5話
「はい、こちらがあなた達の寮です。今のところ入居者はあなた達二人だけですので」
彼女について歩くこと15分。俺たちは今にも倒れそうなボロ屋敷の前に立っていた。普通の屋敷より一回りぐらい大きい二回建ての屋敷である。ただ壁や天井にはところどころ穴が空いており、雑草はぼうぼうに生えていてこの屋敷がまったく手入れされていないのが分かる。
中に入ってみると、二階に6室ほど個室があり一階は共有スペースのようだった。どの部屋も埃まみれであり蜘蛛の巣などが張ってある部屋もあった。
「えっと……、このボロ屋敷に二人で住むんですか?」
「はい。壁や天井の穴などはそのうち修理しますので、1週間ほどお待ちください。掃除や雑草の伐採などはお二人に任せてもよろしいでしょうか?」
「……、分かりました。シャルロットもそれでいいか?」
「う、うん。大丈夫。掃除はし慣れてるから」
「それでは私はこれで戻らせていただきますのでなにかあったら連絡してください」
彼女は雑草をかき分けながら学校へ戻っていった。
それにしてもどうしよう。こんなに汚い屋敷を掃除していたら日が暮れてしまいそうだ。そう考えているとシャルロットが、
「雑草の方はあなたに任せていいかしら? 私掃除は昔からしなれてるからきっと日暮れまでに終わると思うんだけど」
「分かった。雑草は俺に任せてくれ」
俺は屋敷の外の雑草たちへ向かう。成長を阻害するものがなかったであろう雑草達は思う侭育ち、俺の背丈に匹敵するぐらいある。裏をのぞいてみるとそちらは森に面していて更にひどい長さとなっていた。これらを鎌で切るのは無理だと判断した俺は魔法で刈り取ることに決めた。
『魔法』−−それは神の力。俺たちは神の力を自分の魔力で再現することで魔法を発動する。魔法には様々な種類があって今回俺が雑草を刈るために使うのは風魔法。魔力を風に変化させそれを世界へ向けて撃ち放つ。
『風の斬撃』
魔法は雑草を楽々と切り裂いていった。ある程度の雑草を刈ると、それらをまとめて森へと魔法で吹き飛ばしていく。すべての雑草を刈り終えるころには天高くあった太陽も少し傾いていた。
屋敷の中をのぞいてみるとシャルロットはまだ掃除をしているようだったので、町へ買い物へ出ることにした。
商店街は学園から10分ぐらいの場所にあった。まずは食料を買おうと肉屋や八百屋へ寄って数日分の食料を買ってきた。さっき覗いたら一通りの家具はあり、そこに冷蔵庫もあったので保存に関しては大丈夫だろう。
他に何か必要なものはないかと店をまわっているとマルシアとリーリスに出会った。マルシアが手を振りながらこちらへ駆け寄ってくる。
「ユウトさ〜ん。先生からの呼び出しは終わったんですか?」
「ここで買い物をしているんだから終わったに決まっている。何の用事だったの?」
「色々と質問されたんだ。今までのこととかこれからのこととか。それでこれから学園の寮に住むことになったんだ。だから食材の買い出しにな」
「そうだったんですか。それなら夜こそご飯食べにいきませんか?いまから料理してたら遅くなっちゃいますし」
「誘いはありがたいんだが、寮で人を待たせているからな。今日は帰るよ。二回も断っちゃて悪いな」
「いえいえ、こちらこそ何回も誘ってしまいすいません」
暇があれば彼女たちとご飯を食べにいこうと心に決めて寮への帰路についた。