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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

虚影の王は彼女をあいしている

作者: 遠野九重

人物紹介


有沢慎弥:主人公。二ヶ月ものあいだソロでレベルアップに励んでいた。

     ユニークスキルは【ステータス異常無効】

     その他「影」にまつわるスキルを多数。

真川詩月:恋人。二ヶ月ものあいだパーティメンバーに虐待されていた。

角田律 :委員長。異世界に来てからはリーダーシップを発揮できていない、








 幼稚園のころ、夜中に強盗が入ってきた。

 妹が殺されそうだったから、その前に犯人をイスで殴りつけた。


 反撃されるのが怖いから、何度も何度も、ぐったりと動かなくなるまで。


 別に殺したわけじゃないのに、以来、父さんと母さんが視線は冷たい。


「おまえはなにかがおかしい」


 ずっとそう言われて、育ってきた。


 ……妹が危ない時、さっさと自分たちだけで逃げ出したくせに。






 * *






 ネット小説なんかを読んでいる人間なら、僕らの現状をたった三行で理解してくれると思う。


・クラスまるごと異世界召喚、レベルとスキルがあるよ。

・勇者と呼ばれ、八つの(エイト)地下迷宮(フォートレス)を攻略するよう頼まれました。

・一年以内に達成しなければ世界滅亡、達成すれば日本に帰れるそうです。

 

 いやはや、なんともありがちな話だよね。

 「想像できるものは必ずどこかの次元に存在する」だっけ、バシャールとかいう人の自己啓発本にそんな文句があった気がする。とはいえまさか「高校生が異世界に召喚され、勇者として戦う」なんて事態までは想定してなかっただろう。たぶん。


 

 僕らの一日はわりと単調だ。

 王宮内にきれいな寮を用意してもらってるんだけど、そこで朝食を済ませたらパーティを組んで迷宮攻略だ。

 昼ごろにお弁当を食べて、日が暮れる頃に帰ってくる。

 なんだか勇者らしさがイマイチというか、ぶっちゃけ鉱山労働者みたいな毎日と思う。

 

 ま、もともとハック&スラッシュとかローグライクなゲームが好きだったしいいんだけどさ。

 『El〇na』とか『トルネ〇』とか。

 

 

 さて、ここでひとつ訂正をしておこう。

 僕らの仕事である迷宮攻略だけど、必ずしもパーティを組む必要はない。

 経験値効率を考えてソロプレイ、というのもアリなのだ。


 実際、僕はそうしている。


 これは固有スキルツリーのピーキーさをレベルで補おうとした結果で、そのおかげかして最上位の実力者――『五聖剣』 (命名:この国の宰相さま、三十路なのに中二病)のひとりに数えられていた。



 でも、まあ、そういう背景はあんまり重要じゃない。

 


 ひとまず分かってほしいのは、はじめ、僕こと有沢慎弥(ありさわしんや)がまっとうに「勇者の使命」をこなそうとしていたこと。


 ――王様を言いくるめて気ままな冒険者生活を始めるわけでもなく。

 ――低ステータスを装って高みの見物を決め込むわけでもなく。


 「王様たちからいいように使われるモブ系クラスメイト」、小説で言うなら「その他大勢」のポジションだったことは強調しておきたいと思う。




 けれど、異世界に召喚されてちょうど60日目。

 王宮のてっぺんから真川詩月(まがわしづき)が身を投げて、僕がそれを助けて――やがて恋仲になっていった後。


 色々なものが、すこしずつ、変わっていった。






 * *






 僕と詩月が付き合うまでの過程は、また別の機会に語ろうと思う。

 なれそめ話ってさ、やっぱり話すのって恥ずかしいしさ。


 

 これから紹介するのは、詩月と、詩月に関わったある少女の物語だ。



 おそらく本人たちは気付いていないだろうけれど、二人はある部分においてよく似ていた。


 クラスメイトという「近しい、けれど見知らぬ他人」との関係性に悩み、自分の居場所を探していた。


 詩月には僕がいた。

 じゃあ、彼女には? 



 ――クラス委員長の角田律は誰を支えに、何を居場所にしていたんだろう?



 最終的に僕が角田さんに多少なりとも心を砕いたのは、きっと、そういう“詩月っぽさ”ゆえだろう。

 時期としては僕が異世界に来てから三ヶ月、詩月と付き合い始めてから一ヶ月ほどが過ぎた頃に遡る。


 

 思い出しながらの話になるからちょっと時系列が前後するけれど、ちょっと耳を傾けてほしい……。

 





 * *






<異世界に召喚されて90日目、詩月と付き合い始めて24日目 夜>






 詩月は病んでいるわけでも狂っているわけでもない。

 ただ繊細なだけだ。


 もしかするとそれはいわゆる「恋はもくもく(盲目)五里霧中、ああ僕は君に夢中だよ」的なサムシングかもしれない。

 けれどヒトは主観を介して世界と向き合うものだから。


 ――僕がそう考えてるからそうなんだよ。僕の中ではな。


 これ以上の結論は必要ないだろう。





「シンくんの小さい頃のこと、もっと聞かせてください」


 僕たちはいつも夜をゆっくりと過ごす。

 部屋の明かりを落とし、二人でベッドに寝転びながら話をする。


「幼稚園のころに裏山でキツネを見つけたんだ。足をケガしていてね、慌てて獣医さんのところに連れて行ったよ。そうしたら、本州にはあんまりいないはずだとか、エキノコックスとかいう寄生虫が伝染(うつ)るかもしれないとか……なんだかいろいろ難しい話を聞かされたっけ」


「……キツネは、助かりましたか?」


「うん、すぐに治ったよ。しばらくは家で面倒を見てたんだけど、ある日、急にいなくなっちゃったんだ」


「寂しい――ですね……」


「ただ、毎年秋になると庭先にドングリの山が届くんだよね。だからきっと元気でやってると思うよ」


「――――――――………………………………」


「詩月?」


 名前を呼んでも返事はない。

 見ると彼女は穏やかに寝息を立てていた。

 

 詩月はこんなふうに「寝落ち」することをいつも望んでいた。

 静寂の中で目を閉じると、孤独に押し潰されそうになるらしい。


 僕は、そういう人間らしい繊細さが羨ましかった。

 とても尊いと感じる。

 

 窓からはほのかな月光が差し込んでいた。

 僕は詩月の姿を眺める。

 

 小柄で、大人しそうな外見だ。

 首はとても白く細く、ちょっとしたことで折れてしまいそうな気もする。

 華奢。

 そんな言葉がよく似合う。


「ふぁ……」


 あくびが出る。

 僕も僕で、少しずつ眠くなってきた。


 ――だからユニークスキルの【ステータス異常無効】を発動させる。


 眠気とは自然な生理現象だけれど、このスキルはあくまで僕の主観に従う。

 僕が異常と感じるものをすべて打ち消してくれる。毒、麻痺、疲労――さらには死すらも対象になる。

 

 頭がサァッと澄み渡ってきた。

 むしろ寝れる気がしない。


 どうしてそんなことをするのかって?


