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優等生でも親友がほしい

作者: 私信
掲載日:2026/05/04



 自分で言うのもなんだが、ワタシは今日も優等生だ。

 朝早くから登校し、今日も黒板や黒板消しを綺麗にするほか、机のズレを直したり、換気として窓を開けたり。

 うん。やっぱり、やることが充実していて楽しいな。

 

 いつも通り自分のクラスだけしか整頓できなかったけど、それでも人の役に立っているだろうから良しとしよう。

 自分にしかできないことじゃないけど誰もやろうとしないことは、自分でやらないとだめだ。

 それがワタシのモットーってほどでもないけど、自分ルールってとこだろうか。

 そのルールがあるから、ワタシは人助けをし続ける。


「おはよう、橘井きついさん」

「ええ、おはよう」


 そうしていると、ほかの生徒たちがやってくる。

 ……そっか、もうこんな時間か。


「じゃあ最後に、黒板消しをクリーナーにかけてくるかな」

「あっ、橘井さーん! 宿題のコツ教えて!」

「わかったわ。ちょっと待っててくれる?」

「うん!」


 ワタシ、橘井きつい優梨ゆうりは生徒たちの模範となるように生きている。


 完璧だとか、そんな言葉で片付けられるのは好きじゃない。

 それは、理想の自分にまだ追いついていないからだ。


「ワタシがあと三人いればなぁ……」


 なんてバカなことを考えることもあるが、一人じゃできないことがあるのも事実。

 それでも人は頑張るものだ。

 一人でできることというのは限られているのだから。

 

 だからこそ、他人に頼られるとちょっと嬉しい。



 そんなこんなで、今日も一日を終え、下校する。

 別に居残りしてもいいんだけど、みんなに良いように思われたいんじゃない。

 ワタシはワタシらしさを曲げたくないだけだ。


 そんなくだらないことを考えながら歩いていると、コンビニからベージュの髪色の子が出てくるのに気がつく。

 もしかしたら……と思い、声をかけてみる。


「あの……」

「なんだよ?」


 ベージュのウルフの子……ってことは、おそらく……


速見はやみ美空みそらさん、かしら?」

「あ? そうだけど?」


 たまにだけど、うわさをよく聞いていた。

 

「ベージュのショートウルフで、たしか不登校。理由はわからないけど、入学してから一週間くらいで来なく……」

「お説教か? よそでやれよ。アタシは学校が窮屈なだけだ」

「そうなの……? よかった、ちゃんと理由があって。それならなんとかできるから!」

「はぁ……」

「ワタシの名前は橘井きつい優梨ゆうり。帰宅部よ」

「くっ……! はっはっは! お前おもしれーな」

「な、なにが!?」

「いや、急に工藤新一かっつー感じで自己紹介したもんだから……」

「た、たまたまだし!?」


 狙っていなかったのに、そう言われると狙ったみたいになって、少し恥ずかしくなる。


「じゃあアタシにちょっと付き合ってくれ。帰宅部なんだし、大丈夫だろ? それに、アンタはクソ真面目だ。説得してるとか、そういうていで関われば、学校側から見てもセーフだろ」

