五分後の約束
誰にだって、
逢いたい人の一人や二人いるよね。
自分の親、または親友?
はたまた、恋人だったり?
でも、もし逢えなくなってしまったとしたら?
さてさて、今回
私がお話しするのは
「二人の少年と少女」のお伽話。
数夜に分けてお話しします。
それでは、一夜目のお話。
<一夜目>
僕らは約束をした。
また明日の夜、望遠鏡を持って
あの踏切に…と。
僕しかいない踏切に、
携帯電話の着信音が響く。
閑静な住宅街に不釣合いな音に
僕は思わずクスッと笑った。
「ごめんね!あと五分で着く!」
君の声だ。
開いた携帯電話には、
「快晴」の文字。
こんな日に遅れるなんて
もったいないよ。
と、僕は心の中で呟いた。
やっぱり、五分じゃ来ないよね。
まあ、それぐらいは
馬鹿な僕でも分かっていた。
君の五分は、
一般の時計だと
三十分に値するみたいだね。
なんて、ニヤニヤ笑ってた。
それよりも僕は、
遠くに聞こえる救急車のサイレンが
無性に気になっていたんだ。
結局、その日
君は来てくれなかった。
長い夢を見た。
目の前で君が死んでしまう夢。
微かに動いたその手を
僕はとうとう触れることができなかった。
その後も永遠に…
今日は約束なんてしていない。
それでも僕はあの踏切に走って行った。
君に逢える気がしたんだ。
五分後に来なくてもいい。
それでも僕は独り、
望遠鏡で星空を見る。
なぜだか霞んで見えないや。
その時に、
視界の端がゆっくりと明るくなった。
少しだけ星空に近付けた。
フワッと美しい箒星が流れた。
「今日も星が綺麗だね。」
薄れゆく意識の中で、
君が笑ってくれた気がした。
「ありがとう。××××…」