 もしも夜中に詩月が目を覚ましたらどうする。

 そのとき僕が眠りこけていたら、彼女は絶対に寂しがる。泣いてしまう。

 

 だからずっと起きているんだ。

 何があってもいいように。


 

 とはいえ朝までボンヤリしているのは時間が勿体ないし、それはそれで詩月も気に病んでしまうだろう。

 だから僕はここでふたつのスキルを発動させる。

 

___________________________________


影分体(ドッペルゲンガー)Ⅴ】

 自分の影に実体を与えて操る。影の得た情報・経験は己のものとして還元

 その能力は本人のおよそ「1/6-スキルランク」程度

「スキルランク×2」時間持続

 また影を「スキルランク-1」体まで分割可能(数に応じて能力低下)

 本スキルはランクⅤまでしか取得できない

___________________________________

___________________________________


【マルチタスクⅣ】

 「スキルランク+1」個まで並列に思考が可能となる

 「スキルランク×2」時間持続

 次回発動には「10-スキルランク」時間のインターバル。

 スキルランクⅢからは魔法の同時多重発動も可能となるが、要【無詠唱】

___________________________________


 これによって僕は詩月のそばを離れずにダンジョン探索を行うという、一粒で二度おいしくって300メートルどころか600メートル級のグッドリッチコミットメント、略してグリコを達成できるのだ。すごいだろう。えへん。


 ちなみに一粒で二度おいしいのはチョコアーモンドで、一粒で300メートルはキャラメル。

 どっちもグリコ製、僕は日本にいないので代わりにみんな買ってほしい (ダイレクトマーケティング)。


 ともあれ僕はドッペルくんをダンジョンへと送り出す。


 詩月に向ける意識が一つ、ドッペルくん担当が……まあ、二つ。

 5-3=2

 余った二つは今までの戦闘の反省へ回しておこう。

 

 そうやって僕はクラスメイト達よりもずっと多くの戦闘経験を重ね、今もダンジョン攻略チームのトップランカーに名を連ねている。


 ま、別に日本に帰るモチベーションはないんだけどね。

 王様の覚えをよくしておけば、何かあった時に力を貸してもらえるかもしれない。

 ただそれだけの話だ。

 

 

「ん……シン、くん……」


 詩月の寝言。

 どんな夢を見ているのだろう。

 できれば現実以上に幸せなものであってほしい。





 

 * *






<異世界に召喚されて85日目、詩月と付き合い始めて19日目 朝>






 詩月はいつも食堂に行かない。

 他の人が喋っている姿を見ると、自分の悪口を言われているような気持ちになるという。


「いつもごめんなさい……」

「別にいいんだよ。むしろルームサービスっぽくてリッチじゃない?」


 だから僕はいつも厨房で二人分のごはんを受け取って、詩月の部屋まで運んでいる。

 今日はクロワッサンとハムエッグ、ハッシュドポテト。それからコーンスープだった。


「なんだかイギリスっぽいメニューだよね」

「でも、クロワッサンってフランス発祥なんですよ」

「へえ!」

 

 僕は思わず左手を激しく上下させた。

 みんな覚えてる? トリビアの泉って番組。

 メロンパン入れ欲しかったな。


「詩月はなんでも知ってるんだね」


 僕がそう言うと、詩月はちょっと照れくさげに俯いた。

 なんかこう、オクユカシサ重点、って感じだよね。

 

「あ、シンくん」

「どしたの?」

「顎のところ、クロワッサン、ついてます」

 

 詩月はしばらく迷ったような表情を浮かべ、やがておずおずと僕のほうへ手を伸ばした。

 細い指がクロワッサンの欠片をつまんで……詩月はそれを自分の口に入れる。


「……えへへ」


 彼女の中ではかなり大胆な行動だったのだろう。

 その顔は赤々と染まっていた。


 こういう姿を見るとやっぱり詩月もふつうの女の子だよなあ、と思う。


「ねえ、詩月」

「うん?」

「はい、あーん」


 甘い空気に便乗して、ハッシュドポテトをひとつ、その小さな口に運んでみる。


「んっ」


 ちょっと遠慮がちだけど食べてくれた。

 なんだか小さな幸せ。


 けれど、そこに。



 ――コンコン、コンコン。



 無遠慮なノックが割り込んでくる。


 ビクリ、と身を竦ませる詩月。

 

「ごめん、角田です。真川さん、ちょっといい?」


 それは女子の声だった。

 角田律。

 うちのクラスの委員長だ。

 眼鏡でおさげ、いかにもマジメそうな外見で――異世界に来てからは殊更そのスタイルにこだわっている。

 そうすることで周囲に「いつもと変わらない安心感」を与えている、とは本人の弁。

 

 実際のところ、自己回帰的な代償行為だろう。

 誰よりも安心を求めているのは、彼女自身だ。

 それに気付いているのか、いないのか。

 まあ角田さん自身の問題なので、なんかいい感じに軟着陸しますように。



 ――コンコン、コンコン。



「真川さん、寝てるの? ……寝てるならそれでいいけど」


 最初のノックから10秒も経っていないのに、もう角田さんは苛立ちを滲ませていた。


 そんなに嫌なら放っておけばいいだろう。

 彼女なりに「委員長」というセルフイメージを守るのに必死なのかもしれない。

 

「どうする? 僕が出てもいいけど」

「ううん」


 ちょっと不安げな表情のまま、首を振る詩月。


「せっかく来てくれたから、頑張って、みます」


 ベッドから立ち上がる詩月。

 僕はひとまずドアの影に隠れて【隠密行動Ⅶ】を発動させた。

 これを看破できるスキルの持ち主はまだいないはずなので、委員長はここに詩月しかいないと錯覚してくれるだろう。


 詩月がドアを開いた。


「おはようございます、角田、さん」

「おはよ、真川さん。朝は……部屋で食べたのね。気持ちは分かるけど、食堂に来たほうがいいと思うわ」

「……すみません」

「謝る必要はないわ。行動で示して、行動で」

「っ――」

「私はね、貴女のことを思って提案してるの。今は有沢くんがいるからいいかもしれないけど、彼だってどうなるか分からないのよ。もしもの時にどうするの? ひとりぼっちになったら誰も助けてくれないわよ? いい、明日から食堂に来て、みんなと喋って、パーティを組むこと。わかった?」


 早口で詰め寄る角田さん。

 その声はやや焦りの色が混じっている。


 冗談じゃない。

 何が「貴女のことを思って」だ。


 僕は角田さんの抱える事情を把握している。

 彼女はこのところレベルもスキルも伸び悩み、ついに『五聖剣』からも外されてしまった。

 だからダンジョン攻略以外での目に見える実績が欲しくてたまらないのだろう。


 もし本気で詩月のことを心配しているのなら、そもそも、こうして人前に出られなくなった原因を考えてほしい。

 詩月の元・パーティメンバー。

 「トモダチ」という言葉をタテに、危険な囮役や魔法の実験台を押しつけた外道ども。

 今もときどき悪いウワサを聞くし、委員長たるもの、まずはそっちに対処すべきじゃないだろうか。


 ……とまあそういう感じで僕は考えをまとめ、横から割って入ろうかなー、と思い始めた。

 

