「そんな…」


 どうしよう。どうしよう。


 本当にどうしたらいいの?


 凄くリアルに赤い血が流れてる。


 ここは本当にゲームの世界なの?


 だとしたらこの子はゲームのキャラクター つまりプログラム…


 でも、もし違ってたら。


 ううん! そんなの関係ない。


 例え ゲームのキャラクタだろうと命は命。救える命があるなら救えるだけ救っちゃうのが私のポリシーよ!(ユニオンファンタジー限定)


「クラウド、あなた回復薬持ってない?」


「残念ながら、それに、この様態ですと薬程度ではどうすることも… ですがプレセア様なら」


「プレセア…」


 プレセア・ヴァージアス


 私が作ったNPCの1人。


 ウィザード(魔術師)であり、攻撃系魔法しか使えない私と違って、彼女は回復魔法と補助魔法を得意とするクレリック(聖職者)


 彼女が此処にいてくれたら、彼女の魔法でこの子を助けられるかもしれない。


・ちなみに、アリシア・ヴァージアスである私の妹であり、姉想いの可憐な少女という設定。


 ユニファだと、その場のPTパーティに居ないNPCは召喚魔法で召喚し、クエストやイベント等に参加させていた。


 ここがユニファの世界なら、魔法で彼女を召喚出来るはず。



「プレセアを召喚するわ」


 クラウドは静かに頭を下げ、私の言葉に応えた。


 …… 出来るだろうか…


 『召喚するわ』と口にしおいてなんだけど、私はまだ一度も魔法を使っていない。


 はっきり言って、召喚どうこうの前に魔法が使えるかどうかの段階。


 こんな事なら森で魔法の練習をしとけば良かった。



 ゴク…


 不安と緊張が喉を流れていく。


 今更後悔したところで状況は変わらないんだ。


 召喚出来なきゃ… この子は死んでしまう。


 一心に祈る。


 お願いプリセア、私達の元へ来て。


「主たる我われが、汝に命ずる。わ、我の使命を帯び、我の槍となれ… そして… えっと… その、出でよプリセア!」


 ブオオオオ!


 突如、風を帯びた光の塊が目の前に現れた。


 成功? 成功した? エフェクトがユニオンファンタジーと同じだから,成功だよね?


 詠唱を覚えてなかったから、少し8割(以上)端折はしょちゃったけど、成功って事でいいよね?


 胸がドキドキハラハラしている中、光がゆっくりと治まっていくと、徐々に人の姿が見えて来た。


 私アリシアに模した人形を抱えている、Tシャツに純白フリルのパンツだけを履いた、はしたない女の姿が。


「う~ん。むにゃむにゃ、アリシアお姉様~」


 何だこの女…


 淡い水色の髪をした、ミディアムヘアーのはしたいない女は、アリシア人形を両手両足で抱え込んだまま、『ゴロンゴロン』と寝返りを打っている。


 やだ、もしかしてこれが私の妹プレセア!? 


「ちょっ、ちょっと起きなさいよプレセア」


 ペシ ペシ


 頬を軽く叩きながら、私はプレセアらしき者を起こした。


 クラウドは目のやり場に困っているらしく、顔をパンツから逸らしている。


 身内の醜態かと思うと超恥ずかしい。


 一人っ子の私が、想い描いて作った妹はいずこ?


「むにゃむにゃ、あ! お姉様~」


 純白フリルのパンツ女は、私に気付くなり持ってた人形を投げ捨て、力強く私を抱きしめた。


 ナニコレ?


 姉妹の抱擁?



「プレセア、お願いがあるの」


「なぁに~ お姉様の頼みなら何でも聞くよ~」


 スリスリ


「う……」


 純白フリルは、私の胸に頬擦りしながらニタニタとしている。


 はっきり言って気持ち悪い。


 私の中で『あり』だったGLが『なし』になった。


 とういか、プレセアで合ってたのね。ほんとイメージと違い過ぎるわ。



 私は一旦強引にプレセアを引き離し(うお、こいつ力強!)、目を見て横たわっている少女の傷を治すようにお願いをした。


 なのにこの変態女は、


「え~ お姉様以外に私の魔力を使いたくな~い それもこんな汚いメスガキになんて尚更~」


 と、聞き間違いかと思うようなド汚い言葉を吐きやがった。


 ちょっと!


 聖職者じゃないんかい!


 姉想いの可憐な少女設定どこいった!?


 元の世界に戻ったら、課題に手を付ける前に『可憐』という単語を今一度ググる必要があるわね。


「いいからやりなさい! やらないと今後一切、私はあなたと口聞かないから!

(訳:2度とクリックしないから!)」


「え~~ やだやだ~~」


 今の言葉が効いたのか、プレセアはとぼとぼと女の子の前まで歩き、


「大地の聖霊よ、我が声に耳を傾け……   癒しの力となれ、ヒール…」


 女の子に右手で触れて、渋々、嫌々、だるそうに回復魔法をにかけた。


 パァァァ


 プレセアの右手から発光される、白く淡い光が女の子を包み込むと、傷はみるみると癒されて行き、弱く細切れだった呼吸は正常なものへと戻っていった。


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