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07 一回戦第三試合「逢魔が通る」

デボラ・リストは十八歳と若いが競技会への参加経験は多い。

優勝したこともあるが、今までに一度も勝ったことのない相手が三人だけいた。


一人はカルミール公爵家の一人娘、アドリア。

今までに三度対戦して三度とも負けている。


一人はイフタール伯爵家の長女、マリエラ。

彼女のたった一回の公式戦での決勝で当たり、敗北した。


そしてもう一人はマイア・スマル。

彼女とは二回戦って二回とも負けた。


今回その三人ともがこのトーナメントに出場している。

アドリアは第一試合、マリエラは第四試合、マイアは第六試合が一回戦の試合順だ。


三人とも実力者であり、間違いなく勝ち上がって来るだろう。


この試合を勝てば次はマリエラ。

マリエラに勝てばその次はアドリア。

アドリアに勝てば決勝戦はマイアだ。


勝ち進めば全員と当たることになる。


雪辱のチャンス、恐らくは最後のチャンスである。

この大舞台で今度こそ彼女たちに勝つ。

それがデボラの目標だった。


え、王子様との結婚?

うん、まあ……、ちょっと恥ずかしいけど、やぶさかではない。


それはともかくこれまでの対戦を見るにアドリアは回避が上手く、マリエラは防御が上手く、マイアは単純に硬い。

つまりいずれも堅守を旨としている。


デボラは今回新しい魔法を習得してきた。

その名も『ブレインシェイカー』。


魔力撃とは自分の体内にある魔力を衝撃に変える魔法だが、これは相手の体内にある魔力を衝撃に変える魔法だ。

つまり相手の魔力を使って相手の体内に魔力撃を発生させる魔法と言える。

掌だけでも相手に触れることができればどんなに防御が堅くても関係なく大ダメージを与えられる。

シールド魔法も発想の壁も乗り越えるブレイクスルー的魔法技術である。




「デボラ・リスト候補の登場です。お、さすが有名人!観客席から大きな声援が沸き上がっています。……あ、手を振ってますね。声にこたえています」

「勝ったり負けたりですが非常に意欲的であちこちの大会に顔を出してますからね。それに努力家なようで、出場ごとに成長を見せてくれます」

「応援したくなる何かがあるんでしょうね」


「一方のフィリル・グラム候補ですが、こちらは聞いたことのない名前ですが……」

「北部では著名な選手です。堅実で負けない戦いをすると聞いております。まあ私も直接見るのはこれが初めてなのですが」

「なるほど。双方の敢闘を期待したいところですね。それでは試合開始の時間です」


開始線の二人は対照的な姿をしていた。


デボラは袖がたっぷりした白の上着に紅色のロングスカートを合わせ、明るい茶色の髪を紅色のリボンでまとめている。

足には茶色の編み上げブーツを履いている。

武器は薙刀だ。


フィリルは黒いドレスを着ていた。

ふわりと膨らんだスカートに無数に縫い付けられたダイヤモンドが夜空に瞬く星のようだ。

目も黒髪も黒、足には黒いブーツ、頭には黒いベール。

わずかに覗く肌ばかりが白粉でもはたいたように白い。

こちらの武器は短剣の二刀流である。


「始めいッ!」


開始と同時にフィリルは間合いを詰めて来た。

牽制に魔力斬を撃ちながら、ゆっくりと、あるいは速く。


緩急の激しい動きだ。

緩のときはふわりと動きが軽やかで急の時は鋭い。

まるで神に捧げる踊りでも舞っているようで、これが自分の試合でなかったら見とれてしまいそうだった。


薙刀が届くか届かないかの微妙な距離で足を止めたフィリルはその微妙な間合いで魔力斬を連発した。

魔力斬は溜めて振り抜く動作が必要であり接近戦には向かない。

第一試合でティナが容易く魔力斬を受けたのもそれが意識の外にあったからだ。


フィリルは二刀を交互に振るうことで「溜め」と「攻撃後の隙」を補っていた。

しかしそのせいで一発一発が軽い。

それにこの距離なら充分に反応できるし対処可能だ。

デボラはシールド魔法で相殺しつつ薙刀で攻撃を繰り出した。


武器としての薙刀は鋭く速く間合いが長く、殺傷力が高い。

試合用に刃を潰してあるとはいえ短剣で勝てるものではない。

デボラの連攻をフィリルはタン、タンと軽いバックステップでかわし、間合いをキープした。


ほどなくデボラは心身に現れた違和感に気づいた。

(手の力が……?)

体の調子がおかしい。

足に力が入らず雲でも踏んでいるようだ。


デボラはフィリルの術中に嵌っていた。

フィリルは接近後ずっと魔法を使い続けていた。

それらは『パラライズミスト』『スリープクラウド』『ブラインドフォグ』『ポイズンミアズマ』『コンフュージョンヘイズ』『サイレントブルーム』──

すべて感覚を狂わせ運動と思考の能力を奪う魔法だ。


夜に舞う蝶が鱗粉を振り撒くように。

人体を毒のように蝕む状態異常付与魔法を周囲一帯に撒き散らし、相手の戦力を奪うのがフィリルの戦法である。

魔力斬はそれらの魔法の目くらましと相手を近寄せないためのものだ。


一分も経つとデボラは魔法がすっかり効いてしまっていた。

考えがまとまらない。

目の前が暗くなる。

体の力が入らない──。


デボラは泥酔者のようによろめいた。

両手で保持した薙刀が短剣の片手の一打ちで弾かれて手から離れた。


瞬間フィリルは一気に間合いを寄せて来た。

一足飛びで飛び込んで、顔を目掛けて振った剣は目隠し、本命は右手の突き!


パシッ、デボラは突き込まれた右腕をつかんだ──


『ブレインシェイカー』!


ドン!


「グウゥッ!」

衝撃が髪の先まで震わせた。

鼻どころか目と耳からも血を流したフィリルはたたらを踏んで──しかしそれでも倒れない。


ブレインシェイカーの発動は不完全だった。

デボラが思った以上にフィリルの撒いた毒が回っていた。


フィリルはつかまれた右腕を外に振ってガードをこじ開け、みぞおちに左の剣の柄を叩き込んで崩しを入れた。

「グハッ!」

前のめりになったデボラを背負って投げつけて、またみぞおちに──今度は踵!


「アァッッ!!」

四肢を硬直させて──すぐにその手足から力が抜けた。

デボラは気絶していた。


「勝負ありッ!」

名前:デボラ・リスト

年齢:18歳

称号:じゃじゃ馬ブルーミング!

身長:154cm

体重:60kg

地位:小麦問屋リスト家の令嬢

流派:メナス流薙刀術

HP:920

MP:220

握力:48kg(利き手)

走力:100m14.25秒 10,000m31分17秒(いずれも魔法未使用時)

知能:96

装備:巫女さんスタイル、薙刀

特技:小麦粉の麵を打てる(パンが主流のこの国では珍しい)。

メモ:最近食べ歩きにハマっている。

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