 でも、それより先に。

 

「いや、です」


 か細い声で、けれど、はっきりとそう言い切った。


「いつか、誰かとダンジョンに向かうかもしれませんけど、同じ学校のみなさんとは、絶対に、いや、です」

「あなたねえ、そんなんじゃ社会に出てもやっていけないわよ!?」

「社会って、どこ、ですか?」

「そりゃ日本社会に決まってるじゃない! 高校を卒業したら大学に行って、会社に入って――いろいろと大変なのよ!?」

「本当に、帰れると、思っているんですか?」

「……っ、こんなに現実の見えてない人なんてもう知らないわ! 勝手にして!」


 バタン、と。

 荒々しくドアを閉めて、委員長が去っていく。


 詩月は悲しげな表情で視線を左へと動かしていく。

 直接見えてはいないものの、委員長を追っているのだろう。


「シン、くん」


 やがて、僕に問いかけてくる。


「わたし、間違ってましたか?」

「ううん、そんなことはないと思うよ」


 詩月はちゃんと自分の意志を表明した。

 委員長はたくさんのウソをついた。本心を隠したまま他人をいいように動かそうとして――失敗した。

 

 ただそれだけの話だ。


「頑張ったね、詩月」


「……はい」


 詩月はふっと表情を緩めると、少しだけ膝を曲げた。

 上目遣いにこちらを見てくる。

 

「よしよし」


 お望み通り頭をぽんぽんと撫でると、嬉しそうに口元を綻ばせた。 






 ちなみに。

 あらかじめ言っておくけど、委員長が僕を殺そうとしたのは、たぶん、この件が遠因だろう。







 * *






<回想 日本にいたころ>






 昔、学校の教室でクラスメイトと喋っている詩月を見かけたことがある。

 いやまあ同じクラスなんだから当たり前なんだけど、もちろんこの時点では恋人でもなんでもなかった。

 

 ただ、今になって振り返ってみると、当時から彼女のことを意識していたような気がする。


 ――いつも辛そうに生きてる子だなあ。


 漠然と、そう思っていた。







 * *







<異世界に召喚されて99日目、詩月と付き合い始めて33日目 朝>








「奴隷を買いませんか……?」


 二人でダンジョン探索から帰ってきた夕方、詩月がそんなことを言いだした。


「だいたいみんな4人パーティですし、盾役とか支援役とか、あとひとり増えるだけでもかなり変わってくるかな、って」


 それは、どうだろう。

 基本的に僕の戦闘スタイルは仲間を必要としない。


 【影分体(ドッペルゲンガー)Ⅴ】と【マルチタスクⅣ】を組み合わせた、自分自身との連携攻撃がメインになっている。

 ここにさらに加速系スキルを重ね掛けし、零距離からの魔法発動で敵を仕留めていく。

 

 盾役(タンク)は必要ないし、いざとなればドッペルくんを犠牲にすればいい。

 そもそも僕自身が【ステータス異常無効】によって不死身の肉壁になれるのだ。

 「ダメージを受ける」という状態そのものを異常と認識してしまえば、この身体は絶対に傷つかない。


 支援役(バッファー)もいらないだろう。

 僕は僕自身に必要な能力強化系スキルをすべて取得している。

 だいいち支援魔法って、術者の集中力しだいで効果にちょっとしたブレが生まれるんだよね。

 高速戦闘を主とする僕にとっては、その「ブレ」が命取りになりがちだ。

 

 うん。

 僕個人の意見としては、奴隷の購入にメリットを感じない。

 僕と詩月さえいればそれでいい。

 ん?

 詩月の役割は、って?


 すごいぞ、ものすごいぞ。

 なんと近くにいるだけで僕のやる気が何倍にも増幅されて、なんかこう色々といい感じにそれっぽいんだ。

 チア部の可愛い女の子がいるだけで運動部の連中はホームランとかハットトリックをキメたりするだろ?

 つまり詩月はバフ。

 相手は死ぬ。

 むしろ通常の三倍くらいの速度で僕が出て殺す。

 カワイイヤッター。


 ……コホン。


 ただ頭ごなしに詩月の意見をはねのけることはしたくない。

 

 人間というのは因果に生きている。

 なにかしらの過去の経験が現在という状況のもと再解釈され、感情というブラックボックスを通ったのちに言語として出力されるのだ。

 

 詩月の中で何がどうなって「奴隷」というワードが生まれたのだろう?

 そのへんを探っていけたらいいなー、と思ったり思わなかったり。

 まずはもう少し彼女の意見を引き出す方向でいってみよう。


「とりあえず今から街に出て、奴隷商のところにでも行ってみない?」


 勇者の中には奴隷を買ってダンジョンに連れて行ったり、あるいは身の回りの世話をさせている人もいる。

 たぶん頻度は四人に一人くらい。

 こういうのって青少年の教育によくない気もするけど、魔物と殺し合いをしてる時点ですでにしてブラックアウトだろう。

 しかも『五聖剣』の中には他国との戦争に駆り出されている人もいるしさ。

 僕たちの青春はゴールデンならぬグレイタイム。

 どうでもいいけど名古屋のグレイテストヒッツ、もう一回行きたかったな。

 好きなんだ、レコードの音。

 それはともかくとして。

 

「えっと……」


 詩月はちょっと困ったように微笑んだ。

 自分から言い出してみたものの、いざ現実味を帯びてくると戸惑いを覚えてしまうらしい。


「ちょっと保留しても、いいですか」

「オーケー。ちなみに奴隷は何人ほしい? 男の子? 女の子? いっそサッカーチームでも作ってみる?」

「なんだか、赤ちゃんの話みたいです」


 クスッと表情を和らげる詩月。

 それから、少し真面目な顔になって。


「……急に変なことを言いだしてごめんなさい」

 

 小さく、頭を下げた。


「ちょっと前に、角田さんの言ったことを覚えてますか」

 

 どれだろう。

 角田さんはいわゆるスランプみたいなものに陥っていて、『五聖剣』から外されてしまった。

 その苛立ちの捌け口として詩月をロックオンしたらしく、最近、僕らに色々と言ってくることが多い。


「シンくん以外ともパーティを組むべきだ、って」


「ああ、そういえばそんなこともあったっけ」


 懐かしい。

 ちょうど二週間前だったろうか。

 朝っぱらから詩月の部屋を訪ねてきて、角田さんは延々と説教をブチかましてくれたっけね。


「でも、やっぱり他の勇者のひととパーティを組むのは、怖いから――」

「奴隷でリハビリ、ってことかな」

「はい……」


 ああ、そういうことか。

 納得した。

 

 現代日本にいた時、詩月はいつもうそ笑いの人間関係に生きていた。

 加えて異世界ではパーティメンバーから「トモダチ」という単語をタテに辛い役割を押し付けられていた。


 そのせいだろう。

 詩月は他者との距離感が壊れている。

 言語化可能な不変の関係性。

 相手との間にそういうものを求めがちだ。

 

