15 むっちゃんの底力に言葉もない
ねえねえねえ、起きてよ! すごいよ! もうメッチャすごいって!
そう、むっちゃんが飛び込んできたのは、夏休みの最終日。
アタシはがばっとはね起きた。
「むっちゃん!!」
無事だったの!?ということばはすんでのところで飲みこんだ。
むっちゃんはすっかり日焼けして、髪はぼさぼさ服はボロボロ、しかし目はキラッキラに輝いて、弾けんばかりの笑顔を浮かべている。
「ちょ……何、おかえり」
訊ねる前に、むっちゃんは得意げに語り出す。
「もう、ハクイさいっこーだった! 海はきれいだし自然は一杯だしホテルのご飯美味しいし、冒険するとこ一杯あったし!」
何でも、ホテルも観光案内所も、派出所さえ、日が沈む前にスタッフはあたふたと島を去って行ったのだと言う。
「夜はまあ、ご自由に……」目に何か不可解な闇をやどし、人びとが船で去って行っても、滞在者は作り置いてあったごちそうに舌鼓をうち、かけ流しの温泉を堪能し、特に不自由はなかったそうだ……四夜めまでは。
「すでにヤバイ予感しかない」アタシのコメントも受け流し、
「その晩にさぁ、もうびっくりしちゃったんだけど、なんか大騒ぎになったみたいで」
ま、ウチ、寝ぼけてたからよく分かんないけどね……とむっちゃんはてへ、と笑って続ける。
「旅行のメンバーがみんなで、ホテルから外に飛び出して、森の奥にあったボロっちくてデカい無人家にみんなで入ってさー」
「それを一般的に廃墟と言う」
「ハイキョかー、でね、そのハイキョでね、」
むっちゃん、アタシの目に浮かんだ恐怖が見えていないようだ。
「いつの間にか、ウチら家族だけになっちゃってさ、おとーさんが『いいか、ここから動くんじゃないぞ、必ず迎えに来るから』って言ったきり、おかーさんとどっか行っちゃって……」
「おおお……」
「あんまヒマだから」
「アンタね」
「どうしようって思ってたら、ちょうどそこに住んでたバアサンが来てね、案内されてさ」
「ちょ、そこ疑問ありだしょ」ついことばも変になって突っ込む。
「さっき無人て言った」
「え、そうだっけ、まあ細かいことは置いといて」
むっちゃん、そこから何と、廃墟を出て近くの洞窟に案内されたのだと。
そこでもアタシからすれば長編ホラー映画一本観たくらいの衝撃だったんだけど、なんとむっちゃん、『衝撃のであい♡』をしたのだそうだ。
「おっどろいたよ、まさか、あそこにあんなに居たなんて。でね……」
後ろ手になっていた理由に、さっさと気づけばよかったのだ。
「じゃーーーん!」
後ろのでっかいキャリーバッグから引っ張り出したのは、なんと。
「みどろちゃんの、おともだちでーす!」




