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降り止まない雨の音。

目が覚めた時は、もう、雨だった。

真夜中から降り出したのに今だに降り続ける大粒の雨

試験は終わったというのに

心に蓋をしたい

そんな気分。


紗英さんが中里先輩の事を好きで、先輩もそうだとしたら…


こんなに悩んでいる自分が不思議だった。

恋愛ひとつでこんなに。

どれだけ先輩の存在が大きかったかを象徴する。


だからと言って、私には何も動かすことは出来ない。

私も、想うだけじゃなくて早く携帯番号聞いておけば良かった。

そんな後悔。


でも、まだ遅くない!

今からだって聞いてみよう変にポジティブになってみた。

けれど………

紗英さんの最近を見ていると、すごく輝いている。

きっと、先輩に夢中なんだろう。

紗英さんの気持ちわかるからこそ、もぅ自分がどうすれば良いか分からない…

でも、伝えたい。

気持ちだけは。


紗英さんにあえて何も聞かない。

それは、気安めでもあった自分がこれ以上傷付きたくないが故に。


2月も下旬の京都

寒い寒い日々が続く。

週に三回は大福を買いに来ていた先輩も、なぜか最近は顔を見せない。


冬は、この店も客足があまり多くなく、私は黙々と掃除をする。


すると、店のドアがガラガラっと開いた

「こんばんわ」

先輩が居た。

「こんばんわ…」

私は、びっくりした。

「さ、最近来なかったから…びっくりしちゃいましたよぉ〜」

結構嬉しくて、変に喋ってしまった。

「うん!最近、勉強とか大変でさぁ」

先輩は変わらずに答えた。

「そぅなんですかぁ?!お疲れ様です。じゃあ、大福食べたくなりますよねぇ!久しぶりですもんねぇ」

私が、カウンターに向かうと…

「あっ!今日は、違うんだ」

なんだか、申し訳なさそうに言う。

私は、ドキっとした。

もしかして…


「紗英ちゃん、来てないかなぁ?」


「あぁ〜!紗英さんですかぁ!今日はおやすみなんですよぉ〜!」

妙に明るい口調になってしまった。


「そっかぁ…」

下を向いた先輩。


「あの、どうかしたんですかぁ?」

私は、気になってしょうがない気持ちで聞いた。


「う〜ん。携帯に連絡しても出てくれないんだ。」

困った顔をして言った。


「なにかあったんですか?紗英さんと」


「いや、何もないと思うんだけど、なんだか怒ってるみたいなんだ。俺なんかしたかなぁ?って。」


「そうなんですかぁ〜」

私は、言葉が見つからず、悩んでいる先輩に何も言えなかった。私自身のショックが大きかったから。


「ありがとう。じゃあ、帰るね。バイト頑張れ!」

不安一杯の顔で帰ろうとした先輩。


私は、声をかけずにいられなかった。

「あの、私、連絡してみますよ!」


「本当に?」


「はい!」


先輩は、ありがたそうに帰っていった。

私は、落ち着かない気持ちで、家に帰り紗英さんに電話をした。


すると…

「もしもし!朝井?どうした?」

元気そうに出た。


「あの…今日、中里先輩が店に来たんですけど、先輩気にしてましたよ!電話に出てくれないって。先輩と何かあったんですか?」


「…………」


「紗英さん?」


「駄目だなぁ…なんにも分かってない」


「え?!」



「ごめん!朝井に何にも話してなくって」


私は、聞いた。

「紗英さん…もしかして、先輩のこと…好きなんですか?」


「うん………」

やっぱり……………

分かっていたことなのに、今更ながら、傷ついた。

紗英さん、私が先輩を好きだったこと、もしかして知ってたの?だから、言わなかったの?