 そういう意味じゃ「奴隷」ってのはとんでもなく分かりやすい。

 主人を傷つけることもないし、リハビリにはぴったり……かどうかは微妙なんだよね、コレ。


 人間と人間が関わればそこに摩擦が生まれる。

  

 うーん。

 ま、なるようになるか。


 ――ものごとはそうすべきなら、自然とそうなる。


 レコード好きだったじいちゃんはいつもそう言っていた。

 でもって悔しそうに「こいつ(レコード)が廃れていったのも仕方ないんじゃ……」と呟くのだ。






 僕たちは国から特殊なブレスレットを支給されていて、これは倒したモンスターを自動で素材化して収納してくれる。

 ダンジョンから帰ると近衛兵の詰め所に向かい、そこで戦果を納めることになっていた。


「キマイラ変種の皮と鬣、エルダーリッチの大腿骨に――」


 部屋一面に並んだ素材を、事務員のタチスさんがひとつひとつチェックしていく。

 高ランクの【鑑定】持ちなので、その眼に狂いはないだろう。


「おいおい、コイツは黒鎧竜(バハムート)の魔核じゃねえか! 相変わらずおまえさん、気の狂ったような戦果だよなあ!」


「そういうタチスさんこそ、いつもながらオーバーリアクションですよね」


「馬ッ鹿、竜種の魔核とかマジでレアもんなんだからな。……な、なあ、コレ、こっそりオレのもんにしていいか?」


「みなさーん、ここに横領犯がいますよー! ちかんよー、ごうかんまよー」


「こうなったらしかたねえ、オレは男でもいけるっていうか男のほうが好きなんだ、グヘヘヘヘヘ。名前こそタチだが、性癖はウケだからなウケケケケケケケ。捕まっちまうまえにイイ思いをさせてもらうぜー!」


「やめろー、いやーっ、ぐわーっ!」


 もちろんジョークだ。

 僕らのコントは下品かつ下劣かつ下らないので有名だけれど、部屋のすみっこで詩月がクスクス笑ってるからそれでよしとしよう。

 

 タチスさんはニヤリと口の端を釣り上げた。

 僕もニヤリと同じ表情で返す。

 10歳ちかく年が離れているけれど、そこには不思議な友情がある……と思いたい。

 

 あ、ちなみにこの人、表向きは「近衛騎士団の事務員」をやってるけど、裏では「超S級魔導師」だったりします。

 なにこの本当にあったよ中二病設定。

 宰相さまも宰相さまでこのごろは執務中に「静まれっ、わたしの右腕ッ……!」とかやってるらしいし。

 本当に大丈夫だろうか、この国。

 色んな意味で行く末が心配だ。


 ともあれ今日もトップクラスの戦果だったらしく、僕と詩月には金色の食券が渡された。

 僕らの夕食は出来高払いだ。

 たくさんの素材を納めれば納めるほどいいものを食べられる。

 そのへんを逆手にとって悪さをしようとしてる連中もいるみたいだけど、まあ、こっちには関係ない。


 僕と詩月はホクホク顔で詰所を出て――そこで、とある四人組に出くわした。


「……っ、オマエらかよ」


 いかにも粗野な雰囲気の、太田荘司。


「シヅキ、あんたまだ媚び売って寄生してんの? 恥ずかしくないの?」


 太田の恋人で、いわゆる「ハデ目な子」の笹川優花。


「ほーんとよかったですねー、シヅキさん。やさしいやさしい王子様に助けてもらって。そのために毎晩どんなことをしてるんですかー?」


 でもって笹川の取り巻き筆頭、半田ひな。


「……」


 最後が首輪に繋がれた少女。

 全身傷だらけの狼人だ。垂れ下がった青い尻尾から血が滴り落ちている。

 その表情は昏く、目には精気というべきものがまったく感じられなかった。

 ……詩月がパーティから抜けたものだから、代わりの囮役として奴隷を買ったわけか。


 僕らが道を開けると、太田たちはこれ見よがしにため息をついて詰所に入っていく。

 

「詩月、行こう」


 俯いている彼女の手を、僕はゆっくりと握った。

 

「……はい」


 反応は、どこかにぶい。

 かつてのことを思い出しているのだろう。

 詩月は自分の中に閉じこもってしまっていた。






 * *

 





<回想 詩月と付き合うまでのこと>






 少し、過去の話をする。

 これまでにもまして話が前後するけど、そこは何とか許してほしい。

 ほら、10年くらい前にアニメ化されたSFめいた憂鬱だったり退屈だったり溜息だったりするライトノベルもそんな感じだったよね。

 ……驚愕の続刊ってちゃんと発売されたのかな。まあいいや。


 異世界に飛ばされてから、最初の二ヶ月。


 僕はひたすらユニークスキルの【ステータス異常無効】をフル活用し、ほとんどの時間をダンジョンで過ごしていた。

 空腹も眠気もついでに寂しさも、すべてを無効化してレベリングに励む毎日。


 おかげで他のみんながどうなってるかなんてほとんど知らず、


「有沢くん、もうちょっと周囲に興味を持った方がいいんじゃない? 人間ってのはひとりじゃ生きられないのよ?」


 当時まだ『五聖剣』のメンバーだった角田さんからは、そんな風にたびたび注意を受けていた。


「もし辛いことがあるなら委員長の私に相談してね」


 暖かい言葉。

 今の僕にとっては詩月がすべてだけれど、かつて角田さんは僕を気にかけてくれた。

 その一点でもって、彼女が本当に追い詰められたときは手を貸そうと心に決めている。


 ともあれ、あの頃の僕は全くと言っていいほど自分のレベルにしか目を向けていなかった。

 もしも。

 僕がほんの少しでも周りを気にしていたら、どうなっていただろう。

 詩月はあそこまで追い詰められなかったかもしれない。


 当時、詩月は女の子だけの4人パーティに所属していた。




 他のメンバーはというと、笹川優花と半田ひな、そして鯛谷(たいや)美玖。

 鯛谷さんはいわゆる「笹川の取り巻きその2」で、外見はいわゆる清楚系。

 いちおう、僕の元恋人でもある。

 ま、異世界に来て3日目にフられたけど。


「有沢くんと今の関係でいても、私にはメリットないから」


 最大の致命傷はユニークスキルの地味さ。

 だって【スタータス異常無効】だしさ。

 死すらも打ち消せるなんて、誰が想像できるだろう? 