「うん、わかった……」


 なんだか気を遣われてしまい、ちょっと申し訳ない気分になる。


「じゃ、ウチ来いよ。別に、アタシの私生活を見てほしいだけだから。まあ、もう夕方だけど」

「いいわよ! どうしてもって言うのなら行ってあげる!」

「新手のツンデレかよ……」


 こうして、速見美空さんの家へと向かう。


「おいユウリ、お前今日からユウリな」

「じゃあワタシはミソラちゃんって呼ぶわね! それにしても……」

「……なんだよ?」

「小学校以来だわ、友達の家に行くのは! 中学からはみんな遊んでばかりで、真面目にならざるを得なかったから……!」

「そうかい。ほれ、着いたぞ」


 ミソラちゃんの家に着くと、そこは普通の一軒家だった。


「お、おじゃまします……」

「いや、両親は共働きでいねーから……変に気ぃ遣わなくていいぞ?」

「わかったわ。それで、ミソラちゃんの部屋は?」

「二階にある」

「そっか」


 少しドキドキするワタシ。

 だってこういうのって、部屋が汚い場合が多いから。


「じゃ、開けるぞ?」

「うん……!」


 そうして開けられた部屋は少し広く、ベッド、机、テーブル、テレビにゲーム機と、ものすごく几帳面に整理されていた。

 縦向きに置かれたベッド、ベッドの隙間を埋めるように置かれた机。

 テレビとゲーム機も、しっかりとしたバランスで整頓されていて、感心してしまうほどだ。


「アナタA型?」

「……調べたことねーな。つーかお前、血液型占い信じてるのかよ」

「だって、そういうジンクスが人を動かす原動力になりうるのよ? そう考えたら別に……」

「だったらおめーは何型だ?」

「もちろんA型よ! それより、いくつゲーム持ってるの?」

「プレステ、スイッチ、DS……とりあえず、たくさんだな」

「ふーん。ワタシは人がプレイしてるのを見てるのが好きなタイプだから、じゃんじゃんやっちゃって?」

「変わったヤツだな……。じゃあ、FPSやるか!」

「おおっ! なんかスゴそうね」


 そうして、二人してベッドに座り、テレビに向き合った。

 

「見とけよ?」

「うん……」


 それから十数分後、ミソラちゃんの操作しているキャラが撃たれる。

 ワタシは驚いてミソラちゃんに抱きついた。


「ぎゃあああ!! 画面が一瞬真っ赤に!」

「うるせぇよ! 一発しか撃たれてないのにギャーギャー騒ぐな!」

「でも、もし痛覚連動システムとかあったら……」

「そんなの普通は販売できねーから! 黙って見てろよ?」

「うん……」


 その後も何度も危ない場面はあったが、なんとか一位?を取ったようだ。


「よかったね」

「こんなの、いつも通りだけどな。つーかユウリ、お前うるさい」

「……だって、ゲーム見たの五年ぶりくらいだったし」

「そうか。じゃあ、ピクミンでもやるか? それなら安全だろ」

「おおっ、あの化け物を化け物で倒すゲームね!」

「そうだけど、言い方なんとかしろ」


 こうして、ミソラちゃんは頑張って怪物を倒して、お宝集めをする。


「あっ、こういうゲームなんだ……」

「ま、ピクミンは宝を集めるだけのゲームだな。そんで、それまでのドラマを楽しむゲームだ」

「なるほど……ドラマね。なら、いまは月曜九時のドラマがオススメかな」

「何の話だよ。……なんつーか、おめーがおもしれーから、明日は学校行こうか悩むな……」

「ホントに!?」

「ただし、つまんなくなったらすぐ帰るからな」

「いいよ? それじゃあ、ミソラちゃんが来てなかった日からいままでのノートを全教科まとめるから、今日は帰るね!」

「お、おう……」


 こうして、ミソラちゃんを復学させるためにも、頑張ることにした。



 翌日、いつも通り教室を整頓しながらミソラちゃんを待つ。

 

「昨日は楽しかったけど、来てくれるかな……?」


 そんなことを考えつつ、昨日まとめたノートを確認する。

 

