07 生態がどうにもはかり知れない
再々々補習は、気もそぞろだった。
八月末にまた学校に来るように、と泣きそうに優しい目をした先生がそう言ったけど、返事もそこそこにアタシはあわてて家に走って戻る。
部屋に入ると……窓が開いていた。
「たいへん!」逃げたかも。「み、みどろちゃん!! どこ?!」
カーテンの影、窓枠の上にうずくまるように丸くなっているのを見つけた時には、安堵の吐息が出た。
「よかったー」
逃げようとはしていない。むしろ、気持ちよさげに日の光を浴びている。
眼は全て閉ざし、窓枠にもたれたあたり、あごのシワみたいに幾重にもたるんでいる。
何か、やっぱり、可愛いかもしれない。と、その姿をみて思ってしまったのね。
まあ、日光では死なないんだコイツ、とも思ったのも確かだけど。
それでもとっさに名前を呼んでしまったしね。
「さ、こっちに戻って……」
手を伸ばした時、みどろちゃんの身体が
ぴょるっっっっっっ
と伸びた。まるで鞭のようにしなる触手か何かのように、細くなった身体が思いがけない長さに天を突く。
ちょうど軒先から飛び立とうとしたスズメが、伸び切ったみどろちゃんの影に入った。
と思ったら、次の瞬間に消えていた。
「え」ひと声出した時には、みどろちゃんの姿は元の球体に戻っていた。
ぴろりん、と茶色い羽毛がひとひら、アタシの目の前に舞い落ちた。
「みどろさん……」つい棒読みな敬語になるアタシ。
「やめましょうか、ちょとそーゆーの、みどろさーん」
みどろちゃんはぐびぐびぐびと満足げに喉を鳴らし続けているだけだった。