6話
二人と別れた俺はその後少し日用品を買って屋敷へ戻った。
屋敷の中に入るとそこには倒れたはしごと水をぶちまけたバケツがあり、肝心のシャルロットの姿が見当たらない。襲撃があったのかと思い、水滴が続いてる部屋へと向かう。
「シャルロット! 大丈夫−−」
部屋のドアをあけるとそこには一糸纏わぬ姿のシャルロットがいた。彼女の白い肌はシャワーを浴びたばかりなのか仄かに赤く火照り、その肌には美しいブロンドの髪が張り付いていてとても艶かしい。ただ彼女がスレンダーな体型であることだけが残念で仕方ない、ってこんなこと考えてる場合じゃない。
「きゃっ、きゃあああああああああ!!」
「す、すまん!! 俺はお前が−−」
俺は必死に弁明しようとしたが、その声は彼女には届いていないようだった。
「うるさい! さっさとでてけ!」
彼女の放った魔法を最後に俺の意識はブラックアウトした。
*
「この変態。私のは、裸を見るなんて」
「だから勘違いだって。あれは事故だ。お前が敵襲にあったと思ったんだよ」
「変態はみんなそうやって言うわ」
あの後彼女は部屋に籠ってしまったので、俺は夕食の準備をしていた。掃除はだいたい終わっていたみたいで一階で食べることができそうだ。一階には食卓やキッチン、風呂などがあって共用スペースとなっている。
夕食を作っていると匂いに引き寄せられたのか、いつの間にかシャルロットが食卓にいた。完成した料理を盛りつけてやるとお腹が減っていたのか彼女はすぐに食べ始めた。
「変態の癖においしい料理を作るのね」
「−−いい加減変態はやめてくれないか。さっき事情は説明しただろ。」
「し、仕方ないわね。なら許してあげる変わりにあなたはこの寮の家事担当ね」
「分かったよ」
ここで反論すると話しが堂々巡りしてしまうので素直に折れておく。今のうちに少し彼女の話を聞いてみることにしよう。
「なあシャルロット」
「シャル」
「お前の−−、えっ?」
「シャルロットって長いでしょ。シャルって呼んで」
「ああ、俺のこともユウトでいいから。で、お前の魔法について話が聞きたいんだが」
「闇魔法のこと?」
「そうだ」
「話って言ってもね、私にもたいしたことはよくわからないの。闇魔法が使えるっていうけど、実際に使ったこともないし。使い方も分からないのよね」
「なら、なんで闇魔法が使えるって分かったんだ?」
「この学園の入学試験の時に、自分の適正遺伝を調べたじゃない。そのときに私の適正が闇魔法だって事が分かったのよ」
適正遺伝とはその名の通り、遺伝した属性魔法の適正の事だ。適正がある魔法ほど扱いやすくなる。ただ100%遺伝する訳ではないし、稀に隔世遺伝する事もある。
「で、学園から身の安全の為に護衛付きで寮に住む事提案されたの。誰かに襲われたら私の身が危ないし孤児院の皆にも迷惑かかっちゃうしね」
「今日までに襲われたり、違和感を感じることはなかったか?」
「襲われた事はないわね。学園から護衛も付いていたし。違和感も特にないかな。でも朝は少し変な感じだったわ」
「朝っていうと、登校中のことか」
「うん。屋根の上を魔法で走ったいたんだけど、こけちゃったの。そこをあなたに助けてもらったんだけど、そのとき何か足に引っかかった気がしたのよね。勘違いだと思うんだけど」
「そうか、一応頭の片隅に止めておこう」
「うん。ご飯おいしかったわ。ごちそうさま」
ご飯の後は、それぞれの部屋に分かれて過ごした。俺も自分の部屋を整理しながらこれからの事に思いを馳せる。
「はぁ、静かな学園生活を過ごすのはむりかなぁ……。うん、寝よう」
俺の学園生活はとんでもない方向へと進んでいるようだ。