「よし、全教科持ってきてる」


 そんなことをしていると、ガラガラッとドアが開く音がしたので、振り向くとミソラちゃんがいた。


「おいおい、早いな……」

「アナタの方が早いと思うけど……それより、勉強教えてあげるね!」

「おう……」


 そしてミソラちゃんに国語から丁寧に教える……つもりだったけど、ミソラちゃんは突然アプリゲームをやり始める。


「こら!」

「だって面倒くせぇし。おめーもやるか?」

「ふ、ふん! 五分だけだからね! それで、それなんて名前?」

「はっはっは! やっぱおもしれーな、お前!」


 こうして、アプリゲームをしていると、本来の目的を思い出す。


「って、もう五分経ってるじゃない! ほら、やるわよ!」

「へいへい……。昨日はFPSにビビってたくせに……」

「あれは画面がリアルで驚いたの!」

「そーかい。じつはな、FPSのゲームはスマホでもできるんだよ。見るか?」

「……アナタ、なんのために学校来たの?」

「おめーに会いに」


 ワタシはついつい心が動いてしまいそうになる。


「そ、そう! なら、いろんなワタシを見なさいよ!」

「わかったよ。……勉強教えてください、優等生さま」

「うんうん、わかればいいのよ」


 気を取り直して、ワタシは勉強を教えてあげる。

 すると、案外覚えが早くて、少しびっくりする。


「ミソラちゃん、意外に賢いんだね……!」

「意外は余計だが、そうだな!」

「なんかコツとかあるの?」

「勉強はやっぱり覚え方だな。自分が覚えやすい語呂や語感を反復させりゃあいいんだ」

「理屈は分かるけど、ちょっと独特だね……」


 でも、理にかなってるというか、ミソラちゃんらしいと思ってしまう。


「それより、優等生さまはどうなんだ?」

「え? ワタシは上の方かな……」

「順位言えよ。模試とかやってねーの?」

「えーと、中三のときは全国で九位だったかな……」

「……自慢かよ」

「だから言いたくなかったの!」

「悪い悪い……。それとユウリ! アタシ人見知りだから、サポート頼むわ」

「え?」


 そんな会話をしていると、クラスメイトがぞろぞろとやってくる。


「こええええぇぇ!!!」

「お、おお、落ち着いて! 人の字を左手で書いて飲み込むのよ!」

「おめーが落ち着け。左手にだろ普通」


 そんなことを喋っていると、ミソラちゃんにどんどん人が集まる。

 そして、さまざまな質問が飛びかう中、ミソラちゃんはワタシに助け舟を出した。


「助けてくれ、優等生さま!」

「わ、わかった」


 そうだ。ミソラちゃんはいまワタシしか友達がいない。

 だから、ワタシが守ってあげなくっちゃ!


「ミ……みんな! 速見さんは学校に来る勇気を出してくれたけど、人が多いのにまだ慣れていないの。だから、ワタシ以外には慣れてないから、気を遣ってもらえたら嬉しいな……なんて」


 そう言うと、みんなが遠慮する空気になるが、ここで大きな爆弾が投下される。


「あのさ、なんで橘井さんが仕切るわけ?」


 そんな棘のある言い方のクラスメイトに、ミソラちゃんは言い返した。


「ユウリはアタシを学校に来るきっかけを作ってくれたからだよ。文句あるやつは……」

「ミソラちゃん、人を傷つけるのはゲームの中にしてほしいな」

「あ? おめーを庇ってんだろうが。優等生は態度まで優等生か?」

「……ワタシ、人を傷つける人は嫌いだから」


 ワタシは少し不機嫌な声で忠告する。


「…………そうかよ。おめーの顔なんて見たくもねーわ。……アタシ、帰るから」

「……勝手にすれば?」

「おう、勝手にする!」


 こうして、ミソラちゃんは帰って行く。


 それからの教室は、いつもと違って静まり返っていた。

 ワタシはみんなの会話中も上の空で、適当な返答しかできなかった。

 だから、


「ごめん。今日はあまり話しかけないで……」


 と言っておいた。


 こうなってしまったのも、全部ワタシのせいだ。

 ミソラちゃんはワタシを守ろうとしてくれたのに……。


「謝ろう。帰りたいけど、早退はまずいよなぁ……」


 そう思って、ワタシはミソラちゃんのことを考えつつ授業を受ける。

 だけど、


「橘井! 橘井ー?」

「は、はいっ!?」

「いや、しっかりしろー? で、ここはどう答える?」

「えーと……」

  

 なんだ、復習問題か。

 ここなら昨日ミソラちゃんのためにやったから覚えてるもんね。


 ワタシは普通に問題を解いてみせる。


 でも、だめだな……。

 考えたくもないのに、ついついミソラちゃんのことを考えてしまう。


「はい、正解。橘井、しっかり解けるからって、集中してくれないと周りに示しがつかないから……」

「はい、わかってます……」

「じゃあ戻っていいぞ。それで、次の問題は……」


 ……そうだ。ワタシは見本にならなくちゃいけないんだ。

 それはワタシにしかできないことなんだから。

 

