02 その場所には誰も近づかない
大きさはオトナの猫くらいだが、どんより赤黒くて何となくじっとりと血塗られたように湿っていて、下半分は、むっちゃんの抱える両手からだらしなく垂れさがっている。どこが手なのか足なのか、はっきりしない上に顔もよく判らない。
上の方に3つ? 4つ? いくつかついている穴の中で、充血して黄色く濁るこのゴルフボールみたいなこれが、もしかして……
「目?」
その目が一斉にぎょろりとこちらを見た。
下にぱっくりと横半分に切り裂いたような口が暗黒の門を開ける。ぎっしりと尖った牙が白い。
それが啼いた。超音波で。
ギピャヲォォォォォォォォォォォォォォォォォゥゥゥゥィィィィッッッ
「ふぎゃーーーーーーーーーーっっっっ」
涙目になってアタシはベッド向うの窓枠に飛び乗る。
「こないで!! こないでっっ! しっしっ」
「えー、なんでよぉぉ」
むっちゃんは涙目になりつつも、ソレを更にこちらに差し出してきた。
アタシをどうしても窓から転落死させるつもりか、でもアタシまだ死にたくない、
「どかして、それ、ちょっと下げてよ! 話聴くから!!」
むっちゃんが1歩下がって床に座ったので、ようやくアタシもベッドの上まで降りる。
「で、何? どこで拾ったのよ」
「2丁目の、鹿田医院の駐車場」
出たーーー!! いきなりジャストミートなスポット!!!