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週刊どらゴン通信!  作者: 世鍔 黒葉@万年遅筆
第一章 「短槍使いが孤高すぎて」
12/23

1-11 特集、孤高の短槍使い

 華やかな音楽が流れ、画面には二人の少女が映し出される。


「こんばんは! 2050年4月23日、土曜日。週刊どらゴン通信の時間がやってまいりました! 

 今日も水上都市ヴィネルのスタジオからお送りします。司会はわたくしリコーラーのエリと」


「メイジのナツキが務めさせていただきます!」


「今週はたくさんのユーザー主催イベントがあり、さらに団体対抗トーナメントではあの人物が優勝したりと、てんこ盛りな一週間でしたね! それでは、今週一週間の出来事を振り返ってみましょう。

 ナツキさん、お願いします!」


「おっけー! いくよー!」


 ナツキは手にメイジの武器、『オーブ』を出現させ、《テレポート》を発動する。元々短距離を瞬時に移動できるこのスキルはメイジの特権であり、敵を翻弄するのに使うものだ。


 それをナツキは現在いる部屋からモニターのある隣の部屋に行くために使った。


「今週一週間の出来事を振り返るこのコーナー。ラッキーセブン!


 日曜日! 桜村にてユーザー主催の料理大会が開催されました。今回は春をテーマとして腕利きの料理人が多数参加し、多くのユーザーにふるまわれました。

 会場投票ではエデン出身のタマが優勝。作品名『富士見桜』は名前どおり富士山と桜をイメージされたチャーハンで、レシピ自体はシンプルながら桜のように見せる食材の配置や、和と中華を融合させたその味が高く評価されました!


 月曜日! ここ水上都市ヴィネルでユーザー主催の非戦闘型水上レースが開催されました! ホバーボードを使った水上の激闘は観客を大いに沸かせました。優勝者はクロノス出身のヒメ。抜群のバランス感覚を披露し、卓越したジャンプ技術で他を大きく引き離しました!


 火曜日! 戦いの炎は一風変わった戦士に染められました! 闘技島の四次職クラス個人対抗バトルロワイヤル!

 キル数部門ではヴァルハラの美しきスナイパー、ジルが優勝! その凍てつくような視線に射止められた者はその銃弾で心ごと貫かれます!


 水曜日! 農場都市トーゴにてユーザー主催のパラディンによる乗馬レースが行われました!

 優勝者はエデン出身のパラディン、フォニア。優勝候補だったコウジをくだし、彼に掛けていたユーザーを大番狂わせの混沌に突き落としました!


 木曜日! 飛行船レースの勝利国、ヴァルハラの王。ブレイバーのレイノルドが幻想宮殿にて、魔鞘のアストラル・ウェポン、『レヴァテイン』を獲得! もともと鬼のようにつよい彼ですが、まさに鬼に金棒状態です。エデンやクロノスの王はどう対応するのでしょうか。


 金曜日! 城塞都市レムルスの四次職クラス団体対抗トーナメントでは、あのノーブル・ソルジャー、シュラが雪辱を晴らし、優勝しました!

 アストラル・ウェポン、ゲイ・ボルグを手に入れ、前回よりも強くなった彼には、たとえ六人で相手をしても歯が立ちません。特集は後ほど!


 そして今日! 水晶宮エルシフィアにてエデン出身のユウヤとマイが結婚式を行いました!

 参列したユーザーは二人を大いに祝福し、式場は幸せムードではちきれんばかりでした!


 以上、今週一週間の出来事でした!」


 ナツキがもう一度テレポートを使い、エリのいるスタジオに戻る。


「アルカディア内で結婚式を行うなんて、大胆な発想ですね。ユウヤさん、マイさん、どうかお幸せに!


 次は特集に参ります。

 六対一の状況下で見事優勝した猛者。孤高の短槍使い(ノーブル・ソルジャー)、シュラ!」


 エリが言うと、画面に大きなテロップが表示される。


「ヴァルハラのソルジャーである彼にはたくさんの謎があります。本番組では、そのいくつもの謎を取材し、本人許可のもと突き止めました!