 そう考えていると、周りのみんなが話しかけてくる。


「速見さん、どうしてるかな?」

「えっ!?」

「……って顔してるよ。橘井さんも、たまには自分らしさを出してもいいんじゃない?」

「そうだよ。優等生だからって、溜め込んでたらストレスでバカになるかもしれないしな」

「それは言いすぎだけど、ありがとう。でも、あと数十分だから、頑張るね。ありがとう、みんな」


 そうだ、あと一時間弱で会えるんだ。

 そう考えたら、少しだけ気持ちが楽になった。



 そして放課後、ワタシはミソラちゃんの家へと向かう。


「ミソラちゃん、家に帰ってるかな?」


 それだけが不安だったが、杞憂に終わる。


「よう、ユウリ。ツラ見せんなっつっても、やっぱ心配しちまうな……。多分、おめーの性格が移っちまったのかもな! ……てか、もう放課後なのか」


 なんと、ミソラちゃんの家に向かっている途中で鉢合わせてしまう。


 どうやら買い食いをしているところに、ワタシがたまたま通りかかったようだ。


「また悪いことして!」

「え? 家には一回帰ったし、買い食いくらい良いだろ? 優等生さんよ」

「まあそのことはいいや。その前に一言だけいいかな?」

「……いや、聞かねーぞ」

「あの……」

「あばよ。また今度会おうぜ。じゃあな」


 少し寂しそうに言うミソラちゃん。

 そんな彼女の言葉に、ついつい涙目になってしまう。


 ……いや、ここはしっかり気持ちを伝えなくちゃ!


「喧嘩してごめんなさい! キツく当たってごめんなさい! ミソラちゃんのことを守るのに必死で、ミソラちゃん自身の気持ちを考えてなくてごめんなさい!」

「一言じゃねーじゃん」

「あ……ごめん」


 なんか、謝ってばかりだな……。

 そう思っていると、ミソラちゃんも同じことを言う。


「おめーは謝ってばっかだな! 別にいいけど。ユウリらしいしな」

「そっか……それで、許してくれる?」

「あのよ、これで許さなかったら、アタシが超嫌なヤツみてーじゃん!」

「あ、たしかに……。ってことは?」

「あー……許してやるよ」

「ありがとう!」


 満面の笑みを浮かべると、ミソラちゃんは少し照れたような顔をする。


「ふん……」

「……あの、どうかした?」

「いや、なんでもねーよ」

「そっか。それより、連絡先交換しない?」

「いいぞ? なんか、今更感半端ねーな」


 というわけで、連絡先を交換するワタシたち。


「よし、これでアタシたちはダチだな!」

「うん!」

「アタシはおめーのことを嫌いにはなんねーから、安心しろよ? 親友」

「うん! じゃあ、明日も学校来てね!」

「わかった。その代わり、喧嘩させるなよ?」

「それはミソラちゃん次第だけどね」

「……だな。あと、アタシは喧嘩は強くねーからしないっつーの。今日のやつは、脅すつもりだっただけだしな」


 それはそれで問題だと思うけど……。


「なら脅しもだめ! わかった?」


 ワタシはミソラちゃんに顔を近づけて注意する。


「……わかったよ。それより、どんなゲームしてるのが見たい?」

「ミソラちゃんがゲームしてるところ!」

「そ、そうか……」


 その後、ミソラちゃんがそっぽを向いたので、ワタシはこう言ってみる。


「ワタシ、高校で親友って存在がいなかったから、ミソラちゃんが親友で嬉しいな!」

「そうかよ」


 こうして、今日もミソラちゃんの家でゲームの見学をする。

 ワタシはゲームをするミソラちゃんが好きだから、これからが楽しみだ。


 そう考えながら、今日もミソラちゃんの家へと向かうワタシたちだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

百合っぽくなりましたが、あくまでもロマンシスです。

この二人はもっと話を広げられそうなので、反応があれば続くかもしれません。

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