状況を知る
スラリとした長い手足。
透き通るような白い肌と、腰まである淡い水色の髪。
肩と背中がガッツリ空いた黒のドレス。
ああ、間違いない、これは『アリシア』だわ。
「アリシア様。いかがなさいますか?」
すぐ傍に居た、見覚えのある銀髪のイケメン剣士が私に話しかけて来た。
それに対して、『そうね』とアリシアの姿で答える私。
いかがしますかと言われてもだね。どうしていいか分からんとですよ!
何なのこれ? あれか? あれなのか?
いわゆる異世界転移? ゲームのキャラでゲームの世界に来ちゃったのか私!?
「アリシア様?」
「え? ああ、ちょっと待ってて、今考えてるから」
「はっ!」
申し訳ありませんと、片膝を付く銀髪剣士。
この銀髪の剣士、ユニオンファンタジーで私が作ったNPCキャラクター”クラウド”に似てるんだけど…
(ちなみにクラウドの声は脳内で櫻〇さんに変換されていた。目の前の銀髪剣士は櫻〇さんの声とは違うけど、普通にイケメンボイス。高過ぎず低すぎずの甘い声、これはこれであり!)
「ねぇクラウド」
「はい」
「……」
「アリシア様?」
「お姫様抱っこ出来る?」
「お姫様抱っこ… ですか?」
知らなかったようなのでやり方を教えてやらせた。
20分後
「ありがとう。もう満足よ、降ろしていいわ」
「はい」
とりあえず彼が私の知っているクラウドだという事が判明した。
私の作ったキャラクターがこうして意思を持って動き、私と会話をしている。
うーん。
という事は、やっぱりこれはあれだね。
ここはユニオンファンタジーの世界で、私はその世界に来ちゃったんだな。
たぶん…
まるでテンプレのラノベ展開。
夢という可能性も考えたんけど、それは直ぐに否定された。
この、胸についてる2つの大きな脂肪によって。
あり得ない位ずっしりとした重量感、夢であるわけがない!
リアルの私生活に、全く影響の出なかった負荷とはまるで違う!
凄いなぁ… 世の中の胸の大きな女性はこんな重り付けてたのか、はっきり言ってめちゃ動きにくい。
重さもそうだけど視界も悪い。
ちょっと俯いただけじゃ足元が見えないよ、普段の感覚でいたら石とかに躓いてコケてしまいそうだ。
感触が気になって両胸を両手で持ち上げようとしたんだけど、クラウドが見ているので止めた。
さて、どうしたものか。
胸の感触は保留にするとして、今はまずこの状況を整理しなくちゃ。
クラウドの話によると、およそ3時間程前に、突然白い光に包まれて、気が付くと2人一緒にこの森に居たらしい。
その間、私はしばらく寝ていたそうで、起きるまで森に住む魔物から私を守ってくれていたみたい。
流石私の生んだ騎士、見た目だけじゃなくやる事もイケメン!
というか… 魔物居るの!?
普通によろしくない状況よね。 危険地帯に居るって事じゃない。
「クラウド」
「はい」
「森を出るわ、付いて来て」
「仰せのままに」
胸に右手を当て、頭を下げるクラウド。
やだこれ、超気持ち良い、リアル姫プレイだわ!