 

「私、太田くんと付き合うことにしたわ」


 一方で太田荘司のユニークスキルは【創造者の左手】という。

 左手で持てるサイズと重さまでだけれど、現代の品を生み出せる。

 ペプシコーラも化粧品も拳銃も、なんだって使い放題だ。


「わかった。話はそれだけかな?」

「……文句、言わないの? 少しは聞くけど」

「ないよ、じゃあね」


 この時の僕は、自分でも気持ち悪いくらい、ショックを受けていなかった。

 それがもともとの精神性によるものなのか、無意識のうちに【ステータス異常無効】を発動させていたのか。

 分からないし、永遠に分からないままでいい。

 

 次に浮かんだ感情は、身軽さ。

 「よーしこれからパパじゃんじゃんレベル上げしちゃうぞー」なんてルンルン気分だった。

 

「――有沢くんって、本当の意味で誰かを好きになったこと、ないでしょ」


 ただ、背中に投げつけられた呟きはずっと耳に残っている。

 えっと。

 指摘は指摘として真摯に受け入れるけど、それはそれとして実利で恋人を選ぶひとに言われたくないです。

 妖怪ドッチ・モ・ドッチな案件じゃないだろうか、これ。


 ……ごめん、余談が過ぎたね。


 ともあれ詩月はその三人とパーティを組んで……徹底的に使い潰されていた。

 彼女のユニークスキルは【分度系】、自分の体温を分け与える優しい力だ。

 戦闘には向かないし、本来なら後方支援に回すべき人材だったと思う。


 でも、笹川たちはそうしなかった。


「トモダチだから支え合うもんっしょ」


 とか。


「トモダチだから助けるのは当然じゃない」


 なんて言葉で遠回しに脅迫し、詩月へと危険な役目を押し付けていた。


 やがて詩月はその扱いに耐えかね、王宮のてっぺんから身を投げた。

 偶然にも僕が通りかからなかったら、たぶん、彼女は命を落としていたはずだ。


 これ以来、僕は詩月とパーティを組んでいる。



 一方、詩月が抜けたあとの笹川パーティだけど、ほどなくして鯛谷が帰らぬ人になった。


「私は絶対に死なないわ。【高速再生】があるもの」


 本人はそう豪語していたけれど、いやあ、世の中って何が起こるか分かったもんじゃない。

 恐いね。

 ちなみに詩月をいちばんキツく苛めていたのは鯛谷だった。

 次が半田で、最後が笹川。

 取り巻きカーストの下っ端が主犯格だったってのは、なんかこう、人間関係の闇を感じずにいられない。


 でもって残ったのは笹川と半田だけ、気が付くとそこに太田荘司が加わり、今では奴隷の少女を入れての4人態勢というわけだ。これっていわゆるハーレムパーティ? いまいち羨ましくないけど。






 * *






<異世界に召喚されて121日目、詩月と付き合い始めて55日目、ついでに寮が爆破されて7日目 昼>




 僕らはハイヴォリア王国というところでお世話になっているのだけれど、このたび北部のリベラ公爵とかいう貴族が反乱を起こしたらしい。


「公爵ンとこには、おまえさんと同じ異世界人が転がり込んでるらしいな。ほら、初日に『自分のユニークスキルは弱すぎるから出て行きまーす、世界の危機とかしりまっせーん』とか言い出したヤツだよ。悪い、名前、ド忘れしちまった」


 ポリポリ、と申し訳なさそうにほっぺたをかくタチスさん。

 ちなみに今日は眼鏡を外している。裏の顔、「超S級(以下略 モードだ。

 僕を初めとした『五聖剣』には、ときおりダンジョン外での戦闘任務が舞い込んでくることもあった。


「天原ですよ、天原正樹」


 懐かしい名前だ。

 日本にいたころ、正樹とはよく深夜アニメとかニコニコ動画の話題で盛り上がったっけ。

 FPSやらロボゲーのネット対戦でもいいライバルだった。


 異世界にきた当初は正樹とパーティを組むつもりだったんだけどな。

 なのに気づいたら一人で旅立ってて、そのまま行方知れず。

 消息がつかめたのは嬉しい。

 

「その……なんだ、シンよ。今回の作戦だが、司令部からは『外れても構わない』なんてお達しが来てる。マサキとは仲がよかったんだろ?」


「少なくとも僕は一方的に親友と思ってます。向こうはたぶん、腐れ縁扱いでしょうけど」


「……おまえらの関係はよく分かった。オレもそういうダチがいるからな。シン、悪いことは言わねえ、今回はフケちまえ」


「いえ、仕事は仕事としてやりますよ」


「おまえさんはウチの国にかなり貢献してくれてる。この程度じゃ評価は下がらねえぞ」


「ここで反乱を潰しておかないと、めぐりめぐって詩月に害が及ぶかもしれませんよね。この前のテロも公爵の差し金でしょう?」


 それは七日前のことだ。

 まだ夜も明けきらぬ時間帯、僕たちの住む宿舎が突如として爆発・炎上した。


 隠密性の高い魔導爆弾によるもので、この時、勇者の一人が命を落としている。

 委員長、角田律だ。


 詩月は無事だったけれど、僕が居なかったらどうなっていたことか。


「だからここで鎮圧します。正樹が邪魔をするなら押し通るまでです」


「……なんつーか、おまえさんは極端だな」


「いきなり異世界に拉致されて四ヶ月も戦わされればそうなりますよ」


「他の連中はもうちっと悩んだりするもんだよ。シヅキだったか、あの子がおまえさんにとって、いい意味でも悪い意味でも人間性の要なんだろうな……」


「自覚はしてます」


 小さい頃から、「おまえはなにかおかしい」と親に言われ続けてきた。

 異世界に来て、何がおかしいのか自覚した。

 僕は理性によるストッパーが緩い。

 いや、意図的にタガを外せる、というべきか。

 

 だから二ヶ月に渡って迷宮に引きこもるなんて無茶を繰り返せたわけだ。


 詩月に出会わなかったらきっと僕はキラーマシーン的なアレになり、やがてキラーマジンガ的なモノになっていただろう。

 ドラクエ6のヤツはトラウマで、トラウマを乗り越えるためにいま僕はトラウマそのものになる――変身!

 ごめん上の一行は見なかった方向でお願いします。

 なんかこう、格好いいセリフをいいたかっただけでした、ごめんなさい。


 ちなみに変身系のフレーズで僕が一番好きなのはVITALIZE(ヴァイタライズ)で、このネタが通じるのは正樹だけだった。

 悲しい。

 


「ところでよ、シン」


「なんですか?」


「前のテロで死んだ、その、リツって子だったか。メガネでおさげの」


「もしかして好みのタイプでしたか」


「いや、オレはもっとエロい方がいいな。色街のエリナちゃんとかこう……ってそうじゃねえ。あのリツって娘、おまえさんはどう思ってたんだ?」


「どう、って……ええと、別に」


「そうか」


 コホン、と咳払いするタチスさん。


「こいつはオレの直感みたいなもんだが――あの娘、公爵家と内通してたんじゃねえか?」


「証拠はありますか?」


「ねえよ、これっぽっちも。他の工作員どものアレコレは出てくるんだがな」

 

「それって単に彼女は無関係だった、ってわけじゃ――」


「分からん」


 うすっぺらい表情のまま、タチスさんは肩をすくめる。

 ただ、その瞳はまっすぐに僕をとらえている。


「ただ、オレの予想じゃ、おまえさんが色々やったんじゃないかと思ってる」


「つまり、僕も公爵家側の人間と?」


「いや、それはない。断言できる。おまえさんは行動原理がハッキリしすぎてるんだよ。あのシヅキって娘のことしか考えてねえだろ?」


 よく分かってるじゃないか。

 僕は無言のまま頷く。


「こいつはオレの邪推なんだが」


 最後にタチスさんはこう言った。


「おまえさんは何らかの思惑でリツ・ツノダを殺して、テロに巻き込まれたように見せかけた。その罪滅ぼしとして公爵家との繋がりを消してまわっている。だから今回の任務も引き受けた――なんてな」




 んー。

 フィナルアンサー?






