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13 サヨナラをいう間もない

 採点中のレポートと教卓ごとシノザキが丸まる食われてすぐ、つるん、とエコバッグからみどろちゃんがこぼれ落ち、びたんと湿った音とともに床にへばりついた。

あっ今の音イタそうごめん、とついなぜかモンスターに向かって謝っちゃったけど、なんとみどろちゃん、拾い上げようとしたアタシの手をかいくぐって、妄ダッシュ!

教室を飛び出したのを、慌てて追いかける。

階段の所でいきなりコミュ英のキリシマと出くわした。

「あっせんせいいい所に!」

 びっくり顔のキリシマは、真正面から薄い膜となって襲いかかったみどろちゃんに、あっという間に食われてしまった。


 ちっ、『コミュ』の意味、訊き損ねたわ!

 

 そうじゃなくて!

このままでは大変なんだって!

 

 アタシは転げ落ちるように階下に駈けおりる。落ちそうになった理由は、みどろちゃん、勢い良すぎて階段の一部も食っちまったからなんだけどね。

 

 しかし一歩遅かったようだ。それなりに人がいたらしい事務室に、みどろちゃんは、入り込んでしまったようだ。



 がっつり食欲を満たしたらしきみどろちゃんをようやく発見したのは、校庭のはしっこ、大きな木が何本か生えている、その合い間だった。


 すっかりおとなしく、腕にしなだれかかったままグビグビと喉を鳴らしているみどろちゃんを抱え、アタシは足取りも重く帰路についた。


「ぴぎゃ……」

 エコバッグの中から、とろんとした目をひとつだけアタシに向け、みどろちゃんが小さく啼いた。

「……うん」


 何と声をかけていいものか。

 分かってるよ、とか、アンタは悪くないんだよ、とか?

 いやー、何と声かけてもウソっぽいよねー。


 代わりにそっと指をつっこんで、目のうちのひとつの下をやさしく掻いてやった。


 がつ、と牙が指に当たり、「いった!」あわてて引っ込める。

 みどろちゃん、こちらを見上げたまま、いつになく情けない声で

「ぴぎ」と啼いた。

 えっ、今のもしかして甘噛みとかですかマジで??


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