06 想像力ではとても補えない
と、いいながらもアタシ、少しだけ寝ちゃったみたい。
朝が来て、あまりにも静かだったんで、もしかして死んじゃったんじゃないか……
なんて、期待した方が馬鹿だった。
ソレは元気だった。
そして、ケージは丸ごと喰われていた。
電話が鳴っている。
呆然としたまま受話器を上げると、学校からだった。
「え?」弱り目に祟り目だわ。
「再々々補習、ですかぁ? 今から?」
ため息ついて電話を切ってから
「なんだよ……逃げ切れたと思ったんだが」
ハードボイルド口調でつぶやいてみる。
みどろちゃんの方を見たけど、何の反応もなし。
コレ、連れて行った方がいいんだろうか……
どうも、昨日から過ごした感覚ではアタシに危害をくわえようとしている様子はない。
というか、案外、懐かれているかも。
今も、ソイツはフードをひとのみにしてから(もちろん、トレイとその下の新聞紙まで。床もわずかに削れた)、ベッドの上に戻り、喉をならして丸まっている。
見た目ぜんぜん違うけど、百歩譲って、変わった感じのネコだと思えば……
アタシはごきゅっとつばを呑みこんでから、小学三年まで飼っていたネコの『にゃるん』だと思ってみて、あえて明るくソレに声をかける。
「ちょ、っと出かけてくる」
眼が3つほど開いて、こちらを見た。ゴロゴロが止まった。
「おるすばん、頼むね」
ぎぴゃぁぁぁぁ……
どこか聴覚のわずか斜め上をかすめるような軋みで、ソレが鳴いた。
(まかせて)
って言っているのか、
(あとから地獄を見るぜ、ねーちゃん)
って言ってるのかが、解ればいいんだけど。ってその時つくづく感じたわ。
まあ、どっちの答えでも結果はあまり、変わらなかったんだけどね。