 ……。



 …………。







 残念。

 そこそこ惜しいといえば惜しい、だろうか。







 * *






<異世界に召喚されて114日目、詩月と付き合い始めて48日目、寮が爆破された日 朝>

 





 この数日、詩月はひとりで寝るようになっていた。

「いつまでもシンくんに縋ってばっかりじゃ、ダメだと思うんです」


 僕もその気持ちを汲んで、夜は自分の部屋で過ごすようにしている。


 とはいえ本当のところ、詩月は完全にひとりっきりじゃないんだけどね。

 彼女の部屋には一匹の黒猫がいる。

 僕がスキルで作ったものだ。


___________________________________


【影群体Ⅹ】

 同時に「スキルランク×100」体まで小動物型の黒い生物を生み出せる。

 これらはスキル所持者の「1/11-スキルランク」ほどの能力を有する。

 持続時間は無限。

___________________________________


 こうして生まれた黒猫の1匹が、いま、詩月の飼い猫になっている。

 「ペットが恋人」ならぬ「恋人がペット」

 微妙なニュアンスの差が伝わるだろうか。


 ともあれ詩月が夜中にグスグス泣いていればそれが分かるし、実際、あわてて彼女のところに駆けつけたのも少なくない。

 っていうか、毎晩だ。

 別に迷惑じゃない。どうせ僕はずっと起きてるしね。

 ドッペルくん部隊 (自分と同レベルの影を4体まで出せるようになった)をダンジョンに突っ込ませつつ、部屋でここまでの戦闘記録を書き残したりしている。……コレ、軍に売ったりするとお金になるんだよね。


 次の儲けで詩月に服でも買ってあげようと考えつつ、「てってってー、てってっててー♪ てってってー、てってっててー♪」とハミング。

 いやあ、筆が進むこと進むこと。

 今晩中にも書き上がるかなー、なんて皮算用をしていたら。


「あっ……、がっ……!」


 突如として、胸から刃が生えていた。

 はっ。

 これはもしかして10年ほど前の二次創作系転生もので流行った、身体が剣でできていてアンリミテッドに伝説の武器を生み出せるけど書き手のファンタジー知識が問われるからわり使いづらいあの能力の目覚めとかだろうか。

 

 んなわきゃない。

 背後から刺されたのだ。


 痛みに関しては即座に無効化している。ついでに死も打ち消した。


 とはいえ【ステータス異常無効】の真価は伏せておきたいので「うっ……まさかこの僕が……!」なんて感じにそれっぽいセリフを吐いて、椅子から転げ落ちて見る。ついでに下手人の顔を確認。


 青いしまぱんだった。


 いやごめん。

 だってスカート姿だったし、つい。

 そのまま視線を上にずらすと、角田さんの顔が見えた。

 彼女のユニークスキルは【任意転移】、まあ要するにワープだ。

 ワープ酔いが激しかったと思うけど、それを乗り越えて暗殺を実行したんだろうか。

 すごい。


 きっとものすごい努力とかを重ねた末の結果なんだろうけど、にもかかわらず、彼女は別に嬉しそうでもなんでもない。


 むしろかなり動揺している。

 まるで無関係な第一発見者のような真っ青ぶりだ。


 いや、これをやったのは君だからね?


 ガンダムのオープニングで「人類は自らの行いに恐怖した」とか言ってるけど、アレを立案した連中は別に恐怖してないからね。

 ジオンの上のほう、わりと平然としてたじゃん。

 あ、話が逸れた。


 ともあれ、人間、殺ったことには責任を持つべきと思うんです。

 いやまあ僕は死んでないけど。


 ヒトの命を奪っておいて、被害者面とかちょっとどうかなー、と。

 僕などはそう愚考いたします、はい。


「あ、あなたが、悪いのよ……!」


 えっ、ごめん。


「いつもいつも真川さんを甘やかすから、あの子がどんどんダメになっていって、わたしがどれだけ注意しても、聞いてくれなくなって――」


 なるほど。

 つまり「子供に対する教育方針の違いが原因で起こった殺人事件」ということか。

 まあ僕は角田さんと夫婦でもなんでもないし、結婚するなら詩月が一択、んん、これ以外はありえないですぞ、だしなあ。

 ううむなんだか僕が寝取られた気分。


「『五聖剣』には戻れないし、みんなは好き勝手するし……わたしは、学年をまとめようと頑張ってる、のに――」


 根本的な疑問なんだけど、学年をまとめる必要があるんだろうか。

 ダンジョン攻略の要である『五聖剣』に関して言えば連携はバッチリだ。

 他の人たちも大きなトラブルは起こしてないし、この国の宰相がいい感じにリーダーシップを発揮してくれている。

 宰相は中二病ぽいのが玉に瑕だけれど、裏を返せば十代の心を忘れてないわけで。

 ……ぶっちゃけた話、すでに学年はまとまっている。

 

 だから意地悪な言い方をすれば、角田さんは「自分を頂点として学年をまとめたい」だけ。

 それが叶わなくて――僕に八つ当たりしているのだろう。

 

 迷惑この上ないけど、まあ、他の勇者じゃなくてよかった。

 僕なら死なないしね。

 

「でもいいの、私は、私の居場所を見つけたから。……みんなみんな灰にして、公爵様のところに行くわ。ふふっ、ふふふふふ――」


 なにやら僕の部屋の隅で、カチャカチャと機械を弄り始める。


「全員は殺せないでしょうけど、爆弾が『五聖剣』のところにあったとなれば大混乱よね……私を馬鹿にするからいけないのよ、私を……」


 

 よし。

 だいたいわかった。


 また北のリベラ公爵か。

 あの人、ほんとに暇だよね。


「八つの地下迷宮を生み出したのは、ハイヴォリア王自身である!」


 とか。


「迷宮を攻略できなくとも世界は滅びん! 真の目的は勇者の力で世界を手に入れることなのだ!」


 とか。

 

 まあそんなことを喚いては、何かと勇者を引き抜こうと画策している。

 いやまあネット小説のテンプレ的にはリベラ公爵が正義だったりするんだろうけど、さ。

 ただ公爵も公爵で勇者の力でクーデターを起こそうとしてるあたり、どうにもこうにも胡散臭い。

 召喚! 妖怪ドッチ・モ・ドッチ! ブーメランアタックだ! ……と言いたくなる。


 ま、どうでもいいさ。


 僕はただ、詩月の望みを叶えるだけだ。

 彼女が「こんな世界は滅びてしまえ」と願うなら、僕はその日のうちにすべての勇者の首を落とすだろう。

 迷宮攻略に失敗しても世界が続くなら、僕自身の手でそれを実行する。

 

 逆に「日本へ戻りたい」と言われれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、僕はドッペルくんとともに全力で迷宮攻略にかかるつもりだ。


 つまり間接的ながらも僕は世界の命運を握っていて、その采配は詩月の心しだいなのだ。





 僕は世界を詩月に捧げている。




 

 うわっ。

 僕って重い。

 メンヘラだよメンヘラ。


 そういやメンヘラって何の略だっけ。

 メンタルヘラス?