そんなのって…嫌だ。


「どうして、私に言ってくれなかったんですか?」

強く言った。


「だって…恥ずかしいじゃん?」


え?!考えていたのと、違う答えが返ってきた。


「だって、私は朝井にとって先輩でしょ?クヨクヨ悩むな!とか言いながら、本当は、超神経質なんだよ!朝井には恥ずかしくてさぁ!言えなかったんだよぉ〜恋の悩みなんて…」


私は、どうしようもなくなってしまった。

見たことない乙女な紗英さん。


どうやら、私の気持ちには気付いていなかったみたい

「そんな!何言ってるんですかぁ!紗英さん、まったく」


「だってぇ〜」


その後、よく話を聞いていると、何回も二人で出掛けているのに、なかなか、先輩が

「付き合おう」

の一言を切り出してくれないのだとか…

以外だった。

そこまで誘っているから、言ってしまえば良いのに。

けど、紗英さんは言った。

「男なんだから、やっぱり男から告白するもんでしょ?!」


ずばり、そう思うんだけど………

紗英さんも女の子だなぁ。私から見る紗英さんは、男勝りとしか見えなかった。なのに…


紗英さんは私に、こんな風に悩んでることは言わないで欲しいと言った。

でも、先輩に私が聞いておきますよ!なんて言っておいて、分かりません…とか言えないし。

ただ私は、自分が二人は付き合っているのかを知りたくて、突拍子もなく聞いてしまっただけなのだ。

何やってんだろ……私。


このまま、二人がうまくいかなければ…

冷静に思ってしまう自分がいる。

第一、告白しないって事は、先輩に気持ちがないからじゃないのかなぁ?

どうなんだろう?

私まで先輩のはっきりしない行動にイライラしてきた。


いつもの朝

学校が始まった…

今日のバイトは紗英さん。もし、先輩が来たら…

そんな事を悩みながら授業を聞く。


学校が終わりどうしても気になって、お店に行った。すると女将さんが居た。

「どうしたの?今日はゆりちゃん休みでしょ?」


「あぁ、そのぉ〜紗英さん居るかなぁって」

慌てて言った。


「紗英ちゃんなら、さっきあの先輩とやらが来て、ちょっと出てるわよ!大事な話がしたいとかなんとかで…本当なら仕事中だから駄目なんだけどね!」


遅かったか…

焦った。もしかしたら、私にもまだチャンスがあるかも知れないと思ったから。

「紗英ちゃん、告白するかもね」

綾乃さんが言った。

「私が喝を入れたから!好きな男は自分で捕まえなくちゃ!」

淡々と言う綾乃さんの言葉が痛い。

「ゆりちゃんも、好きな人居るなら、はっきり言わないとね」


綾乃さんは、私の気持ち…

「綾乃さん…!」


「ん?」


「いえ、何でもありません」


「好きな人。どんな人?」

「え?!居るんでしょ?顔にかいてあるわよ」


「どんな人って…」

私は、綾乃さんが私の好きな人は先輩だと分かっているのだと思った。

分かっているから、あえてそんな事を言っているのかと思った。


「好きだなんて…良く分かりません」

とぼけた。


「そう?残念」


綾乃さんは、それから何も言わずに、カウンターの和菓子を並べ始めた。


「私、手伝います」


「あら、ありがとね。紗英ちゃん遅いなぁ〜」


しばらくして、紗英さんが帰って来た。

「あっ!遅いよぉ!紗英ちゃん!ゆりちゃんに手伝わせちゃったじゃない」


「ごめんなさい!え?朝井呼んだんですかぁ?」


「違うわよ。偶然来てくれて、手伝ってくれたのよ!」

「朝井、ありがとう」

紗英さんは、ずっと寒い外に居たせいか、鼻がとても赤くなっていた。


「それで?うまくいったの?」

綾乃さんは必死に聞いた。

こくり。。。


紗英さんは、可愛くうなずいた。とても照れ臭そうに

「やったじゃない!」

綾乃さんは喜んだ。

私も。

「良かったですね!」

それだけ、精一杯に言った。

「ありがとう!二人とも」

涙目になりながら、三人で手を取り合い飛びはねた。

「今度は、ゆりちゃんだね!」

綾乃さんが言った。


「な、何言ってるんですかぁ〜私は…」


「朝井、好きな人いるの?」

紗英さんがびっくりしながら私をみた。


「だから、居ないって言ってるじゃないですかなぁ〜」

誤魔化す自分が情けない。今頃、後悔する自分が情けない。

その場を早く立ち去りたくて、急用を思い出したと嘘をつき、店を出た。


帰り道、涙でいっぱいになった。

声を出したくないのに、気付いたら大声で泣いていた

自滅。


鴨川の川をぼんやり見つめながら、私の恋は終わった

夢ばっかり見て…

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