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耳音
耳の形は人それぞれ
わたしの言葉はあなたには
どんな風に伝わるかな
ひとたびこの手から放たれると
雨風に揉まれ形を変えていくよ
だから私は自分の耳の形を
餃子にしてみたり
伸ばしてみたり
手を添えてみたり
この耳の骨が柔らかいように
柔らかく柔らかくしていたい
若かりし頃の母が布団の中で
眠れないというわたしの耳をよく触ってくれた
母の指のはらから伝わる感覚
安らぎというよりは
どこか 違った
母のまだ知らない未知のあたたかさ、優しさ、
そして寂しさ
その寂しさが少しだけ、その優しさがほんの少しだけ 怖かった
それから わたしの耳は
その音に敏感になっていった
その音は沈黙のままに
心の深い泉に沈んでいった
それでもやはり
その音に安心して
知らぬ間にわたしは眠りについていた