28 ゲームの記憶と現実と
骨折を治療して戻ってきたアドリアは決勝の相手を見極めるため観戦席についた。
王子には棄権を勧められたがアドリアにも意地があった。
(何なの、あれは……)
そしてアドリアが見る準決勝の内容は想像を超えていた。
アドリアも近頃ではあの夢を見なくなっていたがゲームの記憶だけは鮮明に残っている。
ゲームの内容と現実とはずれている部分もあったがそのままのところもある。
そう、この世界は完全にゲームの通りではない。
というより、近頃のアドリアはこの世界はゲームの中の世界なのではなくて、あのゲームの方がこの世界を参考にして作られたのではないか、という気がしていた。
開発者の誰かが変な電波でも受信したのではないだろうか。
例えば人物のプロフィールは現実もゲームも変わらない。
それぞれの出自、それぞれの抱える事情はそのままだ。
そのままではないが参考にしたのではないか、というところもある。
アドリアはもちろんのこと、恐らく出場者のほぼ全員が奥の手を持っている。
それがゲームでは超必殺技として再現されていたのだと思う。
ゲームのイオンは『万死一生』という「致死ダメージを受けても一回だけギリギリで生き残る」という技を持っていた。
多分奥の手を持っていないイオンだけは一回戦で見せた玉砕行為が超必殺技として再現されていたのではないだろうか。
違うところとしては、アドリアの記憶によればゲームでは候補者全員に二つ名が設定されていた。
アドリアの対戦相手で言えばティナなら「鋼のブーケ・ド・フルール」、イオンなら「忠節の剣士」というように。
マリエラは「緋色の吸血姫」だ。
伯爵令嬢はプリンセスではないような気がするが、日本語だと貴族の娘は姫だからいいのだろうか?
あれ、日本語って何だ?
この国の言葉はオストランド語のガーランド方言なのだが。
ちなみにアドリアについていた二つ名は「薔薇色のオールラウンダー」である。
もちろんこの大会出場者にそのような二つ名はない。
それとゲームではキャラクターごとの強さに格差がないように調整されていたので一応どのキャラでも優勝できた。
とはいえやはり強キャラ弱キャラというのは生まれていた。
エリスなどは遠距離攻撃手段こそ豊富であったものの低火力・鈍足・紙装甲の三重苦を背負った最弱クラスのキャラクターだった。
マリエラあたりにゾンビ戦術を取られたらまず勝てなかったし、同じ遠距離攻撃勢でも火力でアウラに負けていた。
なのに今目の前で戦っている現実のエリスは強い、強いというかおかしい。
ゲームのエリスはあんな高機動高火力キャラではなかった。
砂の上を高速で移動する魔法もあんな馬鹿げた火力もなかった。
あれではアドリアの全力でも勝てるかどうかわからない。
ゲーム制作者がこの世界を参考にして作ったのではないか、と思うのはこの辺りのことがあるからだ。
多分このエリスをそのままプレイアブルキャラクターとして落とし込むわけにはいかなかったのだろう。
そのまま出したらほとんどのキャラクターは何もできずに封殺、バランスブレイカーもいいところだ。
何とか使えるようにナーフを繰り返してやり過ぎた結果があの弱キャラだったのではないだろうか。
ゲームではデザインも良く……まあ唯一のロリ枠だったおかげか人気のあるキャラクターだったので他媒体への露出も多かった。
ゲーム誌の表紙をアドリアと二人で飾ったりしてフィリルやアウラ辺りの信者から怨嗟を買っていた。
しかしそれは弱いからまだ許されていた感じがあった。
ただでさえ「運営のお気に入り」「かわいい以外に取り得のないクソ雑魚ロリ」「お前らの愛し子」などと散々な言われ方をしていたのに、もしあそこまでの強キャラだったらもっと滅茶苦茶に叩かれていただろう。
そしてゲームとの一番の違いはその対戦相手だ。
ゲームの十六人の中にメリルなんてキャラクターはいなかった。
そのメリルはエリス以上におかしかった。
■ゲームのキャラクターとしてのファンからの(主に二次創作における)扱い
アドリア:作品の顔。ファンアートは最多だったが熱意のある信者やアンチは少ない。
カティア:何故かアウラのポケモンネタが定着していた。
フィリル:厄介信者が多かった。アンチにバステ攻撃をワキガ呼ばわりされていた。
マリエラ:回復役や変な薬を作る役など便利なマリえもん扱いされていた。
ユリエル:吸引力の変わらない、ただ一人の令嬢。薄い本の数は最多。
アウラ:アホの子愛されお嬢様。一部に暴徒じみたファンがいた。
イオン:マリエラとの主従百合妄想が主。たまに主人の想い人をNTR役。
エリス:信者アンチ共に熱量が高く日夜レスバトルを繰り広げていた。
キアラ:大抵画面の端で女の子を口説いている。ノンケなのに。
ティナ:学校にお菓子を作って持ってくる感じの子。基本的に平和。
デボラ:ラーメン大好き。デブラとかデブさんなどと呼ばれ最後にはデで通じていた。
ネルリ:ネタキャラ。大抵ギャンブルで負けて笑いの種になる。
マイア:ザンギエフ。
マキナ:関西の某球団の熱狂的なファン。酔うと六甲颪を歌い出す。プロ道頓堀ダイバー。
ローダ:特徴がないことが特徴になっていた。
リゼ:婚活戦士。SNSで三十歳独身のリゼを主役とした四コマ漫画が連載されていた。




