05 そこまでカロリーは計算できない
餌はキャットフードでだいじょうぶよー、カリカリごはんで平気だから!
明るく言って、むっちゃんが置いていったのはドライフードの10キロ袋。
でも、いくらやってもキリがないみたい。
「朝と晩に、1カップくらいでだいじょうぶみたい」
カロリーはあまり摂らせたくないの、太っちゃうと抱っこできないでしょ? とむっちゃん。アタシは小刻みに首を横に振るのみ。
「それからね、」
よっちゃんはアタシを見上げて哀しげな目で付け足した。
「みどろちゃん、さびしんぼなんだ……」
「だから」
つい声が硬くなる。
「だから~」おもいっきり甘えモードでむっちゃん。
「時々、手から直接」
「ことわる」
エサ、手からやらなくても、ぜんぜん大丈夫みたい。
しかし……本当にこの量で足りているのだろうか?
カップ一杯なんて、ものの3分もしないうちにソレの体内に取り込まれてしまう。
たぶんあの口をがばっと開けたら、こんなささいな量なんて……
そう思った瞬間、手が滑った。
「ああっ」
袋がずれて、フードが雪崩のごとくケージの中に流れ込んだ。
「ちょ、ちょっと待って!!」
大丈夫だった。
ソレは一瞬のうちに、ケージ内の1キロほどのフードに覆いかぶさった。球体が反転したようにぺろんとめくれあがり、赤黒い肉色がぎらりと蛍光灯の光を反射した。
排水溝が鳴るような音の後、フードはすべてソレの体内に消えていた。
青いプラスティックの餌箱も、なくなっていた。
「……」
凍りついたアタシに構わず、ソイツは満足そうに、ずっとゴブゴブと喉を鳴らしていた。もし喉があるのならば。
むっちゃん、すごく心配そうに
「カロリー計算してるから、あまりたくさんあげないでね」
と言ってたけど……
餌箱って、いったい何キロカロリーなんだろ?
つうか、餌箱食うくらいなら、ケージだって喰っちまうんでね?
そして次はアタシ……
気になって、アタシはその晩はぜんぜん眠れなかった。