27 準決勝第二試合
「せーのっ!」
「「「「「エ・リ・ス・ちゃーん!!!」」」」」
観客席の一角に陣取った男たちが一斉に声援を上げ、鳴り物を鳴らした。
この頃になるとエリスには変なファンがついていた。
(?)
何故か背筋に寒いものが走ってエリスは体を震わせ、杖をぎゅっと握りしめた。
神の奇蹟を願う神聖魔法と違い精霊の使役に杖は必要ない。
実際村では部屋の隅に置いたままなのだがここに来てからはずっと手に持っていた。
誰一人知り合いのいないこの町でも母の形見を握っていると少し心が落ち着いた。
開始線の向こうにメリルが立った。
敵の姿を認めると心が自然と臨戦態勢を取った。
エリスの思考はキーンと冴えて、先程の悪寒や不安や恐怖はかき消えた。
「始めッ!」
ドッ!
砂柱が立った。
試合開始の合図と同時にメリルはいつものように飛んだ。
ドンッッ!
「あれー!?」
真下から爆発するようにもう一つ砂柱が立ち上がってメリルは斜め上空に飛ばされた。
クルクル回りながら飛ばされてスタジアムの最上階に到着、着地点付近の観客たちは慌てて逃げた。
この試合に場外負けはない、またもエリス目掛けてジャンプ!
「てやあーっ!」
最上階からの加速を乗せた飛び蹴り!
ぶよん……
空気が塊になってメリルは受け止められた。
『エアクッション』の魔法だ。
「ぐぬぬぬぬ……」
メリルはジタバタあがくけれどもエリスに到達することができず、空気の反発力で飛ばされた。
すごい勢いで水平に飛ぶ、壁に叩きつけられる──くるりと回転して壁に着地、壁を蹴って飛んだ。
エリス目がけて一直線に飛んでくるメリルをサンドスリップでかわす。
メリルは反対側の壁を蹴ってまた突撃してくる。
今度は風の魔法で浮かして土の魔法で砂を触手のように操り足をつかんで投げた。
「ひゃーっ!」
またもスタジアムの観客たちの真ん中に落ちるメリル。
観客たちは今度も逃げ、危ういところで直撃を免れた。
「もー、捕まらないなー!」
メリルは闘技場に飛び降りた。
今度はエリスから離れた壁際に。
(うーん、作戦変更!)
「鬼ごっこだっ!」
メリルは動き出した。
歩いて。
一歩一歩ズシンズシンとトリケラトプスみたいに体重を乗せてエリスに迫る。
エリスは距離を取りながらメリルを攻撃した。
「わはははははは!どこへ行こうというのかね!?」
行く先々に地雷のように設置されたエアバーストが、距離をとっても威力が減少しないサンドブラストがメリルを打撃し続ける。
メリルはエリスを追いかけ回しながら一方的に打たれ続けた。
メリルが何をやっているのか理解できたのはマイアだけだった。
マイアはニヤリと笑った。
「なるほどねェ。あのガキ相手にどう戦ったもんかと考えてたけど、その手があったか」