 それでは第一の謎、なぜあのような神速の短槍捌きが可能なのか?」


 ナツキが言うと画面が切り替わり、二週間前の団体対抗トーナメントの決勝戦の様子が映し出される。


「剣や銃弾、魔法の炎弾などをたやすく弾くほどの短槍のスピード。ただ単に筋力や素早さを上げてもここまでの速さにはなりません。

 シュラさんは筋力や素早さを重点的に上げると同時に、とあるスキルのレベルを上げていました。

 そのスキルとは、ソルジャーの武器熟練度スキル《ショートスピアマスタリー》。このスキルはレベルを上げていくことで短槍を装備した時の体感重量を軽くさせる上、攻撃力を上昇させることができます。

 《ショートスピアマスタリー》のレベルが1の時は大体アルミの棒程度の重さに感じるそうですが、シュラさんのように《ショートスピアマスタリー》をレベル124まで上げていると、もはや羽のような重さだそうです。


 ここまで軽ければ、確かにあのスピードが実現できるでしょう。しかし、彼はそのせいでほとんどスキルを覚えていません。覚えているのはレベル上げを必要としないリミットブレイクスキル《デザイアー・ファング》のみ。しかし、このスキルは一度使うと一定時間使えなくなる代わりに、攻撃が当たった時にHPとMPを吸収することができます。

 これがあったからこそ、シュラさんは六対一での持久戦に耐えられたと言えるでしょう」


 画面がスタジオに戻り、次はエリが話し始める。


「第二の謎です。突然トーナメントに現れ、優勝したシュラさんですが、一体何者なのでしょう。

 これも本番組のスタッフが突き止めることに成功し、本人も認めました。


 彼はヴァルハラに所属するギルド『電光石火』のエース、サブネームは『ムサシ』というソードマスターだったのです! 『電光石火』といえば城塞都市レムルスの団体対抗トーナメントで五度の優勝を収めている有名なギルドですが、トーナメントに出ているなら彼を知るユーザーも多いでしょう。


 彼は二か月前、『電光石火』のメンバーの元から失踪し、約一か月半の間短槍の修行をしていたようです。そして四月一日にあった団体対抗トーナメントで見事優勝したのです。

 その後に本番組のスタッフが『電光石火』のギルドマスターを直撃したところ、彼は半年前に個人対抗トーナメントで活躍していた『三柱の大災害(トライディザスター)』に憧れており、強者になることを夢見ていたことを話しました」


「そして、再び頂点を極めたシュラさんですが、その時、何を思ったのでしょう?


 本番組のスタッフが直接取材を試みました!」


 ナツキが話を継ぐと、画面が切り替わり、スタッフがシュラにマイクを向けている映像が映し出される。そして質問がテロップとして表示されていく。


 Q:前回大会から雪辱を果たす格好で優勝しましたが、今の気持は?

「そうだな、前優勝した時はそうでもなかったが、今は最高の気分だ」


 Q:それほど、前回大会では悔しい思いをしたと?

「ああ、そうだったな。あの時は最悪だったが、今になってみれば負けるのも悪くはないと思う」


 Q:もう一度頂点を極めることができましたが、今後の目標は?

「できれば連覇したいものだな。だが、対策を取ってくる者も多いだろう。また新たな戦い方を模索していくところだ」


 Q:最後に一言お願いします。

「もし聞いているのなら、『三柱の大災害(トライディザスター)』よ。俺は仲間を頼る事を学んだ。今は君にも負ける気はしない」


 シュラの言葉が終わると、画面が切り替わる。


「一人だけで団体戦を優勝してしまうなんて、やっぱりすごいですよね。今後も、ノーブル・ソルジャー、シュラの動きには目を離せません!


 それでは次のコーナー。みんなのどらゴン通信! 

このコーナーでは視聴者からの便りをアルカディアネット経由で募集し、紹介していくコーナーです。エリ、一味違うのを見せてやって!」


「はい、それでは意見箱、召喚!」


 エリが言い、装備したリコーラー専用装備、本のような外見をした『グリモア』を開くと、スタジオの地面に巨大な魔法陣が描かれる。


 そして現れたのは、白銀に輝く巨大なクリスタル・ドラゴンだ。


 クリスタル・ドラゴンは一つ咆哮してから、スタジオの中央に向かって高密度の白いブレスを吐く。


 通常の前衛職ならば一撃で粉砕しかねない威力のドラゴン・ブレスが収まった後に残ったのは、一つの箱だった。


 エリが何事も無かったかのようにそれ拾い上げ、中から一枚紙を取り出す。


「サブネーム、アルフさんからのお便りです。

 ヴァルハラ王がレヴァテインを手に入れえた事に関して、非常に脅威だと思います。私はエデンの前線で戦ったことがありますが、王が直々にやってきたときにはその一角がすぐに陥落するほどだったので、今のヴァルハラ王が怖くてたまりません。


 お便りありがとうございます。確かに、ヴァルハラ王のレイノルドさんは他の王とは違って自ら前線に赴きますよね。戦争イベントでは王が倒されると負けてしまうので、特異な行為だと思われていますが、彼はほとんど倒されませんからね。

 まさに鬼に金棒、エデンやクロノスの前線でもアストラル・ウェポンの争奪戦がありそうですね!


