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20 二回戦第四試合「歴戦vs歴戦」

「さあ二回戦、そして本日の試合もこれで最後!大一番を飾るのはマキナ候補とエリス候補!」


「マキナ候補は一回戦同門のユリエラ候補を見事破り、いまやメナス流の代表と言っても過言ではありません!流派の看板を背負って堂々の登場です!」


「エリス候補は王国騎士団精鋭のカティア候補を破っています!経歴一切不明ながらその強さを疑う者はいないでしょう!」


二人は開始線で向き合った。


マキナは油断もしていないし手加減するつもりもない。

カティアと戦ったことはないが戦うところは何度も見ている、彼女は恐らく自分と同じ水準で強い。

それが手も足もなく捻られた。

目の前の相手は見た目は花のような少女でも中身は未知のモンスターと考えた方が良い。


エリスはいつもしているように、目の前の相手を倒すことに集中した。


「始めぇッ!」


「ハァッ!」

試合開始と同時にマキナは神速の魔力突を三連発。

ドッ!

二人の間に突如立ち上がった分厚い砂の壁がすべて阻んでしまう。

『サンドウォール』の魔法だ。


しかし一回戦を見ていたマキナは相手がそのくらいはするだろうことは重々承知。

砂の壁が生まれると同時に『アクセルダッシュ』の魔法で直進してジャンプ、壁を飛び越えてエリスに切りかかった。


だがまだマキナが宙にあるうちに突如エリスの体がとぷんと砂の中に落ちた。

『サンドダイブ』、水の中に沈み込むように砂の中へと潜り込んだのである。


「なにっ」

一瞬姿を見失う、しかし後ろに気配を感じ取って着地と同時に振り向きざま槍の一閃を──


何か硬い物が飛んできた。

「チッ!」

とっさにシールド魔法を斜めに張って弾き飛ばす。

魔法の正体は『ヘイルバレット』、体の周りに浮かべている水球を分裂させ凍らせて打ち出したのだ。


次の動作は同時だった。

マキナは振りかけた槍に魔力斬を乗せて改めて攻撃──しようとして、足元を滑らせた。

(なっ!?)

撃ち損ねた魔力斬が拡散してあさっての方に飛んで行く。


「マキナが足を!?」

観客席でユリエルも驚いていた。

自分にしろ誰にしろ、一流の闘技者の平衡感覚は卓越している。

ましてマキナのそれはユリエルをすら凌駕する。


「クソッ!」

マキナは闘技場の地面を確かめた。

足の下で砂が生き物のように蠢いていた。


エリスはマキナの足元の砂を操った。

土と風の精霊の力で砂に空気を混ぜて操る『サンドスリップ』の魔法だ。

同時に風魔法で砂を叩きつける『サンドブラスト』の魔法を放っている。


とっさにマキナは前に進むと見せかけて砂に乗って後ろに飛んだ。

足元の砂の動きは後ろ向き、砂の力も借りて勢いよく飛んだマキナはサンドブラストをかわして闘技場の壁に着地、同時に魔力斬を二発放ち、さらに壁を蹴って飛び上がる。


しかし着地の目的地に既にエリスはいない。

自分の足元の砂をサンドスリップで動かし、氷の上でも滑るように移動していた。

かわされた魔力斬が対面の壁にぶつかって爆ぜた。


(なんてガキだ!)

マキナは心の中で舌打ちした。


やりにくい。

ただの魔力自慢の魔法馬鹿ではない、一回戦を見て想像したよりもずっと小技の使い方が上手い。

明らかに戦闘慣れしている。


着地の前に空気が歪んだ。

これは一回戦で見た──マキナはとっさにシールドを張った──空気が爆発!

風と火の精霊の『エアバースト』の魔法だ。


エリスは精霊たちとの触れ合いの中で気体の体積が一定の場合温度が上がれば圧力も上がり、逆に圧力が上がれば温度も上がることに気づいていた。

風の精霊の力で大気中に空気の球体を作り、その中で火の精霊をくべてやる。

そして相手に向かって口を開けてやれば爆風が吹き出すのだ。


しかし空気と球体の屈折率の差でよくよく見れば大気が歪んでいることがわかる。

着地点には既にサンドスリップが待ち受けていたが槍を深く突き刺して回避、まともな地面を蹴って再びジャンプ!

行く手にはまたエアバーストが点在して設置されているがマキナには見えている、接近する前に魔力突で破壊する!

「オラアアアアッ!!」


「ふぅー……」

エリスは一つ息をついた。

今日の相手はかなりしぶとい。

数々の妨害にも負けずエリス目掛けて突っ込んでくる。


エリスは魔力を少し多く注いで土の精霊の魔法を使った。


ズズズズ……


闘技場が地盤沈下した。

そう見えるほどに全体の砂が減少した。

エリスの後ろに渦巻いて集められた大量の砂は伸び上がって天を仰いだ。


『サンドワーム』

砂の蛇、術者のエリスを丸ごと飲み込むほどに胴体の太い巨大な蛇がとぐろを巻いて鎌首をもたげた。


「マジかよ……!」

戦慄が走る。

同時に蛇が動いた。


パリンッ!

シールドが一発で全壊した。

砂の柱、いや砂の滝が横向けに襲い掛かって来るようだ。

間一髪で飛び上がってかわし、体全体で転げるように砂を蹴って逆に勢いを得る。


追いすがる蛇をかわし、あるいは胴を蹴って接近しながら思う。

威力、精度、種類、持続力、応用力、いずれをとっても戦闘経験の多いマキナをしてもかつて見たことのないレベルの魔法使いだ。

しかしここまで劣勢であっても負けてもいない。

マキナの闘志は萎えていない。


観客席を横目で見る。

そこに道場の門下生たちがいた。


マキナは自分だけのために戦っているのではなく仲間たちの思いも背負っていることに気づいていた。

何ならあのいけ好かないお嬢様だって今はその中に入っているかもしれない。

彼ら彼女らが見ている限り無限の闘志が湧いてくる!


「負けるかぁッ!」


しかしエリスはマキナの咆哮には無感動だった。

負けられない理由ならエリスにだってあった。

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