 やべ、減っちゃった。

 こういう時にネットがあれば便利なんだけどな。


 誰かそういう感じのユニークスキルを持ってたはずだし、後でちょっと訊きに行こう。

 

 

「ふふふふふふ……」


 はてさて、角田さんは着々と爆弾のセット作業を行っている。

 ワンタッチで起動できるようなタイプは……持ち込みが難しかったのだろうか。


 というかさー。

 角田さん、僕がちゃんと死んだか確認しようよ。

 相変わらずツメが甘いというか、雑だなあ。


 僕は【隠密行動Ⅹ】を発動させる。

 角田さんは【気配看破Ⅶ】しか持っていないから、こっちには気付けない。


 背後に忍び寄って。


「うーらーめーしーやー、裏の飯屋は、うらめしやー」


 とっても頭の悪い俳句を囁きかけてみた。


「っ!」


 ビクッ、と身を強張らせる角田さん。

 そこからすぐにナイフを振るってきたのはさすが元『五聖剣』だろうか。

 僕は左の頚動脈を切り裂かれていた。


 けれど、まあ、【ステータス異常無効化】だ。


「うそ……っ!」


 戸惑う角田さん。

 

 僕は【影群体Ⅹ】を発動させ、山ほどの黒猫で彼女を取り押さえる。


「にゃー!」「みゃー!」「にゃごー!」


 わーっと角田さんに群がる黒猫たち。

 なんだかとってもメルヘン。

 まあ、彼女がやろうとしたことはむしろ殺伐すぎるけど。


「……っ、殺しなさい!」


「惜しい。最初に『く』をつけて、『しなさい』を『せっ』に変えてもらっていい?」


 委員長はわりと凛々しい感じだし、くっころがよく似合いそうだ。


「意味が分からないわ」


「そっか、残念」


 どうやら委員長はネットスラングに詳しくないらしい。

 詩月はわりと通じるんだけどね。

 あとは正樹だ。

 天原正樹。

 たぶん生きてるとは思うけど、また昔みたいにオタ話をしたりさ。

 せっかく魔法が使える世界なんだし、アニメの名場面再現とかやってみたい。


「角田さん、けっこう後ろめたい気持ちだったりするのかな。さっきから色々と動機を喋ってくれてたけど、まあ、要するにリベラ公爵のところに走ったって認識でOK?」


「そういう言い方はしないで。私は公爵様に世界の真実を教えてもらっただけよ。本当の勇者ならハイヴォリア王にこそ立ち向かうべきだわ」

 

「『世の中に絶対はない』ってよく言うけど、『真実』『本当』ってのもたぶん実在しないと思うよ」


 あくまで個々の主観世界において「真実ということにしておいた方が自分に都合のいいもの」や「嘘ということにして自分の認識から排除したいもの」が存在するだけだ。


「というかさ、寮を爆破するとかおかしくない? もしかしたら君に賛同してくれる人だっているかもしれないよね。わざわざ敵を増やすようなマネをしてどうするの? リベラ公爵、アタマ悪くない?」


「公爵様をバカにしないで! これ以上の引き抜きは不可能、そう判断なさっただけよ!」


「なるほど、仲間にならないなら殺してしまえ、か。……これは『五聖剣』だけに知らされてることなんだけど、リベラ公爵、近いうちに挙兵する可能性があるんだってさ。君の言葉で確信が持てたよ。ありがとう」


「っ」


 絶句し、色を失う角田さん。


「そんなっ……」


「いや、そこまで動揺しなくてもいいよ。今のはただのカマかけだし。何にせよ挙兵は確定、と」


 後で宰相さまに教えておこう。

 わりと暗号めいた伝え方をするとものすごく喜ばれるし、あとでアイデアを練らないとね。


「さて角田さん。これからどうしたい? 猫たちに埋もれてモフ死でもいいし、肉球によるプニ死でもいいよ」


「――どっちもお断りよ」


 角田さんはカッと目を見開いた。

 たぶん【任意転移】を使うつもりなんだろうけど。


「どういう、こと……?」


 発動はしない。


「説明した方がいいかな。とりあえず自分の足がちゃんとあるか確認してみなよ」


「えっ?」


 僕は角田さんに群がっていた黒猫たちを影に戻す。

 実はこいつら、ただのカモフラージュなんだよね。


「ひ……っ」


 角田さんの怯えたような悲鳴。

 あたりまえだ。


 窓から差し込む月光を背負った僕。

 足元から伸びた影が角田さんの脚に重なり、その部分を呑み込んでいた。


  

_______________________

【虚影の国】

 本スキルにランクは存在しない。

 自分よりレベルが10以上低い相手に発動可能。

 対象を影の中に取り込み、自分自身と同化させる。

_______________________

 



 たしか異世界に来て80日目くらいに取得したスキルだけど、うん、かなり重宝している。

 

 今や角田さんは僕に取り込まれつつある。

 そこで【任意転移】というスキルそのものを【ステータス異常無効】で打ち消させてもらった。

 

「なによ、これ……!」


 裏を返せば角田さんはいま、自分のステータスを確認するように、僕のステータスを認識できるわけだ。

 

「わけがわからないわ……! そのへんのユニークスキルより、よっぽど、ろくでもないじゃない……!」


「まあ、レベル上げばっかりしてたしね」


 もともと異世界人の成長は早いけれど、現状、レベル287。

 ちなみに角田さんはレベル78で、勇者全体の平均値がレベル80前後だ。


 ま、この世界じゃレベルが高くても基礎能力値は変わらない。

 レベルアップで手に入るのはスキルポイントだけ、それをどう使ってスキルを揃えていくかがセンスの見せどころだ。

 個々人によってスキルツリーは違うけれど、おおまかな傾向ってのはある。

 ついでに強力なスキルほど取得条件が定められていたりとかね。


 そのあたりを自分なりにいろいろと調べ、比較検討し――僕は【虚影の国】を手に入れたのだ。


「とりあえず角田さんは影の中でゆっくりしなよ。いちおう鯛谷さんもいるし、話し相手には困らないと思うよ?」


 鯛谷さん。

 詩月をいじめていた主犯格。

 僕が詩月とパーティを組んだ後も陰険なマネを繰り返して……最後には詩月を殺そうとしたから、やむなく、虚影の国へ招待させてもらった。

 

 というわけで。

 二人目、おいでませ。






 * *




 


<異世界に召喚されて124日目、詩月と付き合い始めて58日目 昼>






 リベラ公爵軍 (正式名称「賊軍」、自称「ハイヴォリア解放軍」)との戦いは三日三晩に渡って続いた。


 一日で終わらせる気だったんだけどね。

 いやあ、正樹は強かった。

 特にユニークスキル【時間停止】がやばい。

 途中までは一方的にボコられてたし。


 対策はひとつ、相手の発動とほぼ同時に「時間停止状態は異常だ!」と認識すること。

 あれができなかったら負けていたと思う。


 え?