 それでは次、サブネーム、サクラさんからのお便りです。

 私も料理大会に行ってきましたが、優勝作品以外にもすごいものがいっぱいありましたよ! 個人的にはちっちゃな熊のような形をした桜餅がとてもかわいくて、その上おいしかったので一番です!


 お便りありがとうございます。料理大会は毎回すごい作品が並びますよね。取材にいったスタッフは運悪くロシアンルーレットな料理で見事当たってしまい、その場でログアウトするという事態に陥りました。様々な作品があるのが面白いですね!」


「そろそろお別れの時間が近づいてきました。最後のコーナーは、スタッフが選ぶ今週の一枚」


 ナツキが言うと、画面には宮殿のような場所に一本の剣が突き刺さっている写真が映し出される。宮殿の窓から入り込む七色の光が、その剣の豪奢さと合わさって幻想的な風景を創り出す。


「この写真は、わたくしナツキが撮影しました。幻想宮殿ではアイテム目当ての人が多いですが、なかなか綺麗なマップなのでたまには足を止めて風景をみてはいかかでしょうか?」


「お別れはアルカディアで活動中の野獣系ロックバンドグループ『タイラント』の『夢想召喚』に乗せて」


「「それでは、また来週!」」






第一章「短槍使いが孤高すぎて」         完





おまけ



シュラのステータス(二回目の大会優勝時)

レベル:154

所属:ヴァルハラ

職業:冒険者職、ソルジャー(短槍使い)


習得済みジョブスキル

「一次職スキル」

・ウォーリアソウル(レベル10)

 永続スキル。剣、槍、斧が装備可能。レベルにより、剣、槍、斧の攻撃力が上昇、体感重量が減少する。一次転職を行った後必ず習得。


「二次職スキル」

・スピアマスタリー(レベル10)

 永続スキル。レベル70までの槍を装備可能。レベルにより、槍系の攻撃力が上昇、体感重量が減少する。二次転職を行った後必ず習得。


「三次職スキル」

・ショートスピアマスタリー(レベル125)

 永続スキル。短槍が装備可能。レベルにより、短槍系の攻撃力が上昇、体感重量が減少する。三次転職を行った後必ず習得。


「リミットブレイクスキル」

・リミットブレイク

 スキルの限界レベルを上回って上げることができる。リミットブレイククエストを行った後、必ず習得。


・デザイアー・ファング

 振る、突くの動作で発動。命中した場合、相手のHPとMPを大幅に奪い自分のHPとMPに還元する闇属性の物理攻撃になる。相手の残りMPがMP吸収量を下回っていた場合、MP吸収量から相手の残りMPを引いた分のダメージを追加する。

 一度発動するとしばらく再使用できない。


習得済みスロットスキル

・観察眼(レベル20)

 対象のレベル、装備、残りHPなどが分かる。スキルレベルが高いほど、自分と相手のレベル差が少ないほど多くのステータスを見破りやすい。


・プロリス・ヴィジョン(レベル20)

 発動し、MPを消費している間、視界の角度が広がる。レベルが上がるほど視界の角度は広くなり、現在360度の視界になる。


・ウルフマン(レベル20)

 パーティーを組んでいない時ステータスが上昇する。レベルにより、ステータス上昇の割合が上昇する。


・フラッシュステップ(レベル8)

 MPを消費し、前方に超高速の直進を行う。レベルにより最大移動距離が上昇する。




ジョブチェンジについて

 アルカディアでは特殊なアイテムを使うことで、ジョブチェンジを行うことができます。


 具体的には一次ジョブチェンジとフルジョブチェンジが存在し、一次ジョブチェンジは一個前の職業に戻り、戻る前の職業のスキルレベルが割り振られていない状態になります。


 フルジョブチェンジでは職業が見習い冒険者にもどり、全てのスキルレベルが割り振られていない状態に戻ります。


 二次転職、三次転職、四次転職リミットブレイクを行う時には武器熟練度スキルをレベル10に振っていればよく、全てのスキルレベルを振っている必要はないのでシュラのように一つのスキルのレベルを大量に上げることが可能。





次回予告

 シンジが個人トーナメントに出場しなくなって以来、代わりにトーナメントで優勝し続けている女性がいた。

 クイーンはそんな彼女を番組のスタッフとして引き抜く事を決定する。

 その情報収集役に選ばれたシンジはその女性の戦う目的を知り、とんでもない恋のいさかいに巻き込まれていく?!

 そしてそれを見てほくそ笑むのは、あたし、メイジのナツキとシャドウのレイ。

 次章、「疾風乱舞は愛の疾走」


最後にまた来週と言っていましたが、書きためてから投稿する予定なので、1、2か月後ぐらいになると思います。

活動報告にて裏話的な内容を書いているので、よかったら。


皆様のご意見、ご感想をお待ちしております。

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