 そんなことが可能なのかって?


 僕と正樹は今までいろんなゲームで対戦してきた仲だ。

 その呼吸くらいは互いに把握している。

 

「なあ、おい」


 戦いが終わった後。

 僕とタチスさんは馬車に揺られながら王宮へと戻っていた。

 他に人はいない。

 いわゆるVIP待遇だ。


「シン、今回、おまえはどこまで本気だったんだ?」


 座席はちょうど互いに向かい合う形で、タチスさんはその片方を占拠していた。

 ぐでーと寝転がりながら問いかけてくる。

 

「やだなあ、僕はいつも全力全開ですよ」


「嘘をつくんじゃねえ。リベラ公とマサキ、それから側近どもを取り逃がしちまったが……あれ、ワザとだろ」


「僕にそれをするメリットがあるんですか?」


「……撤退するヤツらの中に、リツ・ツノダが混じってたな」


「っ」


「へえ、おまえさんも可愛いところあるじゃねえか。カマをかけてみただけだよ」


 ううむ。

 やっぱりここは年の功というヤツだろうか。

 ついつい動揺を表に出してしまった。


「つうことはアレか。寮の焼け跡からでてきたリツ・ツノダの死体はニセモノ、と」


「きっと公爵派の手引きですよ。そうやって角田さんを脱出させたんです」


「ふーん、へー、ほーう」


 意味深げに笑うタチスさん。


「ま、いいけどな」


 肩をすくめて、両目を閉じる。

 ほどなくしてグカーグカーと寝息を立て始めた。





 結論から言えば、角田律は生きている。


 僕は彼女を【虚影の城】に取り込んだ後、犠牲者が出ないように配慮しつつ、爆弾を起動させた。

 でもって今回の戦いのどさくさに紛れて、リベラ公爵のところに逃がしている。


 筋書きとしては「命令通りに寮を爆破した後、命からがら脱出した」というところ。

 

 角田さんはリベラ公爵のところに居場所を見つけたみたいだし、まあ、そこでいい感じに幸せになればいいんじゃないかな。

 ま、ちょっとした意趣返しだ。

 彼女は詩月に向かって「クラスメイトと関われ、居心地のいい場所に引きこもってるんじゃない」と言い放った。

 かくいう本人もやがてクラスメイトから遠ざけられてしまったわけだけど、僕は彼女を「クラスメイトと関わらなくてもいい、居心地のいい場所」へと送り出した。これから角田さんがどんなふうに考えを変えていくのか、それとも変わらないのか。とても楽しみだ。

 

 ま、これでいつぞやの借りは返せたかな。


 僕はかつて誓った。

 僕のことを気にかけてくれた角田さんに、何らかの形で力になると。

 なんだかずいぶんとねじまがった形だけれど、いちおう、義理は果たしたと思う。


 あとは群体の一匹でもリベラ公爵に張りつけておいて、危なくなくなったらコッソリ助けよう。


 基本的に僕のスタンスとしては、こっちの邪魔をしない限りはみんな幸せであれ、だしね。

 人を殺せば敵が増えて、人を助ければ味方が増える。

 アニメでもありがちな話だし、幼稚園児でも知ってる世界の、本当の、真実だ。


 少なくとも僕はそう思ってるし、だから僕の主観世界ではそうなっている。



 やがて数時間後、王宮に馬車が辿り着いた。

 時間帯は深夜。

 極秘任務だったから出迎えはない。

 

 寮は爆破されてしまっているので、今はみんな、お城の一角を貸してもらっている。

 僕は階段を駆け上って、詩月の部屋に向かった。


「すぅ……」


 彼女はベッドの上で、十匹近い黒猫に囲まれて眠っていた。

 詩月が寂しがらないよう、僕が置いていった【影群体】だ。


 こうして眺めていると、いかにもおとぎ話のお姫様、って気がする。


「んっ……」


 詩月が目を覚ます。


「シンくん、おかえり、なさい……」


 寝惚け眼のまま、僕にしなだれかかってくる。

 その細い身体を受け止めながら、


「ただいま」


 と答えた。


「角田さんのこと、助けたんですか?」


 委員長の件については、すでに詩月に説明していた。

 

「うん。公爵のところに逃げて行ったよ」


「シンくんは、いい人、ですね」


「ただの性悪だよ。次に角田さんに会ったら『居心地のいい環境に逃げれてよかったですね』って言うつもりだし」


「嘘です。シンくんは、露悪趣味が、過ぎます」


 それから詩月は、むー、と唇を尖らせて……コツン、と僕の胸に頭突きしてきた。


「ちょっと、嫉妬してます。シンくんが他の人にやさしくすると、なんだか、嫌な気分になります」


「ごめんごめん」


 よしよしと頭を撫でつつ、僕は詩月と一緒にベッドへ倒れ込む。


「わたし、鬱陶しいですよね、重いですよね」


「いや、全然」


 少なくとも一方的に「世界を捧げる」とか妄想してるメンヘラボーイに比べれば、チリ紙のような薄さ軽さじゃないだろうか。


 ま、いいさ。


「ねえ、詩月」


「なんですか、シンくん」


「日本に帰りたい? それともこの世界と一緒に滅びてしまいたい?」


 僕は時折、戯れる様にそう問いかける。


「ええ、と」


 詩月はちょっと考えてから。


「日本には戻りたくないですけど、この世界の人たちには、幸せに生きていてほしいです」


 と、答えた。



 だから今日もこの世界は、それなりに続いている。

 

 

 

 

 








 * *











 





 ああ、そうそう。

 笹川が連れていた奴隷の少女については、また今度説明させてほしい。


 それはそれでひとつの大きな事件になってしまうし、僕と詩月がこの世界にどう向き合っていくかを決めるターニングポイントにもなったから。


 聞いてくれてありがとう。


 それじゃあ。

 




お読みいただきありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークいただければ幸いです。

また、本作の前日譚、慎弥と詩月が出会うまでの話を別途投稿しております。

よろしければそちらもご覧くださいませ。


→『ひとりぼっちの少女と、虚影の魔王』http://ncode.syosetu.com/n5362dg/

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[良い点] ヤミっ子ホイホイ(*殺傷成分は含まれておりません) [気になる点] 同化により古傷も消せる。。。 ざんねん。 悪い子ちゃんたち(いいんちょ含む)、彼に『うわ、キモ!』って思われれば病巣が…
[良い点] 本編で語られなかった部分が感想で知れた。 [気になる点] つづき。(詩月版の更に後) [一言] ミュートスノート戦記。。。検索してみよう。そのうち。
[良い点] この手の小説は好きなんでじゃんじゃん書いて欲しい。 [一言] 【ステータス異常無効】の本質は干渉無効化ですか? 自然の摂理の干渉無効化(摂理に縛られている)=本能(三大欲求)、老化、死、攻…
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